カフネのレビュー・感想・評価
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そぎ落とされた構成の先に主軸はあったのか
高校生の予期せざる妊娠について、夏のドラマ「あの子の子ども」以来、どのような描き方がありうるのか関心を持つようになった。
主人公が住んでいる坂道の多い漁師町でも、ひときわ狭い路地を上った先にあるような小さな家。その坂道から自転車に乗って下った大きな家に、学校に来ないで受験勉強している男子生徒が住んでいる。この男子生徒と関係を持つことは、主人公にとって広い世界へつながる希望だったのかもしれない。
妊娠が判明し、男子生徒に嫌われるといった懸念を示して主人公は葛藤する。母親は「そんなことで母親になれるのか」と言い、父親は主人公を海に連れ出し、娘が生まれたときの思い出を語る。このように家族は新しい命を苦しみながら受け入れていく。
主人公を診察した医師も開口一番妊娠を祝福するなど、「産む」「産まない」のような大人の議論を省略し、女性が母になる可能性に賭けることで何が見えてくるのかという映画であるように思った。
学校を休んでいるミステリアスな、そのわりにはたくましい身体を持った男子生徒よりも、主人公は先に大人になることを選ぶ。
このほかに、日焼け止めクリームを貸しあう親友の女子生徒など、同級生どうしの関係に現実感を感じた。互いに同じであることに安心しつつ、少しだけ大人びた同級生に焦がれるほど憧れを抱き、隙があれば出し抜こうとするようなお年頃。
主人公が同級生の間で揺れている姿は緊張感を持って見ていたが、結末に至る流れが分かってからは物語の強度が失われ、後日談を眺めるような気持になってしまった。出産を決めたあとにこそ、主人公の本当のドラマが始まるはずなのだが。妊娠物語の「その先」はどうありえるのか考えさせられた。
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