「タイトルなし(ネタバレ)」金子差入店 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
暴行事件で収監されている金子真司(丸山隆平)。
妻・美和子(真木よう子)は身重で、月に一度の面会に訪れていた。
が、先月は来ず。
真司は、その理由に気づかなかった。
真司の暴言で面会を終えて出ていく美和子の姿をみて、真司はようやくその理由に気づく。
それから十年近く。
出所した真司は、伯父(寺尾聰)の援助があり、伯父が営んでいた差入屋を引き継ぐことになった・・・
といったところからはじまる物語。
差入代行業者が主人公という珍しい設定で、過去、ミヤコ蝶々が差入屋の主人公を演じた2時間ドラマがあったらしいが、それ以外にはない、極めて珍しいものだそうだ。
真司の息子の同級生で幼馴染の少女が惨殺される事件と、自宅売春を行っていたシングルマザーが刺殺される事件と陰惨な事件がふたつ描かれ、そのふたつを主軸にいくつものエピソードが描かれます。
が、複数の伏線が最後にピタリ・・・というタイプのエンターテインメント映画ではありません。
特別な状況下の普遍的心情・感情を描く(スティーヴン・キングがいうところの)エンターテインメント。
出演陣では、まず丸山隆平が好演。
これまでは(あまり彼のことは知らないのだが)明るいイメージがあったが、今回は心の奥底に何か暗いものを秘めた感じを冒頭から醸し出しています。
少女惨殺犯を演じる北村匠海も、普段とは異なるタイプの役で、好演。
(やや過剰だが)
北村の役は、右瞼に特徴を持たせたメイクで左右非対称を作っているが、これは主役の丸山もよくよくみれば左右非対称の面をしていることに由来するかもしれません。
ふたりのキャラクターの相似・類似の演出と思われます。
相似・類似の演出だと、拘置所の仕切りガラスへの二重映しなどがよく採られる演出だが、そこは避けた感じ。
自宅売春嫌疑の母親刺殺事件犯役の岸谷五朗は、やや作り込みすぎたきらいがあります。
彼の出演シーンのみ、過剰な演出に感じられました。
見応え十分の力作で秀作。
堪能しました。
なお、いくつかエピソードには「物語的な決着」がないものもあります。
物語として閉じていないので、観るひとによっては「納得できない」「中途半端」と感じるかもしれません。
エンドタイトル後の映像(差入店前の壊される鉢植え)は、犯人は描かれず、その「閉じていない」感が出ています。
良いエンディングでした。
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