リアル・ペイン 心の旅のレビュー・感想・評価
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今観るに値する、ジェシー・アイゼンバーグの才能溢れる秀逸ロードムービー
ベンジー役を務めた俳優のジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本・製作をも務めた第97回アカデミー賞で脚本賞と助演男優賞にノミネートされた注目のロードムービーです。
真田広之さんはじめ、賀来賢人さんなど、近年日本の俳優さんの中にも、出演側だけでなく製作にも積極的に参加し結果を残している俳優さんが増えたように思います。
主観的な目と客観的な目の両方を持ち合わせ、常に俯瞰して作品を眺めながら、同時に感情を込めて役を演じるというのは、想像するにどんなに難しいことだろうと思われます。投打で活躍する二刀流の大谷翔平さんのように、俳優界の二刀流である彼らは、大変器用で才能にあふれているといえます。
ストーリーは、ユダヤ人で人好きのするデヴィッド(キーラン・カルキン)と、彼と兄弟のように育った少し人見知りな従兄弟のベンジーの物語。一見正反対な性格のように見える彼らは、ともに感受性が高く繊細である点において共通しているともいえる。終始取り立てて大きな事件が起きるわけでもなく、物語は家族のルーツの地を巡る旅を通して、そこに参加する人たちとの交流や心の動きを静かに丁寧に描いています。
観終わって感じるのは、
「絶妙なココロの居心地の悪さ」とでもいいましょうか…🧐
やっぱり現実ってそんなに簡単ではないよねって思い知らされるのだ。
全ては、少し意地悪なエンディングによるものでしょう。奔放で人たらしでどこか危ういデヴィッドを好演したキーラン・カルキン、彼が最後に空港でほんの少しでもニコリと笑ってくれたのなら後味はもう少し軽やかになっていたことでしょう。そこを安直にそうしなかったところが、ジェシー・アイゼンバーグの絶妙なバランス感覚だと思います。
他人の痛みのホントのところは
その人にしかわからない
分かりたいけど分からない
簡単じゃない
リアルペイン
それも含めて、痛い
それでも誰かと少しでも分かり合いたいという気持ちを諦めたくないし
諦めちゃいけない。
そんな風に優しく耳元で諭されたような気がしましたよ🙄
とても美しく
余韻のある映画でした。
みんな痛みを抱えて生きていく
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッドと、兄弟のように育った従兄弟ベンジー。亡くなった最愛の祖母の遺言によって、自分たちのルーツを知るポーランドのツアー旅行に参加する。
その過程でそれぞれの痛み、人生を見つめ合い、時にはぶつかり、時には涙し、ハグし合う。
明るく陽気でマイペースなコミュ力オバケのベンジーを演じたキーラン・カルキンが素晴らしかった。底抜けの明るさで人の懐にスッと入って魅力するのに、ふとした瞬間どこか寂しそうで、脆そう。このベンジーのキャラクターがストーリーの肝と言っても過言ではないから、それを見事に演じていたキーラン・カルキンに拍手を送りたい。
そしてその対極にいるデヴィッドは、真面目で大人数もハメを外すのも苦手。私はデヴィッドの気持ちがすごくわかる。というかデヴィッドみたいな人の方が大半だろうから、ベンジーを羨ましくも憎たらしくも思う気持ちがすごくわかると思う。
ホロコーストからの生き残りの祖母を持つふたりは、ユダヤ人の歴史の痛みを知ることで、自身の痛みや生き方を振り返る。
こんな地獄を生き抜いて生まれた自分たちは、ちゃんと真っ当に大切に生きないとと思う。でもそれは日本人だって同じだ。
けれど思うのだ。確かに過去の歴史と比べると今の方が幸せで、当時の人たちからしたら今の時代のそれぞれが抱えている痛みなんて痛みに思われないかもしれない。
「昔はなーもっと大変だったんだぞ」その一言で何も言えなくなってしまい、痛みが膿んで治らなくなる人だっているのだ。
自分の抱える痛みは自分にしかわからないし、人の数だけ痛みの種類がある。
でも理解ができない痛みを抱える人に寄り添って、大好きだよと抱きしめることで、理解は出来なくても、その人の痛みを和らげることは出来るんだと信じたい。
歴史と今の痛みを描きながら、ユダヤ人の歴史も学べる素敵なロードムービーだった。
痛みは天秤にかけられない
原題「A Real Pain」は、「面倒なやつ、困ったやつ」といった意味だ。
オープニングで空港のベンチに座るベンジーの横にこのタイトルが浮かぶ場面は、彼がその面倒なやつであることを示唆しているようでもあり、実際ツアーの序盤ではその通りの印象を受ける。
それがラストシーンで再び彼の面差しと共にこのタイトルを見る時には、直訳の「本当の痛み」の方の意味合いが色濃く浮かぶ。最初のタイトルコールと対になった演出が効いている。
多分多数派だと思うが、私もまたデヴィッド寄りの人間なので、彼がベンジーの奔放さに困惑する気持ちは手に取るように分かった。
ワルシャワ蜂起記念碑の前で、おどけた写真を撮るベンジーを不謹慎に思って小声で注意したら、意外と他のツアーメンバーもベンジーのノリに付き合いだすのを見て気後れするところなんかはすっかりデヴィッド目線になり、疎外感に胸の奥がヒリヒリした。
ルワンダ虐殺サバイバーのエロージュやガイドのジェームズとの間には気を揉むようなやり取りがあったのに、最終的にベンジーは好かれてしまう。一見不躾なのに、その裏にある率直さという美徳がちゃんと伝わるのは羨ましい個性だ。
自由なベンジーの横にいると余計に自分の不器用さが際立って惨めな気分になる。一方で、彼がほんの数ヶ月前にオーバードーズ(OD)で生死の境を彷徨ったことも知っている。そんなデヴィッドは、好意や羨望に憎しみまでも入り混じった複雑な感情をベンジーに抱く。
だが、ベンジーの目にはデヴィッドの生き方の方が自分の人生よりよほど眩しかったのではないだろうか。行きの飛行機でデヴィッドの仕事をからかった時や、彼の家族の話を聞いている時、ベンジーはどこか寂しげだった。
対人関係は不器用であっても、デヴィッドには定職があり、家に帰れば愛しい妻とかわいい我が子がいる。
自分の家に会いに来るよう請うベンジーに、デヴィッドはベンジーの方がニューヨークに来ればいいのにと返す。でも多分、デヴィッドの幸せな家庭を見ることはベンジーにとって辛いことなのだ。
ラストシーンを見る頃、私はいつの間にかベンジーの目線になっていた。
こうした2人の男性それぞれの生きづらさが、ホロコースト史跡ツアーの道程と共に描かれる。
ツアーメンバーとの夕食の席で、デヴィッドはベンジーについて「祖母がホロコーストを生き延びた結果奇跡的に僕たちは生まれたのに、あんなこと(OD)をしていいのか」といった主旨のことを言った。確かにホロコーストは近代で他に類を見ないほどの圧倒的な「痛み」だ。その痛みを前にすれば現代人のパーソナルな苦悩は、一見ちっぽけなもののようでもある。
デヴィッドの言葉は、祖母のルーツを尊重する思いから出たものだろう。だが一方でこれは苦悩を抱える本人にとってはあまり役立たない論理だ。むしろ、ホロコーストの苦難に時間の隔たりを超えて全霊で感情移入する敏感さを持つからこそ、ベンジーは生きづらさに苦しんでいる。
「本当の痛み」は主観的なものであり、別の悲劇と比べたからといって卑小になったり偽物になるわけではない。
この物語がありがちな結末を迎えるとしたら、別れ際の2人の明るい表情で終わることだろう。だが実際は、あたたかい家庭に帰るデヴィッドと、そのまま空港に残るベンジーが対照的に描かれた。
旅の始まりでは待ち合わせ時間の何時間も前から空港に来ていて、旅の最後の別れ際にはしばらく空港に残ると言ったベンジー。元の日常で彼を待っている孤独との再会をしばし先送りにしているような、憂いを含んだ眼差しに胸が締め付けられる。
旅の経験は確かにこれからのベンジーにとって支えになるだろう。でも、彼の苦悩が即座に消えるわけではない。結局は旅の後の日常で、ひとりで地道に折り合いをつけてゆかなければならない。Real Painとはそういうものだ。
そんなことを思わせる、まさに現実的なラストシーンだった。
重いテーマの作品だが、全編を彩るショパンを聴きながらデヴィッドたちが訪れる史跡を順番に見ているうちに、ツアーに同行してポーランドを巡っているような気持ちになる。また、基本的にデヴィッドとベンジーのやり取りは軽やかで時にユーモアがあり、物語に親しみを感じさせてくれる。
人の心の痛みというものについてやわらかに問いかけ、安直ではないラストでその問いを問いのまま観客の心に残す。繊細で率直な誰かとしばらく過ごした後のような、不思議な余韻の残る映画だった。
家族の歴史を辿る旅は今の自分とこれからの自分を考える旅
ジェシー・アイゼンバーグが自らのルーツであるユダヤ系ファミリーの歴史を辿る旅を、疎遠だった従兄弟とのロードムービーとして描いている。アイゼンバーグはホロコーストを生き延びたポーランド人の祖先を持つ。従って本作は、自伝的要素が多く含まれたアイゼンバーグによるファミリー・ヒストリーと言ってもいいだろう。
実際に、映画はワルシャワにあるゲットーの英雄記念碑やクリジボウスキ広場、ルブリンの旧ユダヤ人墓地、最後はナチスの強制収容所のガス室へと舞台を転換させていく。それは、我々もホロコーストツアーが体験できる時間でもある。こんな機会は貴重だと思う。
過去に目を向けることは今を、そして、これからを見つめること。主演と監督を兼任するアイゼンバーグの脚本は、彼が演じる主人公のデヴィッドと、この役で本年度の演技賞を総取りしそうなキアラン・カルキン扮する従兄弟のベンジーが、互いの不信感を不器用に乗り越えていく過程に重きを置いている。それは誰もが思い当たることだから、人種や舞台を超えて心に刺さるのだ。
ショパン曲のBGMの煩さは敢えての狙いか
映画に登場する早口で饒舌で神経質なユダヤ系アメリカ人男性、と聞けば大勢がウディ・アレン監督・主演の諸作を思い浮かべるだろう。ジェシー・アイゼンバーグは、アレン監督の「カフェ・ソサエティ」で主演し、もともと親和性が高かったのか影響を受けたのかは定かでないが、アイゼンバーグ監督第2作でそうしたキャラクターである主人公デヴィッドを自ら演じるということは、性的虐待で映画界を追放されて不在となったアレンの“立ち位置”を受け継ぐ意志の表れだろうか。
デヴィッドと従兄弟のベンジー(演じたキーラン・カルキンがアカデミー賞助演男優賞ノミネート)は正反対な性格と説明されているが、どちらも神経症気味で生きづらさを感じているという共通点がある。そんな2人のロードムービーなので、理屈っぽい長台詞、奇声、突飛な行動などが、観る人によってはイライラさせられる要素になるかも。
2人は亡き祖母がナチスドイツに迫害されるまで暮らしていたポーランドを訪れ、第二次大戦の史跡ツアーに参加する。ガイドのジェイムズ(「エマニュエル」でも重要な役を演じたウィル・シャープ)が史跡の説明をしているあいだ、ポーランドを代表する作曲家ショパンのピアノ曲がBGMで鳴りまくっていて、これが台詞に重なって相当うるさいのだが、その後の展開を考えると、あのうるささもジェイムズの内なるいらだちを観客に体感させる演出の狙いなのかもしれない。精神的にしんどい映画ではあるが、本編1時間半という短さに救われる。
「行く事は叶わないが見る事は出来る」
いいやつなんだろうけど
みんな彼を好きになる
従兄弟同士のユダヤ系アメリカ人、デヴィッド( ジェシー・アイゼンバーグ )とベンジー( キーラン・カルキン )は、ポーランドのホロコーストを巡る史跡ツアーに参加する為、数年ぶりに空港のロビーで再会する。
時にかみ合わなくなる会話、相手の言動に苛立つ事も。それでも互いをとても大切に思う二人。それらの描写が、リアルで切ない気持ちにさせる。
監督・脚本・製作・主演を務めたジェシー・アイゼンバーグと、アカデミー賞助演男優賞を受賞したキーラン・カルキンのナチュラルな演技に引き込まれた。
本作撮影後に自身のルーツの地、ポーランドの市民権を申請し取得したジェシー・アイゼンバーグの、ポーランドに対する真摯な思いに溢れた作品。
映画館での鑑賞
沁みるストーリー、キーラン・カルキンの演技は圧巻
不思議な感情
特に説明もなく淡々と終わるアウシュビッツのシーンで、気づいたら涙していた。
元々アンネの日記、戦場のピアニスト、シンドラーのリスト、近年は関心領域など、ホロコーストをテーマにした映画や文化には比較的興味を持って触れてきたほうではある。だが生粋の日本人だ。
私は歴史そのものに涙していたわけではなく、自分をベンジーに重ねていたのだと気づいた。
大事な人を失った喪失感、普段は明るい人だと言われても、内では繊細で悩みも多いこと。
ベンジーの感情が動くたび、わたしの感情も大きく揺れた。
演技、余白、音楽、その土地の歴史までもが完璧に調和していた。
出逢う人たちの優しさにも、静かなラストにも、希望を感じた。良作。
幾重もの奇跡の果てに
疎遠になっていた従兄弟同士が、亡き祖母の遺言で参加したポーランドのツアーにてあれやこれや騒ぎを起こすが…といった物語。
性格は真反対。元気で破天荒に見えるベンジーも抱える闇があるらしく時に情緒が…。そんな彼を冷静に抑え込むデイブも彼もまた…。
そんな状況の中、ユダヤに縁のある個性的な人々と一緒に、祖母とも関係のあるホロコーストの歴史に触れていくが…。
いやぁ〜何というか、大変おこがましいですがデイブとワタクシって色々似てるな(イケメン顔以外)と思い、深く感情移入しちゃいました。
常識ハズレで空気も読まずにその時々の気持ちをヅケヅケと言い放っては皆を困惑させるベンジー。そんな彼の奇行を皆に謝る、神経質ながら常識人のデイブ。
…しかし何故でしょう。蓋を開けてみれば皆に心を開かれているのは…。
彼のことが大好きで大嫌い。
そんな彼になりたい。
…う〜ん、この複雑な気持ちよ!!
真面目にやるのが馬鹿馬鹿しく思えてしまう…。
特にジェームズとの別れ…気を遣いっぱなしだったデイブの方が遥かに淡白だったことが印象的だった。
…とはいえ本筋は勿論そこではないですね。
誰にも表面上には見えない心の闇を抱えて生きているわけだし。ここからの物語はどうなるのか。
そして石の置く場所よ…
リアルペイン…それは1人になった寂しさか、或いは闘魂注入のことか、はたまたこれからの不安か…。
あとは序盤のヨーグルト捨てるのは、ゾンビランド1.2の酒ポイッを思い出してちょっと笑っちゃった(笑)
終始聞かれる美しいピアノの旋律とともに、解決などではなく、抱えて生きていくしかない、最後の希望とも不安ともとれなくない眼差しに、そんなことを思わされた作品だった。
絶妙な横顔
ベンジーのあの寂しそうな表情が非常に印象的な映画。感情を素直に表現して時には波風を立てることもあるけれど、人の懐にスッと入り打ち解け合う人懐っこさがある。自分とおなじように寂しげな瞳を持つひとりのツアー仲間がいれば放っておけない。それによって一緒に来たデヴィットが孤独になるんだけど、悪気はないんだよね。一緒に来てくれたことには本当に感謝してるんだよ。
明るくて人生たのしそうに見えるベンジーの光と影が絶妙に映し出される旅。
随所に散りばめられたコメディ要素もクスリと笑えて良い。
ホロコーストの現場を歩いて凄惨な過去をめぐり、今がどれだけ恵まれた環境かは理解できるし有り難いとも思えるけれど、それでも今を生きているベンジーにもデヴィットにもそれぞれ固有の痛みがあって、それを抱えながら生きている。
ラストのシーンで、ベンジーは空港にとどまった。
まるで帰る場所がないかのようで、なんとも言えない不安を映し出す。
ロードムービー
亡くなった祖母のルーツを旅する 親戚同士の男二人のロードムービー。...
十人十色
アメリカ人の従兄弟同士が自分達のルーツであるポーランドを旅する話。頭が良く、いい職に就いて結婚もしているデビッドと、無職で独身のベンジー。世間的に評価されるのはデビッドだが、自由奔放で自分に正直な言動をするベンジーは、人を惹きつける魅力がある。全く性格が違う2人の掛け合いが面白く、笑える。
どちらも問題は抱えていて、生真面目でお堅いデビッドは理屈っぽく人付き合いが苦手。周りや常識を全く気にしないベンジーは感受性が高いゆえに、人一倍傷つきやすくストレスを感じやすい。
ツアーと他の参加者との交流を通じて、お互いの違いと友情を再認識していく過程で人間味のある生き方が何なのかと考えさせられる。温かみがあり、ほっこりさせてくれる映画。
主役のアイゼンバーグの体験にインスパイアされたストーリーらしく、ポーランドのツアーの内容が細かい。
デビッド役はどこかで観たことあると思ったら、ホームアローンのマコーレカルキンの弟なんですね。
演技上手い!!
本当の痛みはなかなか・・・
喜びとか悲しさとか、あるいは強い愛などは、それがどんな形であれ、見ていて結構気持ちがいいものだけれど、痛みというのは、どんなに強い表現や巧みな演出であっても、なかなか受け取ることが難しいなぁと─。それは、見ているこちらがすんなりと受け入れることができないからなのかもしれませんが・・・
みんな素晴らしい演技、素晴らしいスクリプトや演出で非常に感動できるのですが、痛い気持ちだけはどうも・・・もしそれをちゃんと受け止めたならば、多分見ていられないような気がするけど、この映画はずーっと心地良く観賞できたからなー。かといって、痛みが伝わってくるような作品なんて─と思うわけだし、なかなか難しいテーマを扱っている作品です、かなり面白くてよきかなとは思うのですけど─。
劣等感を乗り越える親愛の情
同級生で人たらしのやつがいる。俺が俺がという前に出るような性格ではないのに、いつの間にか場の中心にいる。一部の人間からは嫌われもするが、好かれる人間とは強い絆を結んだりする。そんな友人に影響を受けたり、憧れたり、ちょっと憎らしかったり。でも、離れることもなく今でも関係が続いている。彼に魅了された人間の一人だから、もう仕方がないと受け入れているが、本作のような映画を観ると、あの劣等感に近い感情を思い出す。本作に登場するベンジーはまさにそんな感じ(私の友人に似ているわけではないけど)。
亡くなった祖母が昔住んでいた家を訪ねようと、ポーランドのユダヤ人のルーツをめぐるツアーに参加した2人。強制収容所を訪問するシーンがツアーのクライマックス。民族関係なく、あれだけ迫害を受けた人たちに思いを馳せるとやはり涙がにじんでしまう。
でも本作のクライマックスはそこではない(はず!)。ツアーの参加者に、ベンジーへの思いを吐露するデビッドの独白だ。自分のあの友人を思い浮かべてしまった。憎しみみたいな感情はないが、デビッドのあのセリフたちに一々共感してしまった。じゃ、ベンジーにはどうだったのか?と考えると共感できないし理解もできない自分がいた。ベンジーの思いについて明かさない作りになっていたのは意図的だったのだろう。主人公デビッドの目線で考えたらそうなんだと思う。だから、ラストシーンのベンジーが何を考えているのか全くわからないのも仕方ない。
一人の人間が生まれるということ自体奇跡みたいなもので、ホロコーストを生き残った人間の子孫となるとさらに奇跡的な運命を感じることになる。だから、その子孫である人間は自分の命を大切に精一杯生きるべきと言う(思う)人は多いはずだ。間違っていない。その通りだと思う。でも、デビッドが語るこうした言葉に生きづらさを感じてしまった。ほんの少しだけど。もしかしたらジェシー・アイゼンバーグ自身がそんな思いを抱えていて、そんなことも意図して本作を作っていたりして。もしそうならジェシー・アイゼンバーグすごいな!
大切な人を大切にしたくなる
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