「妄想には現実が投影される」敵 タランティン・クエンティーノさんの映画レビュー(感想・評価)
妄想には現実が投影される
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デヴィッド・リンチの訃報が流れた日にこの映画を観ることが出来たのはある種の運命なのか?
この作品のキーとなる部分は「マルホランド・ドライブ」と共通しているように思える。
それは、「主人公の夢(あるいは妄想)を通して、その主人公の現実を知ることが出来る」という点だ。
妄想はその人の現実が投影される。その人が何を考え、何を感じ、何を欲しがり、何を怖がり、そして何を後悔しているかが反映される。そしてそれらが時に誇張され、時に矮小化され、時に変形して、夢や妄想に現れる。
この映画でも、主人公の妄想を通して、主人公がどんな人間で、これまでどんな人生を歩んできたのかが推察出来るようになっている。
なので、「どこまでが現実でどこからが妄想なのか」を考えることはあまり意味を持たない。どちらも描いているものは同じだからだ。
現実パート(それすらもどこまでが現実かはわからないが)を非常に丁寧に描いていてとてもリアリティを持たせているので、そのおかげで妄想パートが非常にエッジが効いていてエキサイティングなものたらしめている。
また、役者陣の演技もとても光っている。主役の長塚京三はもちろんのことだが、最近乗りに乗っている若手女優代表格の河合優実がまた抜群に良い。
2025年はまだ始まったばかりだが、早くも今年のベスト映画候補になりそうな一本であった。
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