「こんなメールは来てほしくない」敵 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなメールは来てほしくない
1 老フランス文学者の身に起きた不思議な出来事を描く。
2 規則正しい生活をしていた文学者。かつての教え子に慕われ、幾許かの仕事をこなし、一人暮らしを楽しんでいる。時折家に来る教え子の女子とは現役時代にはちょっとした関係を持ち、今は逢瀬のように食事を共にする。気持ちが若やぎ、よこしまな思いを抱くこともある。そんなとき、敵がやってくるとのメールが届く。以来、身の回りで不思議なことが起
き始める。不審な影が見え隠れしたかと思うと、死んだ妻が姿を現し絡んでくる。そして・・。
3 本作において、敵は何を意味するのか?について、観客に判断を任せている。素直に考えれば、学者は、死に近づいていたと思われる。夥しい血便をもたらす重篤な疾患に罹っていた恐れがあったこと、死んだ妻が学者に見え始めたのは死出の旅路へのお迎えの為であったこと、資金繰りの相談を受け、大金を渡したことで自身の生活資金が激減したことから想像できる。敵に関するメールで運命のテンカウントが鳴り始めたと考える。
4 陰影の濃い白黒の画面は、長塚の悠然とした演技や台詞を少なくしたことと相まって静謐さを感じ見ていて落ち着く。そうした中で、中途から学者の日常のやり取りの描写と非現実的で白昼夢のような描写が境目なく現れるのには面食らった。全体を通せば、本作において、吉田は筒井の現実と虚構がない交ぜになる小説世界の映画化にチョー真面目に取り組んだと思えた。
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