劇場公開日 2025年1月17日

「年配者は自分の老いを考えてしまう」敵 たこ姫さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5年配者は自分の老いを考えてしまう

2025年1月17日
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鑑賞方法:映画館

私は70を越したばかりだけど、やはり自分の死を意識の外に追い出すことはできない。ましてや主人公のように80歳に近付けばなおさら。

新聞に載っていた長塚京三のコメントは「ステータスを生活の質を保つことで守ろうと意地になっている」「訪れる死の上手をいってやろうだなんて許されないこと」「今までの自分を反省せずたかをくくっている」と手厳しい。だから若い人に、たかをくくらず真摯に生きてほしいと締めくくっていた。

人間そんなに完璧には生きられませんよ。きっちり自炊して生活の質を保つなんてなかなかできないこと。主人公は偉い。細々ながら原稿書きの仕事もあり、それがなくなるとなっても穏やかに受け流しプライドを持って当たる、交遊関係も程よくあり、若いネーちゃんに騙されるのもひとつの勉強。縊死も試みるが生還し簡単ではないことを知る。
男は灰になるまで性欲があると聞いたことがあるが、性欲も人間の生きるエネルギー。何事も肯定的に生きて良いと思う。大きな迷惑事故など引き起こさないようにして。仮にみっともない事件を起こしても、それもあがいて生きた証拠。
死んだ後にみっともない生きざまでしたねと後の人に笑われても、それでいいではないか。

ただ、私自身が恐れるのは、認知が不確かになり、周りと齟齬が発生し混乱の中に投げ込まれること。「敵」はやはりいるのだ、確実に。やっぱり戸惑い振り回されながら混乱の中で死ぬのかな?それも仕方ないのだろう。今を一生懸命生きるしかないと自分の結論を得た。見た甲斐があった。
しかし、封切り初日の二回目上映は、年寄りだらけだった。昼間だから当然だけど。

たこ姫