劇場公開日 2024年12月27日

「絶妙なキャラクター描写で描かれる温かみ」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ wutangさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5絶妙なキャラクター描写で描かれる温かみ

2025年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

あまりに未完成でやっかいな主人公の青春時代におけるちょっとした成長を描いた作品。監督が自叙伝的に撮った処女作ということもあってか、ストーリーはオーソドックスな青春もので、切り口にも展開にも特段の意外性はない。

ただ登場人物のキャラクターそれぞれが良く描かれていて、時代背景となる90〜00年代の空気が心地よく吸いこめて、セリフのひとつひとつがしっかり伝わってくる良作という印象を持った。ある程度先が読めるシーンが多かったが、それでもダレることなく最後まで映画を楽しめた。

主人公のローレンスは、もはや自信というより虚勢に近いプライドを肥大化させていて、他人への感謝や配慮をまだほとんどできないクソガキの類として描かれている。これは17歳という設定からしても、程度の大小こそあれ多くの人が共感せざるを得ないようなキャラクター造形だと思う。我々はまるで「自分にはそんな時代はありませんでした」という顔で生きているところがあるのだが、彼に共感する瞬間、そんな黒歴史を内面的に白状させられるような気恥ずかしさに迫られる。これがなんとも心地よかった。

ローレンスを演じた役者のなんともいえない可愛げのある風貌や、セリフ回しやタイミングの妙が効果的に発揮され、悲劇的なシーンでもどこかコメディタッチでクスっとできるような、温かみのある作品だった。

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wutang