「人を愛することの素晴らしさと切なさ」366日 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
人を愛することの素晴らしさと切なさ
本作は、沖縄の高校で出会った湊(赤楚衛二)と美海(上白石萌歌)の20年余りの愛の軌跡を描いたラブストーリーである。極めて日本的な感動作品に仕上がっている。観終わって、満足感、多幸感に包まれ心地良い余韻に浸ることができる。
高校から東京の大学に入学した湊と美海は、同棲して順調に愛を育んでいくが、転機が訪れる。二つ年上の湊は夢を叶えるため音楽関係の会社に就職する。しかし通訳という夢を持った美海は就職が決まらず夢を諦め現実的に生きようとする。そんな矢先、湊から意外な宣告・・・。
起伏のあるストーリーだが夫々のエピソードには既視感がある。しかしエピソードの紡ぎ方が巧みであり観客の恋愛経験と重なり感情移入し易い構成になっている。あの日の自分が蘇ってくる。秀逸な脚本の賜物である。
上白石萌歌は、瑞々しさ明るさに加え目の表情が素晴らしい。目の表情だけで感情を見事に表現している。湊を想う一途さが目の表情に宿っている。
赤楚衛二は、台詞が少ない湊の複雑な心情を全身と表情の演技で巧演している。これ以上二人でいたら自分の過酷な運命に美海を巻き込むことになる。自分だけで受け止めたいという気持ちは自己犠牲である。母を亡くした時の途轍もない喪失感に美海を晒したくないという強い意志を感じる。
作品の節目で沖縄の美景が挿入され心癒される。青い海の上を貫く真っ直ぐな道路が二人の愛の一途さを象徴している。
沖縄に戻った傷心の美海を幼馴染の琉晴(中島裕翔)は懸命に支える。好意を持っていた美海の気持ちに寄り添い全てを受け入れる彼の男気溢れる行動は献身と呼ぶのに相応しい。涙が溢れてくる。
一方、湊は過酷な運命を支えた大学時代の仲間である香澄(玉城ティナ)と再会する。彼女の今でも好きという本心を明かさず過去と前置きした告白が切ない。湊を支えた彼女の行動も献身である。
本作は、美海、湊、琉晴、香澄の愛の形を描くことで、人を愛することの素晴らしさと切なさに迫った秀作である。
みかずきさん、コメントありがとうございます。
恋も愛も、難しいですよね。
相手のことを思っての行動もその相手に伝わらなかったら自己犠牲の世界です。「献身的な」というやつですよね。
でも、愛があればあるほど人は自己犠牲を受け入れちゃうんですよね。哀しいけど、美学でもあると思います。
こんにちは~
こちらこそありがとうございます!
ホントは好き同士なのに一緒になれない、いれない、切ないですよね。
個人的には琉晴の美海を優しくフォロー姿が印象的でした。