「文明社会への強烈な風刺」ブリンク・トゥワイス Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5文明社会への強烈な風刺

2025年4月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

観ていてあまり気持ちの良くない場面も出てくるし、何となく眺めているだけでは正直言って何だかよく分からないキモい作品に見えるかもしれない。しかし、この島で起きている出来事というのは一歩引いてみれば、アメリカ等の文明社会の実際の姿への強烈な風刺なのではないかと思える。

その姿とは、すなわち、表面上は取り繕って明るく素晴らしいように見えたとしても、結局、いつまで経っても偏見と差別が根深く蔓延り続ける社会のことだ。本作で糾弾しているのはミソジニーが中心だが、先進国の人々が途上国の人々に対して抱く侮蔑的な見方やその裏返しとして抱く恐怖心なども含まれる。しかし、その「文明人」たちのおかしさを気づかせてくれるのは、作中では「蛇の毒」に象徴される、彼らが見下している人々の知恵だったりする。

不祥事後に強いられた謝罪会見に関してスレイターが述べる「忘れることは許すことよりも良い(Forgetting is better than forgiveness.)」というセリフは日本の政治家たちも同じことを考えているのではないだろうか。要するに、許されなくても皆んなが忘れてくれれば無かったことになる、ということだ。新興宗教の政治関与の問題も裏金問題も「喉元過ぎれば何とやら」であくまで追求しようとすると、アルバイト投稿者を使ってでも「いつまでそんな話をしているんだ」「もう飽きた」等々と大量に書き込むことでそれ以上話題にさせない、というのも常套手段だ。

社会に蔓延る問題については、為政者の思い通りに黙らされるのではなく、常に声を上げ続けることがいかに大切か、ということだろう。

Tofu