「日々を大切に生きようと思える映画」金子差入店 エリさんの映画レビュー(感想・評価)
日々を大切に生きようと思える映画
つらい現実や忘れられない過去、凄惨な事件が描かれているにも関わらず、温かな気持ちが残る作品です。余白が多いので観る人によって、また何度か鑑賞することで受け取れるものが違ってくると思います。
私にとっては人生に残る一本になりました。
また、ヒューマンドラマとしてだけでなくサスペンスとしても楽しめる作りになっています。さりげなく散りばめられたヒントで人物考察をするのもお勧めです。考察がお好きな方は観た後にパンフレットを読むことをお勧めします、メインキャストの背景等書かれています。
エンドロールも最後まで見逃して欲しくないです。
主演の丸山隆平さんをはじめ豪華俳優陣のお芝居に惹き込まれます。丸山さんは近年舞台ではシリアスな役を演じられており(特殊詐欺を描いた「パラダイス」や芸能記者役の「ハザカイキ」)、今回はスクリーンでその熱演を見ることができます。差入れ屋として被害者と加害者の狭間で自身の弱さに翻弄され迷いながらも懸命に大切なものを守ろうともがく一人の男として生々しく生きており、表情や声色の繊細なお芝居と、その局面により佇まいや顔つきが変貌していく様が見事です。金子の精神状態が痛いほど伝わってきてつらくなります。
脇を固める俳優陣どなたも見逃せないのですが、特筆すべきは今回銀幕デビューを果たした現役女子高生の川口真奈さんです。台詞量の少ない難しい役どころですが、新人とは思えないお芝居をされています。これからも注目したい俳優さんです。
また、弁護士役の甲本雅裕さんもいい味を出しています。金子とのシーンは内容はシリアスなのですがとても柔らかな空気が漂い、少しホッとさせてくれます。
古川豪監督は長編映画デビュー作とのことで、記念すべき作品を観られたこと嬉しく思います。作品からもインタビューからも、世の中を少しでも良くしたいという思いが根底にあることが伝わってきました。これからも期待しています。
金子差入店の佇まいと映像の質感がどこか懐かしく、温かい余韻が残ります。家族であろうと懸命にもがく金子一家の温もりに触れるためにまた映画館に会いに行きたいです。
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