「Like a Rolling Stone」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Like a Rolling Stone
ミュージシャンたちの伝記映画が絶えず止まずお送りされる時代ですが、今作もボブ・ディランにフォーカスを当てた1本。
生涯を描くのではなく、一つの時代を切り取って描いているというのもあってしっかりまとまっていました。
時間軸としてはニューヨークにやってきた若者・ボブ・ディランがニューポート・フォーク・フェスティバルでのステージまでを描くというシンプルな構成で、これはありがたいわ〜となりながら観ていましたが、どうにも音楽以外のシーンにそこまでそそられないというのが惜しいところでした。
スターダムに駆け上がっていく前から鼻につくところはありましたが、しっかり人気者になってからはお調子者になっているのでヤなやつだな〜とは思いつつも人間くさい青らしさは良かったと思います。
スターダムへのスピードが早く、半世紀以上前の出来事というのもあり、ライブハウスからホール、ホールからアリーナへのスピードが早いなぁと才能を見せつけられるのと同時にもっとカタルシスを感じたかったなぁというのが正直なところです。
良くも悪くも音楽の伝記映画での女性関係は激しいものが多い印象なんですが、ボビーはなんというか中途半端な関係の2人とのイチャイチャ未満な事しかやっておらず、年齢的なものを考えたらまぁ確かに…とは思えましたが、くっついて離れてのバランスが微妙でこれなら音楽に極振りしてくれた方が良かったのではと思わんこともないです。
フェスのコンセプトに合わない音楽をやろうとしたらそりゃ怒られるわなと思いつつも、んなこた知らんわロックをやってやるよという傲慢さがあったからこそ音楽の転換点になったのかなと思うと複雑なところです。
非難されながらも己の音楽をやりきるステージでようやくボブ・ディランのことをカッコいいと思えたのが不思議でした。
お客の求める音楽に応えないスタイルを続けていたからこそそのプライドが光り輝いており、ファンの気持ちに応えていないというところには引っかかりつつも、ライブシーンでは一番映えていたかなと思いました。
役者陣は素晴らしかったです。
ティモシー・シャラメ…あんた歌までいけるんか…お見それ入りました。
アカデミー賞ではかすりもしないという意外な結果に終わりましたが、ボブ・ディランに興味を持つきっかけとしての1本としてはアリだなと思いました。
フォークとロックの親和性、イカしてます。
鑑賞日 2/28
鑑賞時間 17:55〜20:30
座席 K-17