「重要な題材だと思われながら」金子差入店 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
重要な題材だと思われながら
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので短く)
今作は、刑務所や拘置所への差し入れを代行する「差入屋」という余り知られていない職業の重要な題材を扱っていて、面白くは観ました。
ただ重要人物の、差入屋を営む主人公・金子真司(丸山隆平さん)、連続幼女殺人犯・小島高史(北村匠海さん)、母親を殺したとされる犯人への面会を求め続ける二ノ宮佐知(川口真奈さん)の、いずれも共通して、母親との関係性に問題があった人物描写になっていた点は気になりました。
本来であれば、それぞれの人物や事件には細かな違いがあると思われるのですが、母親との関係性の問題に共通して焦点化した事で、事件も人物描写も人間理解に狭さを感じさせていたと思われました。
加えて、主人公・金子真司の妻・金子美和子(真木よう子さん)の周りの母親関係の中で、差入屋への世間の偏見が描かれ、最後は息子の和真(三浦綺羅さん)がいじめに遭う場面が描かれます。
しかし、差入屋に偏見を持っている周りの母親たちや、いじめにきちんと対処しない教師の描き方が、ややステレオタイプの深みのない、主人公・金子真司ら主要人物を引き立たせるためだけの道具的な描き方になっている印象を持ち、気になりました。
つまり、主要な人物の根源が母親との関係性の問題に狭められ、周りの主要でない登場人物の描写が深さ乏しいステレオタイプになってしまっていたと感じたのです。
これはおそらく、古川豪 脚本監督に問題の要因があったと、僭越ながら思われました。
重要な題材と、そして主人公・金子真司を演じた丸山隆平さんを初めとして、俳優陣の皆さんの深さある演技の中で、惜しい作品になっていたと、僭越今回の点数となりました。