「めんどくさい若者も見守れる大人たち(旅の間限定で)」リアル・ペイン 心の旅 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
めんどくさい若者も見守れる大人たち(旅の間限定で)
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よくも悪くも、いや、いいも悪いもないのだけれど、自分の視点がデヴィッドでもベンジーでもなく、ツアーに参加しているほかの大人たちに近づいていた。ベンジーの混乱もデヴィッドの葛藤もわかるが、ほかの大人たち(ベンジーを嫌うおじさんを除く)は基本的に、彼らが悩みを突き詰めたところでわかりやすい答えが出ることなどないとわかったうえで、ベンジーがとっちらかってジッタバッタしているけれど本質的には善良な人間であることを感じて好意的に受け止めているし、ツアーの間くらいなら見守っていようという気持ちを持っている。もはや同じ土俵にいない大人たちと、大人の年齢なのに土俵から折りられないデヴィッドとベンジーという対比が印象に残る。そして短い旅の道連れという後腐れのない関係だからこそ、彼らは目立つベンジーと交流し、デヴィッドのことはあまり頓着しない。そりゃそうだよな、デヴィッドに旅の道連れとして面白みがないことは本人も自覚しているだろうし、自分が見向きもされないという自虐はあの環境では自業自得でもあり、そういう小さな残酷さがチクチクと効いてくる。しかしベンジーはあの後どうしたのか、で、見る人の人生観が問われる作品でもある。自分はどうしても、ベンジーには悲観的な未来しか想像できないのだけれど。
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