「ナスターシャ・キンスキーが歌うトム・ウェイツがマジで凄い」ワン・フロム・ザ・ハート リプライズ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ナスターシャ・キンスキーが歌うトム・ウェイツがマジで凄い
昔レンタルビデオで借りて、途中で観るのをやめてしまったのはなぜだったのか? 2、30年ぶりにきちんと見直してみようと映画館に行ってみた。コッポラが創作意欲にあふれていたのは伝わってくるが、やりたいことのスケール感と語るべき物語の釣り合いが取れていないように感じる。いや、男女の小さな痴話喧嘩を、バカでかいセットでファンタジックな音楽劇に仕立てようということはいいと思う。いいと思うんだけど、やっぱどうでもいい話だなと思ってしまうのは、ありきたりな話を面白がらせるほどの深みが宿ってないような気がしてしまうのだ。
しかし、どこにでも転がってそうな男女の凡庸な物語を、凝りに凝った手法を映像にするといういかにもコッポラらしい誇大妄想的なやり口は、唯一無二のイビツさがあって興味深く観ることはできた。
そして驚いたのが、おそらく本人が歌っているであろうナスターシャ・キンスキーの歌声。サーカスの娘役で曲芸を披露しているのも大したものだと思いつつ、カバーされるとクセの強さがかき消されて突然凡庸に陥りがちなトム・ウェイツの楽曲を、まったく曲の持ち味を損なうことなく歌いこなしていたから(サントラ盤ではウェイツが歌っているので映画のシーンでしか聴けない)。ナスターシャ・キンスキーが歌うシーンだけでもお釣りがくるし、絶品ではないにしてもほかでは味わえない料理を出してくれる価値があるのではないかと思った次第です。
コメントする