嗤う蟲のレビュー・感想・評価
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“田舎でスローライフ”に憧れる意識高い系に冷や水を浴びせるシニカルな社会派ホラー
「嗤う蟲」に決まる前の映画の仮タイトルがずばり「村八分」だったとか。そう、これは日本に大昔からある因習、共同体の掟やならわしに従わないものを仲間外れにして無視したり精神的に追い詰めていくという、現代の学校や職場でのいじめにも脈々と受け継がれている集団の暗い特質をテーマにしたホラー映画だ。
村八分を題材にした映画としては、1938年(昭和13年)に岡山県で起きた「津山三十人殺し」に着想を得た横溝正史の小説「八つ墓村」の映画化、2013年(平成25年)に起きた「山口連続殺人放火事件」に着想を得た吉田修一の短編を映画化した「楽園」などが思い浮かぶ。いずれも実際に起きた惨事をもとにしているのがポイントで、つまりは現実に遭遇しうる恐怖や悲劇である点が、心霊や超常現象やエイリアンに襲われるフィクションよりよほどおそろしいと言える。
若い夫婦が田舎でのスローライフに憧れて僻地の麻宮村に移住してくるというのが今どきだろうか。夫(若葉竜也)は脱サラして無農薬農業を始め、イラストレーターの妻(深川麻衣)はPCとネットで在宅勤務。二面性がおそろしい自治会長(田口トモロヲ)、隣家の暗い夫婦(松浦祐也と片岡礼子)もそれぞれ印象的だ。
本作にはまた、止まらない少子化と長引く不況で地方の過疎化がますます進み、もはや真っ当なやり方ではどうにも立ち行かなくなっている現状を映す社会派の視点もある。麻宮村の結末がどうあれ、この現実から逃げ続けることはできない。
「ホラーが一番好き」
田舎はもっと恐いかも
面白かった。でも、もっと面白くできたはず。韓国ホラーみたいなおどろおどろしさや閉鎖的な田舎の人間関係の恐ろしさを期待して見たので村八分のエピソードはちょっと抑え気味に感じました。でも主人公夫婦の「なんでこんな村に移住しちゃったのよ!」という絶望感はひしひしと伝わり、村を仕切ってる夫婦の狂いぶりも良かったです。全体的に満足。見てよかったです。
メタファーの話をなさってるのよ
惜しい所
序盤から村の名前とか台詞で匂わせが凄くて
きっと村ぐるみで「野菜」作ってんだろうなぁと思ってたら案の定だったのと
中盤に突然なんの脈絡も無く嫁が「野菜」農園見つける所と
村は「野菜」で潤ってるハズなのにあんまり潤ってる描写がないのと
嫁が急にSNSの使い方忘れてる所
以外は良く出来てたと思う
「野菜」をちゃんと卸してる描写があったのはちょっと感心した
まぁそのルートどうやって見付けたのかは気になる所だけど(笑)
個人的にはもう少しグロい秘密があって欲しかったかな
ちなみに劇中では「野菜」作りは繊細で大変みたいな話あったけど実際の所はほっとけばいい
コロンビアの山奥の村とかの貧困層は「野菜」作りがないと暮らしていけないっていう事実は実際あるらしいね
これは売ろうと思って作った作品だなぁ
俳優の若葉さん、田口さん、片岡さん、杉田さん好きです。
城定監督、大好き。
脚本の内藤さんの作品も好きです。
(「許された子どもたち」名作ですよ)
なのに・・・・この作品は一体なんなんだ・・・?
映画を観すぎちゃったからなんでしょうか?
全く面白くない、怖くない、先がバレバレ。
スリラーでもない、サイコでもない。
ヒタヒタと歩み寄ってくる黒い影なんか
まるで感じない。
あれ?これはもしかしてコント???
田口さんの顔芸・・・もう、笑かしに来てるのか?
って思っちゃうほど。
どこを怖がれと・・・?
ラストの幕引きも・・・あれ、無理じゃん。
おまえそれ作ったことねぇだろ。
その短時間でできねーだろ。そんなこと。
などとつい理論的になっちゃいました。
あまりに乱暴な結末。
村社会のじわじわ来る怖さってあると
思います。だけど、それってもっと漠然とした
物だと思いますし、こんなにわかりやすくしちゃう
と、本当に怖くもなんともないのです。
「ムラってこうなんでしょ?」なステレオタイプ
満載で・・・。
正直「ミッドサマー」のような異様な健全さと
違和感を味あわせてくれるのか?と思いきや
とても分かりやすくなった、説明映像がタップリ
のお茶の間で楽しめるホラーもどき映画でした。
きっと深川さん売り出し作品なんだろうなぁ。
がっかり。
城定監督、「悪い夏」マジで期待しています。
あ、唯一
仲直りHを始めるシーンのなまめかしさは
さすが監督!でした。
リアルで怖い
唯一怖かったのは…
話自体の作りは既視感に溢れてたが、プラスアルファ、復興の資金源にアレを出す事で村内体制の理由補強とオチをつけ、『村』という陸の孤島に根強く蔓延りやすい風習・因習と強く結びかせ、よくニュースで目にする『ムラ』社会の雰囲気を、田口さんを筆頭とする演技で、徐々に狂気の熱が昂まり暴走、崩壊していくまでの過程を独特のカラーに仕上げていたと思う。
残念なのは色々察しが着いてしまった事と、自分がこういうタイプの映像を数多く直近で目にしてしまっていた事で3点。(映画はプロット派)
唯一怖かったのは、あの奥さんの事件に誰も言及せず、まともな筈の主人公(深川麻衣)まで最後までほぼノータッチだった事。普通の神経なら引越しするんじゃないかな…あれはムラじゃなくても都会でも起こり得る事だと思ったし、敢えてあそこだけぽっかり映画の中で孤立している作くりが意図されていたら、俺には届いてると書いておきたい。
プロットが既視感に溢れると演技力に重点をおいて評価するんですが、劇画タッチのムラ人の演技と引越してきた主人公夫婦の写実風(一般)演技の対比が良かったし、後半辺りから深川さんが「REゼロ」のペテリギウス・ロマネコンティ司教の様な顔つきになって、ラストにアクが抜けていく姿に「戻ってきた」感があって、あるあるのあの下界とムラを繋ぐ橋を越える映像を使わなかったのは正解だと思った。
ああいう理不尽が家族単位で襲いかかって来る場合、不満をウチに秘めて、そのナカで解決をしようとする人達(その代表例が隣人夫婦)が実社会には多いけど、ダメな旦那を尻目に、あくまでも外にある悪因に直接仕返しできるのは(だから映画になるんだけど)素晴らしいし、最後は乗せてあげてくれてありがとうと思った(笑)
最後のセリフ、その時は違和感あったけど、『帰るよ』じゃなくて『○○○』だった気がするんだけど、『蟲師』のストーリーにある様な魑魅魍魎に取り憑かれた場所からの帰還なんだと思う。
どうした!城定秀夫
#田舎移住
演出は見事だが緊張やトリックのない脚本は問題。
生ぬるい!
生ぬるいぞ城定監督!!
城定秀夫監督の新作はできるだけロードショウ公開時劇場で観るようにしています。
が、これはあまりにも生ぬるい。
もともと城定監督は優しいから、
優しい映画しか創れない。
ヴィレッジスリラー物といえば幾つか浮かぶが、正統的なアクションスリラー映画といえば
阪元裕吾監督『黄龍の森』だろうか。
村の閉鎖的風習やその背景のミステリアスな雰囲気を巧く昇華したのは、やはりシャマランだろう。
城定監督はこの作品で何を描きたかったのだろうか。
(ただ最後まで退屈せず観られる演出は、やはり城定監督、達者である。
脚本にトリックが欲しかったが。)
深川麻衣さんの事務所が製作に入っている。
若葉竜也さんのファーストショットは晴天の如くイケメン笑顔で、
こんなに清々しい若葉竜也さんの笑顔を見た記憶
がなかったので驚いた、
がすぐ何時もの若葉竜也さんに。
村の人々は、こちらから見たらイヤでたまらないが
村の人々の暮らしを考えたら仕方ないのかもしれない。
田舎の付き合いは不可避!
怪しい予告にとてつもないB級臭を感じながらも、セリフの中に地元のものと思われるような方言を耳にして、ちょっと惹かれて鑑賞してきました。案の定と言ってはなんですが、公開2日目だというのに観客はまばらでした。
ストーリーは、田舎での悠々自適な生活を求めて、脱サラした夫・輝道とイラストレーターの妻・杏奈が、田舎での過度な近所付き合いに戸惑いながらも徐々に田舎暮らしに慣れていくが、しだいに自治会長の田久保に牛耳られているような村の雰囲気に不信感を覚えるようになり、やがて村に隠された秘密が明らかになっていくというもの。
冒頭から、スローライフに憧れる若い夫婦と、その期待を裏切るような村の不穏な雰囲気が描かれます。田舎暮らしでは避けられない地元付き合いを、これでもかと嫌な感じで描いているのがおもしろいです。初めは、ちょっとした親切、それがおせっかいとなり、プレッシャーとなり、生活に過度に干渉してきます。拒絶したくてもそうさせない圧力を感じ、気がつけば絡め取られているような気持ち悪さを、絶妙なさじ加減で描いています。
はたから見れば序盤からこの村の異常性は感じるものの、当事者から見れば正常性バイアスと初めての田舎暮らしで異常性に気づきにくく、押し切られるように田久保の言葉を受け入れてしまったのでしょう。誰でも初めての環境で、周囲の人との関係を悪化させたくはないものです。
ところで、聞き慣れた方言といい手筒花火といい、舞台は間違いなく我が地元の愛知県三河地方だと思われるのですが、エンドロールのロケ地に馴染みの地名がなくて残念でした。でも、もし本当に三河が舞台なら、あの手筒花火の構えはダメダメです!最後のハネが足を直撃しないように、「手筒側の足を必ず前に出せ!」と先輩たちに怒鳴られます。あと、田久保の妻が「けなるい」と言いますが、今どき地元の年寄りでも使わない言葉で、久しぶりに聞きました。方言監修は相当ご高齢の方が行なっているのでしょうか。
とはいえ、光の速さで広がる噂話、いやらしく絡みつくような近所付き合い、逆らえない圧のある村の重鎮などは、よそ者から見れば実際あんなものかもしれません。これからは近所に移住してきた方には優しく、いや必要以上に干渉しないようにしたいと思います。三河地方は穏やかで住みやすいところなので、田舎が好きな方はどうぞお越しくださいませ!
キャストは、深川麻衣さん、若葉竜也さん、田口トモロヲさん、松浦祐也さん、片岡礼子さん、杉田かおるさんら。田口トモロヲさんの怪演が本作いちばんの見どころと言ってもいいでしょう。
ここは治外法権
脱サラし田舎のある村に引っ越してきた夫婦が、親切にされるもどこか不気味な村人に違和感を覚え、そして…といった物語。
お化けより生きた人間の方がよっぽど怖い…なんてよく言いますが、まさにそれを絵にかいたような作品。実在する限界集落の不気味な風習とか、都市伝説的な話をYouTubeとかで観るのが好きなのでちょっと期待。
何をするにも相談する必要がある偉い人。人里離れた村は実際にこういうことがよくあるのでしょうか…?越してきた若い二人に必要以上に関わってくる人達。おっしゃる通り、おめでとう、じゃなくてありがとう、なのはちょっとトリハダモノでしたね。
最初はちょっと親切を通り越したお節介な人達…といった感じだったが、どんどんとヤバさが滲みだしていき…。
哀しきかな、俗世を離れた小さなコミュニティでは調和しないと村八分…は現実なのか。少しでもその歯車から外れればお庭にゴミだらけ。気持ち悪すぎる。
とは言え、現実ならこれで充分ヤバいが映画作品としてはもうちょっとエグさがあっても良いのかなと思いつつ、人の怖さと胸糞悪さを感じられる作品だった。
…最後はなんの描写だったのかな?
ホラーではなく、ビレッジサスペンス
「田舎あるある」の詰まった怖い話。気持ち悪い虫は出てこないので安心してご覧ください。
想像していたより、ずっと面白かった。
もっとドロドロの気持ち悪い人体損壊系ホラーかと思って観に行ったら、ぜんぜんえげつないスカムなんかじゃなかったし、なんならホラーですらなかった。
これ……、タイトルで結構損してるのでは?(笑)
このタイトルだと、少なくとも「蟲」に関連する映画かと思うもん。
具体的には、某同人ソフト&アニメに出てくる●●沢症候群みたいな。
勝手に寄生系、脳内支配系の話を想像していた。
少なくとも超常的要素のあるこけおどしのきついのを。
グチョグチョで、うじゃうじゃで、
人間の断面から白い線虫がいっぱい蠢いてるみたいな。
ふたを開けてみれば、正攻法のヴィレッジもののサスペンス。
巨大な虫も、微細な虫も、出てこない。
たまに「ふつうの虫」が草に止まってるくらい。
都合の良い話ではあるが、一応すべて「理屈」で説明がつく。
たしかに「嗤う蟲」の字面から想像されるような内容の映画ではなかったので、その「落差」には新鮮な驚きがあったし、先読みできない面白さもあったけど……。
一方で、このタイトルをつけることで生じた「不利益」もそれなりにあるのでは?
結構な数の「本当はこの映画を気に入って観てくれるはずだった」お客さんが、「コレ、なんかオエー系の気持ち悪い映画なのでは?」と「敬遠」しちゃってるんじゃないのかなあ?
個人的には、制作陣が自らコンプラ的に絶対ダメだということで没にしたらしい仮題「村八分」でも(そう大規模公開ではないホラー枠なら)行けた気がするし、あるいは「つけびの村」のイメージで「火祭りの村」とか、「嗤う」を使うなら「嗤い村」とか、必ずしも「蟲」は使わなくてよかったのでは、と思う。あとは「#田舎生活」「#田舎に移住しました」とか。
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内容的には、まさに「村八分」の話。
いまやこんな村はないだろうと思っておられる方もいるかもしれないが、農村部でこれに近いことは、現代でも頻繁に起きているはずだ。
田舎暮らしにあこがれて移住したはいいけれど、村独特のルールや風習、「地主と小作人」のような旧弊な関係性、土着宗教的な信仰と団結心、お互いを監視し合うスパイ文化などに耐えかねて、1年もたずに都会に逃げ帰る若い夫婦の話は、いくらでもきく。
僕は天然記念物めぐりと仏像めぐりを趣味としていて、年に10回くらいは地方を訪れるが、現地のタクシーの運ちゃんなどに話を訊くと、今でも「ムラ社会」は厳然として存在していて、新参者が馴染むにはなかなかにハードルの高いものがあるという。
そもそも僕の妻の実家は北関東の山間地にあるが、やはり空気感が都会とは全然違う。
まず驚いたことに、在宅中はみなさん、家に鍵をかけない。
朝ごはんの時間に、近くの畑からご近所さんが勝手に家に上がりこんできて、一緒に食べて帰る(これにもすごくびっくりした)。
いまどき犬は全部外飼い。猫は放し飼い。時々はらんで帰ってきて子供を産んだら、当たり前のように川に沈めてから山に捨てに行く。
ゴミは基本すべて自宅の窯で燃やす。家族全員が車持ち(実家だけで4台ある)。犬を連れずに「ただ村を歩いている」人間はとても不審がられる。
四六時中「村普請」があって、農作業や祭りの準備や公共部の掃除がある。若い世代は「消防隊」にほぼ強制参加。例外はない。
夜の話題はもっぱら近隣住人のゴシップ。とくに出産、病気、受験、離婚などの話題に驚くほど詳しい。何か悪いことがあると、うちのお義母さんは必ず最後に「バチがあたったんよ」と付け加える(笑)。
あと、妊活の時期は、本当にお義母さんから、地で穫れた自然薯や山芋が大量かつ頻繁に送られてきたものだった……(山芋とカボチャのシーンはアレ、マジで超リアルです!)。
みんな驚くほど気さくだし、お互いにおすそ分けをしあっていて仲が良いし、旅行に行くのも習いごとするのもご近所さんどうしだし、基本的に「あの中にいる限りは居心地のいい楽園のような村落共同体」なのだと本気で思う。
でも、僕の妻は「田舎のああいうところがイヤで、イヤで、本当にイヤで、必死で勉強してなんとか東京の大学に受かって逃げるように出てきた。それでなんとか救われた、死なないで済んだ」と吐き捨てるように言っていた。
本作に出てくる村も、僕の知っている妻の田舎とよく似ている。
もちろん映画だから、いろいろ誇張がなされている。
わかりやすい悪事を働いているし、人死にも出る。リアクションも極端になっている。
だが、本質的な部分は一緒だ。
田舎の村社会には、いいところもあれば、悪いところもある。
そして、それは二分された関係のない別の何かではない。
「同じもの」の見せる、コインの裏表なのだ。
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本作でやろうとしていることは、
『ひぐらしのなく頃に』や『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と本質的には変わらない。
古くは津山三十人殺しやそれを題材にした『丑三つの村』、
周南五人殺しやそれを題材にした『つけびの村』『楽園』。
「村」と「部外者」の引き起こす、違和と軋轢の話。
それを、B級娯楽映画の枠内で、なるべくリアリティラインをあげて、「本当に起きてもおかしくない村の話」として組み立てようとしている。
リアルに近づける試みは、「超常現象に頼らない恐怖演出」にとどまらない。
たとえば、村人が村に来たばかりの新参者にはやたら優しいが、「いったん仲間になった新参者」には猛烈に厳しいのは、とてもリアルな感じがする。
学校で転校生はもてはやされるが、半年くらい経つと方言がしゃべれないだけでいじめられだすのと一緒だ。基本的に、「いじめ」は「仲間内」でしか起きないものである。
この物語における「隣人夫婦」は、主人公たちの写し鏡だ。
同じ「移住者」で、結局村に馴染めなかった者。
村の要望に応えられず、村の要求水準に達することの出来なかった者。
その末路が、アレだ。
あの夫婦はたしかに薄気味悪いけれど、主人公夫婦にとっての「敵」ではない。
明日は我が身として、自分を振り返るためのよすが。
彼らの未来をうらなう、「悪いモデルケース」なのだ。
この村には秘密がある。
秘密があるぶん、部外者の取捨には選別が必要になる。
それが冒頭シーンの、手に持っている「鎌」だ。
主人公夫婦の場合は、事前の面談で「与しやすい」タイプと判断されたのだろう。
(農地の相談など、引っ越してくる前に結構事前にやりとりをしている気配がある。)
一方で、この村は限界集落で、子供はほとんどいない。
何がどうなったかは知らないが、村長の子供の世代すらどこにも見当たらない。
(子供ばかりが例の水害で亡くなったみたいな設定にしてもよかったのかも)
この村は、村総意の意思として「次の世代」を希求している。
だから彼らは、新住民を欲する。赤ん坊を欲する。
このままでは、村はなくなってしまうからだ。
そもそも村をなくさないための「秘密」なのに、
村がなくなっては本末転倒だ。
だから、彼らは危険でも「新参者」を受け入れざるを得ない。
ここの描写は、必ずしも映画の中でうまくいっていないので、「なんでそんなヤバい村に若夫婦わざわざ移住させるんだよ」と思うお客さんが多いような気がするのだが、ロジックとしてはそういうことだと思う。
村長夫妻のキャラクターも、漫画的なようでいて、そこそこリアリティがある。
カリスマ性をもって村を支配していても、「仲間に対してはふつうに愛嬌のある」人たちだというのは決しておかしな話ではない。恐怖と友愛。支配には両輪が必要だ。
村長に認められていることが、村民にとっての価値となるためには、一定の指導者に対する敬慕の念が必要となってくる。一方で、仲間の結束を高めるために「出来の悪いゴマメ」を集団でイジメるという行為も発生する。あの「みそっかす」の一家はその犠牲となったわけだ。
いざ危機に立たされると、村長がやけに小物でコミカルなのも、意外とそういうものだと思う(奥さんのほうが断然キモが座っている)。
個人的には、村の雑貨店の反応とか、寄り合いでの奥さん方の反応のほうが、ちょっとやりすぎでコントぽかった気がする。
ちなみに、本作で扱われている真相のネタが非現実的だと考えている方もいるかもしれないが、産業用の「アレ」が国家の認可制で認められていて、むしろ古来の文化を守るために保護されているのは「本当」である。とくに北海道や栃木県は「アレ」の生産のメッカだ。鳥取県では、合法的に「アレ」を扱っていた人物が違法な「アレ」の所持で逮捕され、実際に大問題になったことがある。おそらく、本作の脚本はあの事件あたりにインスパイアされて書かれたのではないか。
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●ヒロインの深川麻衣のアイドル時代を全く知らないので、なんかこの映画だと、奈緒に見えてしょうがない……(笑)。可愛い若妻としてふるまっているときと、うつろな顔で隈作ってるときのギャップが激しくて、なかなか良い。麻衣ちゃんってイラストが得意らしいんだし、役の絵も自由に好きなのを描かせてあげればよかったのに。
●若葉竜也は『ぼくのお日さま』のゲイカップル以来か。もともと色気と殺気がにじみでてくるタイプだが、こういう善良そうで流されやすいボンボン育ちの役も、器用にこなすんだな。さすがの安定感。あと若葉くんはこの青年についてクソミソにこき下ろしていたけど(笑)、 僕は周辺に合わせるタイプだし、気と押しの弱いタイプなので、結構共感しながら観られた。
●村の駐在さんって、10年前ならマキタスポーツがやっていたような役だが(顔そっくりじゃない??)、実はずっと『あの人は死んだ』の駐在さんと同じ俳優さんだと思って観ていたので、別人でびっくりした。富岡晃一郎と中山功太、結構互換性があるのでは。
で、中山功太のことをまるで知らなかったのでネットで検索したら、2年前の陣内智則のYouTubeに出て、ピン芸人トークをしている動画を発見。観てたら「最近、映画のお仕事をいただきまして、髪を役柄上角刈りくらいに短くしないといけなくて」と言っていて、その映画タイトルが「放送禁止用語でピーを入れないと口に出せないんですよ!」って。それ……、「村八分」のことじゃねーかwww
●田口トモロヲはとにかく楽しそう。こういう「怪演しても許される役」って、この手のくせ者俳優にとっては、ほんとやってて面白い得難い仕事なんだろうね。ちょっと映画の空気感からするとコミカルに振りすぎの気もするけど(とくに羅刹顔から恵比寿顔へのやりすぎな顔芸とか)、逆にこの映画の「リアルを目指しているのに予定調和だったりB級っぽかったりするいい加減な部分」を、彼の演技で全部「中和」している印象もある。
●杉田かおるの村長夫人は、本当に僕のお義母さんに雰囲気が似てて、ぞわっとしました(笑)。田舎の人ってああいうこというんだよ、ほんとに!! ホントよく研究されたキャラ付けだったように思う。
●この映画に関しては、あまり細かいところに突っ込んでも仕方ない気がするのでくどくど書かないけど、やっぱり「秘密を抱えた村」が敢えて「新参者」を受け入れて、徐々に村に取り込んでいく過程が、あまりうまく描けていないのが一番の問題かと。
同様に、そんなに村民に違和感があって不気味に思うなら、さっさと都会に帰れよって思うお客さんは、けっこういると思う。とくに出産を都会でやったのなら、いくらでもそこで足抜けはできたはずだし(赤ん坊がそれなりの大きさに育った状態で帰ってきていたから、数か月は奥さんの実家に戻って親御さんに面倒を見てもらっていたように見受けられる)。
あとは細かいことだけど、アレの製造所のセキュリティの問題とか、旦那が虫に詳しいネタが冒頭しか出てこないとか、あれだけ意識高い系の夫婦が犬を外飼いするかなあとか、手筒花火にああいうことしてもあんな現象にはならないだろうとか。
とはいえ、映画としては十分楽しかったし、退屈する間もなく観終えられた。
この手の外観の邦画としては、なかなかの佳品だったと思う。
においでわかるに
三河の田舎の村に移住してきた別姓夫婦が、閉塞的で謎の力の蠢く村で翻弄される話。
脱サラし村で農地を借りて農業を始めた夫と、在宅でイラストレーターをする妻を、優しく受け入れてくれた自治会長と村人たちという構図だけれど、SNSより速く拡散される噂話にもうちょい嫌悪感とか警戒感とか持ちましょうねw
そして明らかにヤバい扱いを受けるポンコツ隣人、というよりそういう扱いをする村人にもっと違和感を覚えましょう。
この村に住み続ける理由とか、出来事を成り立たせる理由付けとか、色々と上手くストーリーに織り込みつつ、不穏で胸糞悪い感じを積み上げていく展開はなかなかお見事。
まどろっこしい部分やツッコミどころとかが色々あるし、お残しとかがあってモヤッとした部分もあったけれど、メインの部分ではそこしかない感じのオチにしっかりと繋げてくれて面白かった。
深川麻衣さんの演技がとても素晴らしい作品。 本年度ベスト級。
お気に入りの監督の作品。
これに加え、以前観た深川麻衣さんが井浦新さんと共演した作品の演技が素晴らしかったので、彼女の演技に期待して鑑賞。
期待を裏切らない素晴らしい演技だった!
若葉竜也さんも安定した演技で安心して鑑賞出来た。
ストーリーは既視感ある感じもしたけど、スリラー色が濃い目で恐ろしさがジワシワとやって来る感じ。
都会から田舎に移住した安奈&輝道の夫婦。
村の住人から歓迎されるも何だか不自然(笑)
田口トモロヲさん演じる自治会長の田久保が1番怪しい(笑)
村民達が田久保に支配されている感じなんだけど前半はその理由が解らず。
徐々に田久保の全貌が明らかになって行く感じが恐ろしかった。
安奈と輝道に新たな命が宿ったシーンから恐ろしさが倍増。
輝道が村の村民に染まって行くのに反して安奈は冷静になって行動する感じに引き込まれる。
ラストまで目を離せない展開なんだけど安心出来る終わり方が良かった。
本作のタイトル(ワラウムシ)が意味不明だったけどエンドロールの後に答えがありました( ´∀`)
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