ゲキ×シネ「吉原御免状」のレビュー・感想・評価
全3件を表示
エロスとタナトス
脱ぐなー、たくさん。からむなー、何度も。いつもの新感線のような、笑える作品ではない。橋本じゅんがおとなしかったし。原作は読んでないが、たぶん忠実に再現したのでは、と思われる。エロで、しかもマジメであった。たまにはこういうのもありですな。
人里離れた山中で育ち、純粋に育った若者が、自分の出生の謎を知り、女を知り、愛を知り、成長する物語。彼は優しい男だが、それ故愛した女を失ってしまう。そして、彼は鬼に変貌するのだ。全てが終わった後、育った山へ帰ろうとするが、吉原の人々に頭領として残ることを懇願される。山なら自由で屈託のない生活に戻れるのだが、結局、吉原に残ることにする。人と交わり、上に立つ責任を負う選択をする。青年は大人になる覚悟をしたのだった。
堤真一は40歳くらいかな、アクション俳優出身だけあって、殺陣が決まっていた。激しい立ち回りの後でも、息が上がってないか、上がってないように見せるところがすごい。汗は出てても、なんか涼しげ。シュっとした着流し姿がセクシーで、ふんどし姿も見られ、眼福だったわー。劇団員の女性陣からもベタベタ触られて、いい男は大変だー。
松雪泰子は新感線常連。過去に囚われ、苦悩しながら、愛に殉ずる様が切なかった。そして、色気がハンパないっすよ、ねえさん! 本筋と関係ないが、着物をゆるく着ているのに、着崩れない、その秘密が知りたい。
吉原の隠れた存在意義は、なるほど~と思った。徳川秀忠と後水尾天皇の確執というのも、へーって感じ。徳川秀忠といえば、遅刻してパパに怒られた人、くらいしかイメージない。後水尾天皇も名前は聞いたことはあるが、どんな方か全く知らない。調べたらこの頃、幕府が禁中並公家諸法度を発布し、天皇や公家の行動を規制していた。後水尾天皇は、朝廷を管理しようとする江戸幕府とやり合ってたらしく、いきなり譲位したり、でも院政したり、なにげにパンクな人生だったようだ。そして、この時代にしては長生きで、85歳まで生きた。秀忠の娘が中宮で、かつ側室がけっこういて、生まれた子供も多かった。なんと、男子19人、女子16人、合計35人! なかなかお盛んで…。「吉原御免状」の作者、隆慶一郎は、後水尾天皇を主人公にした小説も書いていて、がぜん読みたくなった。中島先生、教えてくれて、ありがとうございまーす。図書館で借りてみまーす。
傀儡というのも、よく知らなかった。ヨーロッパでいえば、ロマみたいな人々だろうか。芸能を生業とした、非定住の流浪の民。傀儡とは人形のことで、人形劇などを興行し、あちこち移動していた。傀儡が発展し、後に人形浄瑠璃や神楽となったらしい。傀儡の人々は、自由な気風で、だからこそ差別され、圧迫される。差別から逃れる手段として吉原が使われる、というのも、筋立てとしては説得力があった。
物語がしっかりしていて、役者も適任、アクションとお色気のバランスも良かった。もっと過去の舞台を観たいと思うけど、20世紀のはさすがに無理なのかな。剣轟天観たいな…。
ゲキシネ20周年企画で行われた総選挙の結果は、こうなった。1位は絶対これだろうと思ってた。中間結果でもずっとトップだったし。意外なのは、「神州無頼街」が漏れたこと。福士蒼汰のファンはどうしたの。でもまあ、某放送局じゃないけど、劇団への貢献度が違うかな。天海祐希と早乙女兄弟が出ている作品は、当然入りますわね。花鳥風月の髑髏城で唯一ベストテン入りした「鳥」、早乙女太一の蘭兵衛は超絶かっこいいので、これは再見したい。残念ながら圏外になってしまったが、「風」の橋本じゅん版贋鉄斎、もう一度観たかった。今回、都合で観られなかったものもあるので、何年かおきでいいので、古い作品を上映する機会を作っていただきたい。
1位 ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ
2位 薔薇とサムライ
3位 修羅天魔 髑髏城の七人Season極
4位 阿修羅城の瞳2003
5位 狐晴明九尾狩
6位 蛮幽鬼
7位 髑髏城の七人・鳥
8位 蒼の乱
9位 薔薇とサムライ2
10位 SHIROH
松雪さんの美しさが際立った
劇団☆新感線は好きな劇団で割と観ていると思う。
この劇団の良さは笑いと歌と殺陣とスピード感のある場面展開、そして仁義に熱いストーリーかなと思っている。
この映画,結構古いのでまだそこまで今の劇団☆新感線ぽさがなかったかも。
とはいえ、雑気の役者達は素晴らしいし、何より松雪さんの美しさにポイントアップ。彼女の最期はかなり泣けました。
堤真一は時代劇に慣れていないのか、とてもカッコ良いのだけれど、殺陣のスピードなどで少し残念な気がした。
観て損はない。自由とは
隆慶一郎の文庫を殆ど読んでいる者としては、感慨深いものがある作品。
キーワードは、道々の輩(ともがら)もしくは道々の者。
いつの世も、強者が弱者を搾取する構造がまかり通り、差別、分断、締め付けで、どこまでも弱らせ、機能出来ないようにしていく。
それをやるのが、お上であり、今でいう政府(政治)という存在。
常に繰り返す。
特に、今の日本の状況ほど酷いものはないが、詳しくは書かない。犯罪者が治める国など殆どないから
道々の輩を説明すると、海民(漁師)、山民(猟師)、遊女、布を織る者、芸能を行う者、歌唄い、音楽を奏でる者、絵描き、踊り人、占い人、様々な職人や商人など、多種多様な非農業民のことを指す。
彼等は一所に定住せず、世間一般との縁を切り、己の才覚だけで世を渡り歩いた。
彼等は自由を尊重し、全ての者たちは平等であること「上ナシ」「主ヲ持タジ」という意識があり、侍身分からの支配を否定、自主自立を信条としていた。
その道々の輩(公界人)の最後の砦が、吉原遊郭であり、吉原御免状という存在。
その経緯や意味を、面白可笑しく、悲しく切なく、派手に繰り広げられる舞台劇で、心に強く重く感じさせてくれる素晴らしい作品。
本来、世の中というものは、そうあるべきではないのかと。
観て損はないという表題であるが、出来れば皆に観て欲しい作品なのであるのは率直なところ。
まあ、泣いたね
人間が、本来あるべき立ち位置をどう考えるか、そこから何かを感じてもらえれば、それでいいと思います。
全3件を表示