劇場公開日 2025年2月28日

「ライブハウスやフェスで一緒に心地よい時間を過ごしているような気にさせる映画」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN ihatakaeightさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ライブハウスやフェスで一緒に心地よい時間を過ごしているような気にさせる映画

2025年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

ボブ・ディランの若き日を描いた伝記ドラマ

全編音楽だ。街の喧騒ですら音楽に聞こえる。冒頭からボブ・ディランはそんな世界の申し子のように描かれている。メインがフォークソングなので聴きやすく、知らない曲でも、時折心の琴線に触れる。ライブハウスやフェスで一緒に心地よい時間を過ごしているような気にさせる映画だ。

本作最大の見所は、ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディランだ。
私は若かりし頃に、ベストアルバム、他のミュージシャンによるカバー曲、"Time out of mind"を買った程度で彼の事は多く語れないが、カバー原曲の彼の独特の歌声を初めて聴いて面食らったのを思い出す。ティモシー・シャラメ演じるボブは、驚くほど私の記憶のあの歌声と似ている。
物語は天才が世に出る瞬間をわりと地味に描いている。映画の中のボブは実物同様カッコいいが、神々しくはない。真夜中であっても、恋人と愛し合った後でも、すぐ煙草をくわえてギターを握り、パンツ一枚で、何か演奏している。それが超カッコいい。夜の街を肩をすくめて歩く姿や舞台で演奏中の後ろ姿も実に惚れ惚れする。ティモシー・シャラメの存在感がスクリーン内を席巻しており、彼の演技を通じ映画のボブは映画のボブで存在していると感じた。

わりと地味なストーリだと思うがエンタメ性も高く、メリハリもはっきりしており、観る者を飽きさせない。また音楽映画として没入感が半端ないので、映画館の、出来ればDolby Atmosや轟音環境で観る事をお勧めします!

ihatakaeight