「ローレンスよ、無理もないぞ」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
ローレンスよ、無理もないぞ
劇場鑑賞候補に入れていなかったばかりか、正直なところ目に入っていなかった本作。毎週聴いているラジオ番組で課題作品に選ばれたのをきっかけで確認をし、公開2週目に遅ればせながらの参戦です。サービスデイのシネマカリテ、10時からの回は結構な客入り。
まずは前置きとして、題名からも判る通り主人公であるローレンスは筋金入りの「映画オタク」。そのため、全般を通して映画ネタが散りばめられていたり、また日本では馴染みが薄い『サタデー・ナイト・ライブ』に関する話がちょいちょい出てきたりしますが、理解できなくても鑑賞上は大きなネックになりません。無論知っていれば笑えたとしてもそれ自体は話の筋に影響は小さく、むしろその「世界線」にいるローレンスとの距離感を感じるための要素の意味合いが大きいかと思われます。
大学進学が目前に迫るシニアイヤー、ローレンスは理想と現実のギャップに翻弄され、更に悪循環で孤立していく状況にもがき苦しみます。子供じみて自己中心な言動が目立つローレンスですが、彼に理解を示して歩み寄ろうとする人がいても、反ってそれに甘えてしまい事態は悪化の一途。それでも、大人たちは自己を抑え「役割」に徹して付き合いますが、そんなこと理解できない彼はそれを「親身さ」とはき違えて…。思い通りにいかない事ばかりの後半はローレンスにとってまさに「試練」ですが、それがあってこその終盤の展開はじんわりと優しく、最後のシーンは「ローレンスの今後」に明るい未来を願ってやまずにいられません。
ローレンスを演じるアイザイア・レティネンや、ローレンスの母・テリを演じるクリスタ・ブリッジスなど、日本から見たら有名ではない俳優ばかりですが、皆さん味があって素敵です。とりわけ、アラナ役のロミーナ・ドゥーゴは必見。丁寧さを意識しつつも隠し切れないうんざりした感じや、時よりついて出る「バッド・ランゲージ使い」に本性が出たり、チャームさ全開で微笑ましい。(ローレンスよ、無理もないぞ)
ここで観逃したら配信されても気づけなかった可能性が高い本作、知れて良かったです。堪能しました。