ガザ=ストロフ パレスチナの吟(うた)

劇場公開日:2024年10月11日

解説・あらすじ

2009年、イスラエルの侵攻直後のパレスチナ・ガザ地区に足を踏み入れ、そこに生きる人々の姿を映し出したドキュメンタリー。

2008年12月末から2009年1月にかけて、イスラエルによるガザの大規模侵攻が起こる。監督のサミール・アブダラとケリディン・マブルークは、停戦の翌日にガザに入り、そこで両親や兄弟を失った子ども、目の前で家族を銃撃された男性、土地を奪われて逃げてきた人々などの証言を記録。西洋の視点から単なる死亡者数という数字に還元されてしまう現地の人々を、顔のある個の人間として描いていく。また、パレスチナを代表する詩人マフムード・ダルウィーシュの詩が引用され、ガザの人々が生きてきた歴史と記憶を呼び起こしていく。

ガザの地で生きる人々の姿を丁寧に描き出し、同時にパレスチナ問題の背景にある西洋諸国のダブルスタンダードや構造的暴力を浮かび上がらせていく。タイトルの「ガザ=ストロフ(Gaza-strophe)」は、「ガザ(Gaza)」と「カタストロフ(Catastrophe)」をかけあわせたもので、1948年のイスラエル建国から続くパレスチナおよびガザの惨事(カタストロフ)を意味する。映画の製作から10年以上を経た2023年にもイスラエルによるガザ地区への軍事侵攻があり、変わらない状況が続く2024年10月、特集上映「パレスチナ映画特集」の上映作品として劇場公開。

2011年製作/92分/フランス・パレスチナ合作
原題または英題:Gaza-strophe, Palestine
配給:Shkran
劇場公開日:2024年10月11日

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映画レビュー

4.5パレスチナの吟(うた)という題名

2025年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

パレスチナの人々の知性に圧倒された。
この映画を観ると、彼らが教育をだいじにする民だということがよくわかる。

だが、それ以上に、本で得た知識、学校で教わった知識とはちがう、"哲学"を語る彼らに驚かされた。特にエンディング近くに出てくる男性がすごい。韻を踏んだ詩的な言いまわしで、パレスチナ人の怒りや決意、世界とパレスチナといった内容を滔々と語るその姿は、叙事詩を吟ずる詩人のように見えた。
この人はいったい何者なのか。そう思ったのは私だけではなかったようで、上映後の質疑応答でその話題が出ると、驚きの答えが。
昨年、パレスチナ映画特集の一環として上映したアップリンクの上映後トークの記録に、この男性についての説明があるので、ぜひ読んでみていただきたい(注1)。
質疑応答で補足説明をされた中東ジャーナリストの川上泰徳さんによると、この地域ではふつうの市民の中に時々、こういう詩人や哲学者のような人がいるのだそうだ。

あの言葉を聞くためだけでも、もう一度この映画を観たい。2008年のイスラエルによるガザ侵攻についての映画なので、けっして楽しいばかりの内容ではないのだが、その重苦しい空気を一瞬吹きとばしてくれるような圧倒的な語りだった。
映画にはほかに、パレスチナを代表する詩人、マフムード・ダルウィーシュの詩が随所に挟みこまれていて、惹きつけられた。副題の「パレスチナの吟(うた)」も「吟(うた)」を「詩」と考えると納得がいく。

配給は、東京外語大を卒業した三人の女性が立ち上げた団体(注2)がボランティアで行なっているという。
自主上映にも積極的に対応しているようだが、なんとかしてもっと大々的に全国で公開できないものか。

注1 アップリンクのアフタートークの記録は、「Dice+」というページで「ガザ=ストロフ-パレスチナの吟(うた)-」を検索すると出てくる)。
注2 配給団体のWebページは「Gaza Strophe」、Xのアカウントは「ガザ=ストロフ-パレスチナの吟(うた)-」。

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lumière

3.565点ぐらい。字幕が読みずらい…

2025年4月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

2009年、イスラエルの侵攻直後のパレスチナ・ガザ地区に足を踏み入れ、そこに生きる人々の姿を映し出したドキュメンタリー、とのことですが、

イスラエル軍の残虐な行為を人々が証言し、怪我をした人々、破壊された町並み、を映します。

子供の前で平気で家族を撃ち殺すわ、小さな子供すら情け容赦なく撃ち殺し、鳥たちも車で踏み潰したり、想像を超えるイスラエル軍の残虐ぶり。

イスラエル政府やイスラエル軍に怒りを覚えます。

この残虐な行為を行うイスラエル視点のドキュメンタリーも作ってほしい、どんな理由があり、どんな言い訳するのか。

片方に寄らず、両方の視点で観たい。

本作は日本語字幕の上に、もう1つ字幕(フランス語?)が出ていて、字幕が二重で読みずらいうえ、上下に黒帯も表示され、画面が窮屈で、すごいストレスだった。

少し前に、同じく、パレスチナの問題を扱った『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』を観たんだけど、内容的にも観やすさ的にも、そっちの方が良かった。

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RAIN DOG

3.5全国上映して欲しい。

2024年11月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2009年のドキュメンタリーだが、ガザの現状はこのときよりましになっているどころか悪化の一途をたどっている。

良い映画という表現は不適切かもしれないが、今一人でも多くの人が見るべき映画だった。現在いくつかのミニシアターでパレスチナ映画のが組まれているが、普段からこういった映画へのアンテナを張ってる人にしか届いていないのでは勿体無いので、もっと広報に力を入れて欲しいところ。

映画冒頭、「あと2回勝利すればガザからパレスチナ人を追い出すことが出来る」とユダヤ人のやり口をユーモアを交えて語る男性は、近年病院が爆撃されたことで必要な治療を受けられず亡くなったとのこと。

イスラエルはパレスチナを殲滅しようとしているのは誇張でも何でも無い。
ガザの人々の、「なんとしてもこの土地にとどまる、家を壊されたらまた建てる、木を倒されたらまた植える」と繰り返す言葉の強さ。

幸いにも配給担当者のトーク付上映日に観賞することができた。
翻訳担当社の二口氏に、個人的に権力や財力があるわけでもない個人がこういう映画と見るたびに無力感に襲われるのだが、たとえ小さな個々人の意見や行動でも積み重なって国家を動かすことがあるように、1人1人出来ることを考えることが大切だという言葉に胸を打たれた。

なんとか全国上映迄こぎ着けて欲しい。

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Jax