「「不思議な」ドキュメンタリー見ているよう」最後の乗客 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
「不思議な」ドキュメンタリー見ているよう
クリックして本文を読む
ミステリー仕立てではあるが、冒頭の描写をみただけでどんな映画か分かってしまうし、展開もベタだが、バスの停まらないバス停、いなくなった人たちに送る手紙を投函するポスト、犠牲者の名前を刻んだ慰霊碑、「あれ」の遺構があちらこちらに残るその場所で展開されるドラマは、まだ終わらないあの日のドキュメンタリーを見ているような感覚になる。
母子が必死で「ハママツ」までいってくれるタクシーを探して遠藤と出会うシーンは、迫りくる危険に、切羽詰まった尋常でない緊迫感がものすごく現実味がありました。
あの母子や遠藤のような人たちは実際まだまだいて、自覚がないまま彷徨っているのだろうと思った。
娘があのポストに投函した封筒が父のタクシーに届けられて、「ちゃんと届くんだ」と感慨深いものがあった。
遠藤は実は母子をハママツに連れて行かず、安全なところに行こうとしていたことが分かり、亡くなったのは母子のせいでなかったのがせめてもの救い。
映画としてみれば、もういくつかひねりがあればよかったと思うが、13年経過したあの場所と、そこにいたひとたちの不思議な記録と思うところが大きくて、13年後の「今」を遺せたことで良いような気になりました。
エンドタイトルの、ぼろぼろで滲みだらけの、平和で幸せな写真の数々。
いろんな感情が湧いてきて胸がいっぱいでした。
コメントする