「改めて「DVとは」を考えさせられる作品」ふたりで終わらせる IT ENDS WITH US Another Popcorn Timeさんの映画レビュー(感想・評価)
改めて「DVとは」を考えさせられる作品
簡単に何が正解、不正解とジャッジすることが難しいテーマにはなるが、こういうストーリーが語られることに大きな意味があるのでは。
今作は、主人公リリーと脳神経外科医のライルの時間軸と過去の初恋の相手アトラスの2つの時間軸が同時に進んでいくので、それぞれの関係性を比べて観ていけるのが分かりやすい。アトラスとのシーンがお互いの関係構築のペースを細かく描写しているのに比べ、ライルとのシーンはもっと本能的で、ライルの人柄が表れるような会話も少なく、まるで早送りしている印象なのもおもしろい。アトラスの時間軸は映画らしいラブストーリー展開で、個人的には少し美化され過ぎている印象を受けたが、ライル(そして忘れてはいけないリリーの父)との日々のすれ違いは、妙に現実的に感じられ観ていて痛々しく、そのコントラストがまたこの映画の魅力に感じる。
映画のキーになる「花」がとにかく美しい。主人公リリー(ユリ)の花言葉を調べてみると「愛」や「再生/転生(rebirth)」の意味がある。女性の3人に1人はDVの被害を経験しているとどこかで聞いたが、原題の「It Ends with Us」はふたりで終わらせるという意味だけでなく、私たち全員がこの問題について向き合っていく意思も表れているのではと感じずにはいられない。今作に関心がある人は、Emotional violence(心理的虐待)をテーマにしているNetflixのミニシリーズ「Maid(邦題:メイドの手帖)」もぜひ観てほしい。
主演のブレイク・ライブリーと監督兼主演のジャスティン・バルドーニの泥沼裁判が大きく取り沙汰され、海外のコメントもネガティブなものが多いが、映画自体は原作を元にうまく作られた予想以上にいい映画だったと思える分、とてももったいない。
