劇場公開日 2025年1月31日

「今観るに値する、ジェシー・アイゼンバーグの才能溢れる秀逸ロードムービー」リアル・ペイン 心の旅 ななやおさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今観るに値する、ジェシー・アイゼンバーグの才能溢れる秀逸ロードムービー

2025年3月3日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

ベンジー役を務めた俳優のジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本・製作をも務めた第97回アカデミー賞で脚本賞と助演男優賞にノミネートされた注目のロードムービーです。

真田広之さんはじめ、賀来賢人さんなど、近年日本の俳優さんの中にも、出演側だけでなく製作にも積極的に参加し結果を残している俳優さんが増えたように思います。

主観的な目と客観的な目の両方を持ち合わせ、常に俯瞰して作品を眺めながら、同時に感情を込めて役を演じるというのは、想像するにどんなに難しいことだろうと思われます。投打で活躍する二刀流の大谷翔平さんのように、俳優界の二刀流である彼らは、大変器用で才能にあふれているといえます。

ストーリーは、ユダヤ人で人好きのするデヴィッド(キーラン・カルキン)と、彼と兄弟のように育った少し人見知りな従兄弟のベンジーの物語。一見正反対な性格のように見える彼らは、ともに感受性が高く繊細である点において共通しているともいえる。終始取り立てて大きな事件が起きるわけでもなく、物語は家族のルーツの地を巡る旅を通して、そこに参加する人たちとの交流や心の動きを静かに丁寧に描いています。

観終わって感じるのは、
「絶妙なココロの居心地の悪さ」とでもいいましょうか…🧐
やっぱり現実ってそんなに簡単ではないよねって思い知らされるのだ。
全ては、少し意地悪なエンディングによるものでしょう。奔放で人たらしでどこか危ういデヴィッドを好演したキーラン・カルキン、彼が最後に空港でほんの少しでもニコリと笑ってくれたのなら後味はもう少し軽やかになっていたことでしょう。そこを安直にそうしなかったところが、ジェシー・アイゼンバーグの絶妙なバランス感覚だと思います。

他人の痛みのホントのところは
その人にしかわからない

分かりたいけど分からない
簡単じゃない

リアルペイン
それも含めて、痛い

それでも誰かと少しでも分かり合いたいという気持ちを諦めたくないし
諦めちゃいけない。

そんな風に優しく耳元で諭されたような気がしましたよ🙄

とても美しく
余韻のある映画でした。

ななやお