劇場公開日 2025年1月17日

「いい映画の雰囲気作りには成功」サンセット・サンライズ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5いい映画の雰囲気作りには成功

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

フルリモートの東京の会社員が、東北に移住してドタバタする話と思っていたが、少しだけイメージとは違っていた。それは地方の空き家問題を取り上げていたから。こんなの自治体が援助するか、どこかの大企業が強い志を持って取り組まないと成り立たない。それでもまだ田舎の現実に苦しむ可能性があるけど。方言や気質、メンタリティといった都会とのギャップを見せたり、震災との向き合い方を考えさせられたりする流れもあったりする。でもそこらへんも全部あまり深掘りしない。そりゃそうだ。クドカンだもの。それでも十分問題提起になってたとは思う。
シリアスな側面を匂わせつつ、映画全体を通してアピールしてくるのは面白さだ。クドカンらしい。たしかに「祈る会」のメンバーの行動とかは、異常さと紙一重でそれなりに面白い。全体を通して菅田将暉演じる西尾の明るいキャラで強引に楽しい雰囲気を作ろうとする意図を感じる。たしかに観終わった後になんとなくいい映画だったな思わせる雰囲気づくりは成功していた。それはそれで悪くはない。
でも!と思う。西尾と百香の恋愛の描き方が雑すぎないか?と。最後のあの話し合いであんな雰囲気になったのに、しばらく月日を置いただけで恋愛に発展するか?そのあたりが曖昧なまま強引に終わらせた感じがする。あの駆け足感はひどかった。それもクドカンだからなと納得する。クドカンは恋愛を描けないもの。
ただ、竹原ピストル演じるけんさんが営む居酒屋で出てくるメニューが美味そうだったことは評価に値する。他にも魚を使った食べ物が出てくるシーンは例外なく素晴らしかった。フードコーディネーターがいい仕事をしたのだろう。酒飲みなら観終わった後に飲みたくなる映画だ。それは確かだ。

kenshuchu