嗤う蟲のレビュー・感想・評価
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“田舎でスローライフ”に憧れる意識高い系に冷や水を浴びせるシニカルな社会派ホラー
「嗤う蟲」に決まる前の映画の仮タイトルがずばり「村八分」だったとか。そう、これは日本に大昔からある因習、共同体の掟やならわしに従わないものを仲間外れにして無視したり精神的に追い詰めていくという、現代の学校や職場でのいじめにも脈々と受け継がれている集団の暗い特質をテーマにしたホラー映画だ。
村八分を題材にした映画としては、1938年(昭和13年)に岡山県で起きた「津山三十人殺し」に着想を得た横溝正史の小説「八つ墓村」の映画化、2013年(平成25年)に起きた「山口連続殺人放火事件」に着想を得た吉田修一の短編を映画化した「楽園」などが思い浮かぶ。いずれも実際に起きた惨事をもとにしているのがポイントで、つまりは現実に遭遇しうる恐怖や悲劇である点が、心霊や超常現象やエイリアンに襲われるフィクションよりよほどおそろしいと言える。
若い夫婦が田舎でのスローライフに憧れて僻地の麻宮村に移住してくるというのが今どきだろうか。夫(若葉竜也)は脱サラして無農薬農業を始め、イラストレーターの妻(深川麻衣)はPCとネットで在宅勤務。二面性がおそろしい自治会長(田口トモロヲ)、隣家の暗い夫婦(松浦祐也と片岡礼子)もそれぞれ印象的だ。
本作にはまた、止まらない少子化と長引く不況で地方の過疎化がますます進み、もはや真っ当なやり方ではどうにも立ち行かなくなっている現状を映す社会派の視点もある。麻宮村の結末がどうあれ、この現実から逃げ続けることはできない。
ありそうなのが怖いのね
ありがっさま
失敗ばかりしている三橋(松浦)は田久保に叱られてばかり。その三橋は村が唯一合法的(?)に認められた大麻栽培を請け負っていたのだ。火祭りの夜、飲酒運転で帰る上杉輝道が田舎道で轢いてしまい、死なせてしまった。田久保の入れ知恵によって自殺として見せかけたはいいが、三橋の妻(片岡礼子)が上杉家の隣で首を吊ってしまう。
徹底したムラ社会描写。しかも滲み出てくる悪意ばかりの描写はエグい。かつては崖崩れで壊滅的な被害を受けたことから、人口も減り、非合法な大麻栽培によって村の財政立て直しを図った経緯があった。若者がいないという状況の過疎地はどこにもありそうだが、村人たちの年齢からするとまだ大丈夫のような気がする。それほど高齢者もいなさそうだったし。
夫婦別姓のままだった杏奈とテルミッチ。もしや選択的夫婦別姓がいつかは認められる未来の日本を想像させる設定だったのか、村社会の封建的な思想と対比するために描いたものだったのかは分からないけど、最初から考えさせられることばかり。三橋にしても移住してきたらしいし、駐在さんにしてもそうだ。最初から村八分にするつもりはないんだろうけど、どこかで試されていたんだろうなぁ。若夫婦に子供が出来たことで、一気に村全体で受けられる方向になったのも面白い。
三橋轢き逃げ事件はわかりやすいほど仕組まれたものだったけど、テルミッチの農作業の失敗も仕組まれたものだったんじゃないのか?と疑ってしまった。窓ガラスを割ったのも犯人は別にいるような気がするし・・・
こんな村、あるかもねえw この感覚、日本だけではないと思うけど ま...
田舎暮らしのリアル
生まれも育ちも作品と同じような場所で、今も住んでいます。大筋は極端なことが多いですが、村の行事のシーンや各家々のリアルな感じはあるあるで、製作者側はよくわかってる方々が多いと感じました。
村長?役の田口トモロヲさんが、とても怖い。こういう人いるんですよね。村のことを最優先にする責任感、そこへ忍び寄る悪意ない悪事。
こういった町や村が今たくさんあって、存続させるために悩み抜いた結論なのだと思います。行政側の姿勢を問う作品でもあるとなあと考えさせられました。
「無農薬栽培でやりたいんで」という冒頭でのやりとりが暗示させており、素直に従うのかどうなのか、困ったことがあれば何でも相談してねというけれど、困ったことを作る手練れは、やはりホラーですね
「ごめん」の意味合いが変化していきます、
城定監督のホラーめいた演出を存分に堪能させて頂きました。
単なる風景ショットひとつとっても見応えがありです。
滝のように木々に降り注ぐ雨の描写から始まり、空を埋め尽くすカラスの群れ、地面をのたくるミミズなど物語の進行と共に不穏な空気に包まれていく映像に緊張感が増していきました。
また若葉竜也さん演じる夫の「ごめん」という台詞が心に残ります。
物語が進むに連れて「ごめん」の言い方が変わり、意味合いも変わっていきます。
そんな中、久しぶりに拝見する田口トモロヲさんのいっちゃってる演技が凄すぎました。
本作のトーンをきっちり纏め上げる演技に目を奪われてばかりでした。
やはり危ない人物を演じさせたら輝く方ですね。
真顔から一瞬の間を取り、怒り出したり、笑って見せたりと千差万別に変化する表情に背筋が凍ること請け合いです。
間を取った後、どんな顔をして何を言ってくるのかヒヤヒヤして鑑賞してました。
本作の終盤で見せる田口さんの表情、そして若葉さんが最後に放つ「ごめん」の意味、それらが気になる人は要チェックの作品です。
こんな田舎移住はイヤだ!
私は田舎暮らしは無理だわぁ
田舎は怖い…?。
「嗤う蟲」って…。
BGMに、ホーミー(ホーメイ)が響きわたる。
映像の雰囲気ととてもよくマッチしているだけでなく、村の二面性をも表しているかのようで、自分好み。
ただ、人によっては、予告編で想像させられた通りの「田舎の村の因習」とか、「アップデートされない価値観」とか、「人間関係の煩わしさ」とか、これまで描き尽くされてきたものがそのまんま出てきて、ありきたり……というような感想が聞かれそうな作品でもあった。
なので、「こうした描き方だったからこそ、考えさせられたこと」を書き残しておきたい。
<以下、一部、内容に触れます>
①それって「田舎」のせい?
あっという間に噂が広がったり、他人のプライベートにズカズカと入り込んできたりという描写が、度々あった。この映画の流れで観ていると、うっかり「田舎あるある」といった文脈で回収してしまいそうになるが、これって、どんなコミュニティでも起こりうることだよな…と。
それに「よそ者」というレッテル貼りや排除の論理はSNS界隈ではよく見かけるが、それを「田舎あるある」だとするならば、日本という国自体が「田舎」ってことになるのだけれど…。(「日本が大好きです❤️」みたいな言い方で、ヘイトを垂れ流している方々、そういうことでよろしいでしょうか)
「#田舎移住」をつけて、いいところだけを掬い取ってインスタにアップしてる場面とか、無農薬で農業して生計を立てようとするところとか、「田舎」関係なしに、主人公たち2人の「上辺だけしか見てない生き方」や「計画の甘さ」も描かれる。
もらったかぼちゃの煮付けを、無造作に捨ててしまう描写とかも含めて、主人公を全肯定せずに、「都会人」を自認している若者に対して、中々皮肉を効かせたなと思った。
②田舎の抱えている苦しみ
サラッとしか語られてないが、「10年前、災害に見舞われた際に、中々支援の手が回って来なくて」とか「この村は終わりかと思った」といった言葉が、何度か出てきた。
また、「ご先祖さまが大切に守ってきたものを、受け継いでいかなければ」といった言葉も度々あった。
描かれていることは、映画なので、過剰だったり、非合法だったりして全面肯定はできないのだが、その奥にある「この土地や文化を守りたい」という気持ちや、老齢化や生産性の低下からくる地域存続の危機感は、自分にとっては共感できる部分がある。
手筒花火の技術の伝承や、村人総出の清掃活動などをみて、「こんなことまで手伝わされるのか…」と捉えるか、「こうやって文化は伝承されるのか」と感じるかで変わってくると思うのだけれど、共同作業を重ねることで培われる連帯感は、決して悪いものだけではないと思う。
ただ、半分田舎の我が家の回りでも、作業や持ち回りの役員に非協力的な家が増えてきたり、高齢化による文化伝承(神社の鳥居のしめ縄づくりとか、御柱祭関係とか)の後継者不足問題などが実際にあったりして、ちょっと身につまされる。
③功績をあげた人物を奉り続けることって…。
今問題になっている、某テレビ局の某相談役みたいに、災害時に村を守った田久保への信奉は、やっぱり内部からは捨てられないんだなと思った。
「人間という動物は、自分より強い誰かに導かれたいと願っているんだ」
これは、映画「ソウルの春」の中に出てきた全斗煥がモデルとなった人物のセリフなのだが、村人たちの田久保への信奉は、こうした意味もあるのだろう。
その結果、法治国家の中にありながら、そのコミュニティでは、「村の中のことは、どうとでもなる」といった、権力者の匙加減による人治支配が始まる。でも、人々はそれについていった方が楽なので、反対はしない。その結果、とんでもないことをしていても、感覚が麻痺してしまっているので、ヤバさに気付かない。
これも、田舎かどうかは関係なく、実際に今も至る所で起きていることだろう。
④「さあ、帰ろう」というセリフについて
村の大麻栽培を告発して、追い縋る田久保を振り切り、車を飛ばす杏奈の口から笑みと共に出たのがこのセリフ。
彼女たちは、終のすみかとして、あの場所に移住して来たのかと思って観ていたら、そうではなかった訳で…。
麻宮という村(集落)は、彼女たちが来なかったら、少なくとも廃村にはなっていなかっただろうと考えると、村を滅ぼした害虫(「嗤う蟲」)は、彼女だったということか。
観終わって、ちょっとゾワゾワっとする作品だった。
嗤う蟲(映画の記憶2025/2/7)
良くできたヴィレッジホラー。Jホラーらしくていいね!最近見たやつで1番良いかも。残虐シーンは自分の視点だとないにも等しいので、火サスレベルが観れれば観れる。
主役たちよりも周りの演技が恐怖を駆り立てる。
特に田口トモロヲと杉田かおるはハマってたな。
脚本もしっかりしてたからストーリーもすんなり、カメラワークはもう少しいけたのではないかと思うがあえてしなかったのかなとも思うのでこちらはスルー。
知らない言葉の統一感は威圧感あるよね。しかも全体主義的にこられたら。
あと都会の人からすると良くも悪くも田舎の共有感は恐怖だねw
物理的なホラーでなく、感覚的に恐怖を感じるために色々考えられてたかなと。
(個人的評価6.5点/10点中)
因習村じゃなかった?
こんな村はイヤだ
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