「田舎の付き合いは不可避!」嗤う蟲 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
田舎の付き合いは不可避!
怪しい予告にとてつもないB級臭を感じながらも、セリフの中に地元のものと思われるような方言を耳にして、ちょっと惹かれて鑑賞してきました。案の定と言ってはなんですが、公開2日目だというのに観客はまばらでした。
ストーリーは、田舎での悠々自適な生活を求めて、脱サラした夫・輝道とイラストレーターの妻・杏奈が、田舎での過度な近所付き合いに戸惑いながらも徐々に田舎暮らしに慣れていくが、しだいに自治会長の田久保に牛耳られているような村の雰囲気に不信感を覚えるようになり、やがて村に隠された秘密が明らかになっていくというもの。
冒頭から、スローライフに憧れる若い夫婦と、その期待を裏切るような村の不穏な雰囲気が描かれます。田舎暮らしでは避けられない地元付き合いを、これでもかと嫌な感じで描いているのがおもしろいです。初めは、ちょっとした親切、それがおせっかいとなり、プレッシャーとなり、生活に過度に干渉してきます。拒絶したくてもそうさせない圧力を感じ、気がつけば絡め取られているような気持ち悪さを、絶妙なさじ加減で描いています。
はたから見れば序盤からこの村の異常性は感じるものの、当事者から見れば正常性バイアスと初めての田舎暮らしで異常性に気づきにくく、押し切られるように田久保の言葉を受け入れてしまったのでしょう。誰でも初めての環境で、周囲の人との関係を悪化させたくはないものです。
ところで、聞き慣れた方言といい手筒花火といい、舞台は間違いなく我が地元の愛知県三河地方だと思われるのですが、エンドロールのロケ地に馴染みの地名がなくて残念でした。でも、もし本当に三河が舞台なら、あの手筒花火の構えはダメダメです!最後のハネが足を直撃しないように、「手筒側の足を必ず前に出せ!」と先輩たちに怒鳴られます。あと、田久保の妻が「けなるい」と言いますが、今どき地元の年寄りでも使わない言葉で、久しぶりに聞きました。方言監修は相当ご高齢の方が行なっているのでしょうか。
とはいえ、光の速さで広がる噂話、いやらしく絡みつくような近所付き合い、逆らえない圧のある村の重鎮などは、よそ者から見れば実際あんなものかもしれません。これからは近所に移住してきた方には優しく、いや必要以上に干渉しないようにしたいと思います。三河地方は穏やかで住みやすいところなので、田舎が好きな方はどうぞお越しくださいませ!
キャストは、深川麻衣さん、若葉竜也さん、田口トモロヲさん、松浦祐也さん、片岡礼子さん、杉田かおるさんら。田口トモロヲさんの怪演が本作いちばんの見どころと言ってもいいでしょう。
誰が何を知っていて、何を直接見て何を伝聞でしか知らないか…
スーパーの件での輝道の反応が顕著ですが、その辺で無理のない行動になってたのがよかったです。
逆に神目線で見てると違和感を覚えるかも。