「二度観ると印象が変わった」遠い山なみの光 mr.buonoさんの映画レビュー(感想・評価)
二度観ると印象が変わった
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一度目は、戦争(原爆)への憎悪とヒューマンミステリーの余白を考察して愉しませて貰った。悦子が教え子を原爆から守れなかった悔恨と自身の被爆により我が子に遺伝させてしまった罪悪感を抱えバイオリンの前で涙する姿に感情移入が収まらなかった。そして、佐和子と悦子・万里子と景子の関係に思考が支配されつつ広瀬すずと二階堂ふみの凛とした美しさに目を奪われていた。しかし、結末を知り自分なりに埋めた空白を確認する為に二度目を観るとその印象は変わった。この映画は、ミステリーの空白を埋める作業と反戦的な高揚感に没頭しがちではあるが、その芯は、悦子がイギリスに渡って来た生き様と胸にしまってあった景子に対する母としての悔恨をニキが知るに至り、コレまで疎ましく感じていた母への感情が愛情とリスペクトに変わり、自分自身も母になることへの覚悟を決めた家族愛の再生をニキの目線で描いたドラマではないか。それは、もしかしたら原作者(イシグロ氏)が自分の母に対する感謝と尊敬する想いをニキを通して語っている様にさえ思えた。余談ではあるが、悦子が二郎と別れた理由は自身と景子の被爆が起因と云うより、むしろ義父の緒方に対してぼんやりと恋心を抱いていて、その葛藤の結果、別れる決心をしたのではないか? 二人への接し方の違い(特にオムレツを焼くくだりでのセリフ「今日は私の機嫌が良くて運が良かとね…」に滲む距離感)を見ているとそう思えてならない。
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