「どうする?」敵 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
どうする?
「敵」とは何か?受け入れ・割り切っているつもりでも、そう簡単には割り切れない「死」(や老い)。それは備えてもゆっくりは来ないで、突然やってくる。
本人曰くXデー"最期"を意識することでハリの出た、淡々と規則正しく過ごす日々を彩る食事シーンの数々がどれも美味しそうで、見ているこちらまで食欲をそそられる。モノクロだけど、まさかの飯テロ映画だった。自炊モチベーション上がる!自分もこんな丁寧な暮らしが送れるようになりたい。
そうした日々が、「敵」の存在によって徐々に狂い始めていく…それは北(上)からやってくる。「敵」の存在が示され、作品が進むほどに、夢のパート(とも言い切れない?)が長くなっていき、また現実との線引きもどこからどこまでか曖昧になっていくのが印象的だった。
儀助=長塚京三さん。まさしくハマり役とはこのこと。パリというバックグラウンド含めてご本人とよくマッチした役柄を、前半はごくごく自然体に(見えるような演技で)、物語が進んでいくにつれ感情の起伏や無意識的に自制の行き届かない部分で際立った -- 故に観客から見れば間抜けで滑稽な -- キャラクター描写を演じている。シュッとしたスマートさとコミカルな無様さ、そのバランスがよかった。
自分を律することで無意識にでも少し悦に入る、そうした説教口調や知らず知らずに出てしまう上から目線など、脇の甘さに起因するアレやコレやの手痛いしっぺ返しもそこそこに、密かな慾望を抱えていた魅力的で妖艶な教え子にも翻弄される始末。妻との永遠の愛を誓った自らへの自戒も含め、遠目に見れば「目(瞳)」のようにポスタービジュアル然り"壁に耳あり障子に目あり"な人生か。
吉田大八監督らしさはありながら、その苦手さよりも今回は好み・面白さが勝った。無論モノクロ撮影も、題材に対して必然性のような力強さを感じて、作品によくハマっていた。笑いのセンスもGOOD◎
監督参考作品『ア・ゴースト・ストーリー A GHOST STORY』『ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ The Return』
勝手に関連作品『PERFECT DAYS』
P.S.『雨の中の慾情』にしても、今年は難解な"夢か現か映画"が日本映画のトレンド?とは言っても本作のほうが格段に素直に楽しめる。