配信開始日 2024年10月3日

「プロの仕事」トラブル・バスター 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0プロの仕事

2024年10月9日
iPhoneアプリから投稿

本作は、まるで『ダイハード』シリーズ4作品を1本に濃縮したような、
息つく暇もないスピード感とテンポが魅力の作品だ。

2分間のアバンから観客を物語に引き込み、
その後も猛スピードでストーリーが展開していく。

しかも、
この驚速展開の中でも、
主人公のまっすぐな(やや粘着質をほのめかし、それが離婚の原因?)
性格はしっかりと描き出されている。

本作の更なる優れた点は、
主人公の性格を、
直接的にセリフやシーン建てで、
表現するのではなく、

各シーンでの振る舞い、小さなしぐさ、
セリフ以下のつぶやき、
ちょっとした行動等、
さりげなく、
その、前のめりになりがちな、
性格を描き出していることにもある。

これは警官ではない主人公が頼りないながらも、
ストーリーを前進させるファクターの貢献にもなっている。

これは、
シナリオ作成において「見せ方」を重視する、高度な技術と言える。

この巧妙なキャラクター描写の裏には、
どのようなシナリオ作成のプロセスがあったのだろうか。

これはあくまで想像だが、本作の製作者たちは、

チェス盤のようなものを用意し、
それぞれのキャラクターを駒に見立てて、
複数人でアイデアを出し合いながら、
プロットを組み立てたのではないだろうか。

あるいは、小さなプロットをポストイットに書き出し、

壁に貼り付けて、前後、添削しつつ、

(小ハコ、ポストイット添削はよくやります)

全体像を把握しながらストーリーを構築していったのかもしれない。

このような多様な手法を用いながら、

サブテキストを豊富に盛り込み、
サブプロットを緻密に編み上げていく。

これは、
プロの凄腕シナリオライターとそれを支える強力なチームの
見事な仕事だ。

おおげさな言い方だが、

アクション映画の小さなパラダイムチェンジ、
コペルニクス的転回と未来の映画歴史家が言い出しても不思議ではない。

ワンダーシビックが、
スウェーデンでは現役か!

蛇足軒妖瀬布