「まなざし」金子差入店 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
まなざし
差入屋という職業にフォーカスを当てた作品で、丸山くんが主演していることもあって惹かれての鑑賞。
思っていた路線とは違いましたが、生々しい実情を描き切った力作だったなと思いました。
様々な囚人との関わり合いを持っていくストーリーかと思いきや、一本大きな筋のあるストーリーに付随してくる小話があるといった感じでした。
主人公の金子真司自身も暴行で一度刑務所に入っているという経験もあり、叔父さんの手伝いをしっかり職にし差入屋をやっているという経緯のもと生活しており、カッとしやすい性格もあってうまくいかないのかなと思いきや、他人のことを思いやったり、犯罪者の親族と触れ合うことによって心が蝕まれていくといった感じのアプローチの仕方をしているのは珍しかったなと思いました。
奥さんや叔父さんががっしり支えてくれているからこそ、多少道が外れることがあっても更生に向かっているという真面目な部分が観て取れたのが良かったです。
エピソードをつまんでは本筋に戻してみたいな流れが結構多かったのが玉に傷で、息子がいじめられたエピソードもどこから差入屋という職がバレたのか、そもそも子供たちがそこんとこ分かるのかというあたりの描き方がかなり杜撰で、そこでブチギレた真司が学校に突っ込んでいって担任をぶん殴ったりと素行が悪くなったかと思いきや、なんやんかんやで有耶無耶になったかと思ったら、息子のいじめの問題は解決していてとなんだか飲み込むに飲み込めない展開は惜しかったです。
本筋は親を殺されたJKが、実は犯人に罪を被ってもらっていて、なんとか会話できないか、お礼を言えないかと奮闘するお話になっていき、ここら辺は差入屋というよりかは、ツテでなんとかして犯人と面会しようとするという展開なので、確かに差入屋じゃなきゃできないけれど、せっかく珍しい職業なのにそういう展開で消費しちゃうのか…と勿体なさを感じてしまいました。
それでも感動的な場面はしっかり感動できたので良かったとはいえ、もうちょっと差入屋としての活躍が観たかったとなりました。
隣人の娘を殺した殺人犯との対話のシーンも北村くんの好演が光っていただけに、差入屋としての対話よりも罪人同士の会話みたいなギラつきがあって、なんだかズレちゃってない?となってしまいました。
鏡一枚越しとはいえ、てめぇぶっ殺してやりてぇよって言っちゃうかね…と苦笑いしてしまったり。
この職業をこの作品のみで観ただけではありますが、なぜ近所の人たちに忌み嫌われるんだろうと思いました。
囚人を直接的に助けたとかならまだしも、手紙や衣類やお菓子を届けただけでは近所の人たちはヤーヤー言ったり、植木鉢を壊したりするんだろうとどうしても不思議で仕方なかったです。
少し物足りなさは感じましたが、明るい未来へと向けて走り出した金子の事は応援していきたいと思います。
エンドロール後のラストカットは非情だけど致し方なしなのかな…。
鑑賞日 5/26
鑑賞時間 9:35〜11:40
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