海の沈黙のレビュー・感想・評価
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少しずつ、人々の連なりが姿を現す
人と人同士、人ならぬ絵画やアイテムまでも、その繋がりを明らかにしていく面白さ。この映画の楽しみはそういうところかと思いました。最終的に、最初に見せたアイテム「主役に似せたロウソク」に舞い戻る、描かれた真円のなんと美しいことか。
そもそも、下手の横好き感覚で、知識も経験も無く美術館に足を運んでいたこともあるのですが、「絵画に於ける贋作裏話」とか「真作を超える贋作」というテーマがとても興味深く、そこから一つずつ人の繋がりが見え始めるため、話を追うのが面白くて仕方が無い。
かと思いきや、ポンと刺青に話が飛ぶため、「なんのこっちゃ」と思いきや、それこそが、ことの真相へと直結。そしてようやく登場する、主演・本木さんの渋いお姿。ゴッホを100倍格好良くしたような本木さんのビジュアルがなんとも素晴らしい。溜めて、溜めて、「待ってました」と、ようやくのご登場がなんとも憎いですね。
ビジュアルのみならず、あくなき芸術を追い求める姿こそ、視聴者が求める理想郷。それと対比して「真作に加筆されてしまった画家」の石坂浩二氏が演ずる田村氏が、相反する存在として登場させられ、もはや、なんだか可哀相。
名を売って金を稼ぐ対照的な画家として登場させられてはいるけれど、ちゃんと自分の筆ではないことに気づき、強く咎められているにも関わらず、記者会見を開いて発表に踏み切ったこともあり、あまり悪い印象はありません。それで普通の人の姿だと思います。
それを超えて飽くなき芸術家の探求を重ねていったことが、体を蝕み、寿命を縮めたような気がして仕方がありません。作中、特に言及されていませんでしたが、主役の「芸術の呪い」に、主役を推したあの美術館の館長や、主役の「2番目の女」である彼女も、まるで「芸術家の呪い」に引き込まれてしまったかのように、自ら命を絶ってしまった。
別に「真の芸術家の魂」をまるでホラーの呪いのように言及したくはないのですが、この映画には「死」のアクシデントが散りばめられ、最後には今際の際で「3番目の彼女」に別れを告げに現れた。「1番目」のキョンキョンが逃げたのは「呪いから逃げるため」であって、「3番目」には「呪いをかけたくなかったから」という理由で、それぞれ刺青が掘られなかった、という私の考察は突飛でしょうか。
それはさておき、この映画の錚々たる役者陣には凄いと想うのは私だけでしょうか。本木さん、キョンキョン、石坂浩二氏、仲村トオルさん、中井貴一さん、等々、誰もが何処かで眼にしている有名人が揃い踏み。これもまた、人との繋がりを面白くした最大の要因ではなかったかと思います。
あと、主役の本木さんは3人の美しい女性達を侍らせた、と言えば悪い言い方ですが、でも、まったく嫌味を感じないですね。エロいようでエロさもなく、優しく、そして暖かいとまで言っても良いかも。ストイックな芸術家というものは、こうもモテてしまうのか。
最後、ワンちゃんがいい演技してました。彼(犬)もまた、主役の優しさを示すサインでしょうか。創作に苦しむ主役の心を癒していたのでしょう。それもまた、番頭を名乗る中井貴一さんの配慮だったかも知れません。
ともかく、良い映画でした。特に説明も理解せず飛び込んでみて良かった。
金田一(石坂浩二)さん、小池(中井貴一)さん、事件です、贋作です。
モックンの演技、特にラスト近くの気迫の演技が、印象的。キョンキョンも熟女になってきて、歳相応の演技が良かった。だか、配役の設定が??だと思う。石坂浩二の実年齢83歳。モックン58歳、仲村トオル59歳。同期という設定は無理があるでしょう。下手したら、モックンは、石坂浩二の息子役でもOKだと思う。石坂浩二には申し訳ないが、せめてモックンたちと歳の近い阿部寛とか、椎名桔平に演じて欲しかった。中井貴一は、相変わらず上手だが、「嘘八百」の古物商の小池さんのイメージがあるので、贋作云々という映画での出演はどうかな…(←もっと何年か後だったら良いかも)
あと、清水美砂の自死の理由と刺青に拘る理由が理解できなかった。😩
清水美沙の尻
なんだろう、とにかくストーリーが面白くないて退屈きわまりない。
中井貴一や小泉今日子の良さもあんまり出てなかったな。
仲村トオルもあんな端役で使うとかもったいない。
清水美沙の尻は良かった。
美の価値は
美の価値は誰かの評価によって決まるのではない。美そのものに価値があるのである。
絵画を題材にした美を追求する映画である。
生い立ちの不幸から美術の世界にのめり込み、不穏な出来事を経てやがて贋作制作に携わる竜次。
竜次の学生時代の恋人で、今は竜次のライバルだった田村の妻となっている杏奈。
数十年ぶりの再会。手が触れた一瞬に時を遡る。
けして幸福とは言えないここまでの2人の人生。お互いの人生について知る由もない。
ただ再会の場に喜びの笑顔はなかった。
死の床で聞いたかつての恋人からのありがとう。竜次は床を抜け出し絶筆となる絵を完成させる。
それは海で遭難した両親をなんとか救いたい竜次の血の色をした真っ赤な心の炎だ。
ここからは私の連想したこと。
厄介事のほんどは人間関係の厄介さ。
それまでのその人の人生など知ることもなく、ただ今のその人だけを見て、勝手に良い人そうでない人などと判断しがち。来し方など想像もせずに、人間関係が悪いなどと一方的な愚痴を言いがち。想像力と冷静な判断力、気をつけたい。
「著名画家」というブランド有無で世間の絵の評価判断が左右するのは...
「著名画家」というブランド有無で世間の絵の評価判断が左右するのは事実であり、この映画が伝えたい「一枚の絵、それのみの美の是非」にまったくの同感でありますが、一方で「倉本 聰」の脚本(ブランド力)でこの映画を観に行ったのも事実であります(笑)。
映画に出てくる絵画は、パッと出も含めて総じて素晴らしく、この物語にふさわしいものばかり。スクリーン映写を通しての絵であるものの、何度も心動かされます。実際は誰が描いたのかCopilotで調べたのですが、「それは興味深い話ですね」と、訳わからない回答がきたのでわかりません。(パンフレットには書かれているのでしょうね)音楽や映像も美しく、それらを背景に田村安奈(小泉今日子)と津山竜次(本木雅弘)の人生晩年を迎えた役同士の再会シーンは、時の流れや変化により変わるもの、変わらない事を静かに感じさせてくれました。好演です。一方で津山と田村修三(石坂浩二)が学生時代の同期という設定は、本木さんが老けメイクしても年齢差は埋められず、観る側を混乱させるミスキャストと言えます。これを良しとしてまかり通ってしまうことがまた、「巨匠ブランド」の負の部分と言えるでしょう。
この物語のポイントとなる田村の描いた絵に描き加え、より良くしたという行為ですが、画力が制作者以下であっても、本人と違った視点が加わることによってブラッシュアップされることがあります。なので、終盤まで津山が天才的な画力を持つことを示すオリジナルの絵が一度も出てこなかったために、ラストシーンの一枚に期待したのですが、死線を乗り越え、熱く描き続けるシーンを見せつけられた上で出来上がった津山の絵は、果たして田村の絵を越えたのか。
「映画のラストを飾る絵だから」といった前置き無しに、ただ一枚の絵を見た時にあなたはどう感じるか。最後の最後で、観る側にもこの物語のテーマを突きつけられた気がします。
倉本聰さんなりの美へのこだわり
日本最大級の美術展で絶賛された名画の「落日」が、贋作とすり替わっていた。それを作者の田村自身が見抜いて告発した為に起こる悲劇。一方、全身刺青の女性の自殺体が発見され、二つの事件に共通した人物が浮かび上がる…
私はどちらかというと写実的な絵が好きですが、本作に出てくる絵は巨匠の物も含めていいなあと思いました。本木雅弘さんは美しいですね。清水美沙さんも綺麗でした。
ストーリーは有り得ない感じで退屈でした。
気になったところ
①美の定義
「美は絶対で、それ以上でも以下でもない」みたいなセリフには共感できないです。誰が見てもきれいなものってありますが、絶対ではないです。何を美と捉えるかは、人によって、場合によって違います。「誰が何と言おうと、良いものは良い」という事なら分かりますが、それって主観です。
②刺青を取り上げたこと
刺青を芸術の一つとして描くならまだ分かりますが、そういう扱いにはなって無かったです。
昔、山田太一さんの「早春スケッチブック」のオープニングに、内容とは全く関係ない刺青の背中の画像が出てきた事を思い出しました。それは確か山田さんの指定です。倉本さんの「優しい時間」でも、息子が刺青を入れてしまいます。本作にも、「アザミの背中に刺青を入れなくて良かった」というセリフがありました。それらは刺青=社会からはみ出した者というイメージに繋がりますが、孤高の天才画家にそのイメージは必要でしょうか。
③女性の扱い
牡丹もアザミも、従順で男にとって都合のいい女です。若い頃の安奈も、一度は刺青を了承したけど怖くなって逃げ出したように見えました。10代の恋人に刺青を入れようとするなんて、どうかしています。
竜次の母は、漁の仕事をしているのに本当に透き通るような肌だったんでしょうか。余程良い化粧品を使わなければ美肌は維持できないと思いますが。多分、日に焼けて逞しく、大きな声で笑う陽気な母では駄目なんでしょうね。女性は色白でたおやかで従順でなければならないという固定観念じゃないですか。
④スイケンのキャラクター
凄腕の料理人なのに、竜次の為に自分を犠牲にして尽くす男。田村を「田村くん」、安奈を「お嬢さん」と呼ぶのも気になりました。
⑤本物の「落日」と贋作をどうやってすり替えたのか、本物はどこにあるのかが謎のままです。
タイトルの「海の沈黙」、竜次がこれをどういう気持ちで書いたのかは伝わってきませんでした。
平凡な展開の良作
津山と番頭を務めるスイケンとの出会いなど、もう少し詳細を描いてほしいと感じる部分もあるが、あえてそれを描かないことも制作陣の計算なのかもしれない。
作中ではやや噛ませ犬のような描き方をされる田村画伯だが、自身の作品展に贋作が紛れ込んでいた際にそれが自身の作品よりも優れていることを理解しながらも告発すること等を鑑みると、画家としての信念を持った人物だと言える。
ストーリー展開は良くも悪くも普通の展開ではあるが、絵画をテーマとしているためか映像は洗練されている。また、登場人物のほとんどが矜持を持つ人物として描かれているため、鑑賞後に余韻が残る作品だった。
年齢設定に疑問
点と線がつながるというのが、好きな映画作品のタイプです。本作品はそのような謎解きはありませんでした。
この作品では、登場人物の説明が(あえて?)十分でないので、何故?っていうもやもやが残りました。
特に、津山の面倒を見ることになったスイケン(中井貴一)のストーリーは、知りたい部分。
残念だったのは、石坂浩二演じる現代の巨匠・田村と津山と仲村トオル演じる美術研究所所長が同年代(同期)だったとの設定。石坂(83)、中村(59)、元木(58)。 石坂が、安奈(小泉)の父の設定ならしっくりきたが、倉本先生のご希望だったのかな。
狂気じみて理解が難しい
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画家・石坂の絵画を集めた展覧会が開かれる。
主催者は各美術館や個人の所蔵物を借り集めて来たが、
石坂本人がそのうち1作品を、これは贋作だと言い出す。
主催者側の意向を無視してそれを世間に公表した石坂。
その作品を所蔵してた美術館の館長は責任を取って自殺。
やがて石坂の過去を知る者からの怪電話が来て・・・。
とサスペンス風な香りがしたが、そうでもなかった。
若い頃、石坂と本木は同じ師についてた。
本木は天才過ぎるが故に、奇抜な行動が多過ぎた。
例えば師匠の絵を塗りつぶした上に自分の絵を描いた。
その絵「海の沈黙」は各賞を受賞するも、闇に葬られた。
また師匠の娘と交際し、刺青という芸術を彫ろうとした。
才能を妬んだ石坂らの暗躍もあり、本木は破門となった。
本木は「海の沈黙」を塗りつぶした上に上記の贋作を描いた。
才能の差は明らかで、贋作の方が優れた作品だった。
石坂の嫁で本木の元カノの今日子が本木のもとを訪れる。
本木は病気で余命宣告されてて、ビミョーな雰囲気に。
で最後は狂ったように最後の作品を仕上げ、急に死亡。
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中盤くらいまではサスペンス風で面白かった。
途中からは才能ある画家の贋作を巡っての是非というか、
社会派ドラマみたいな展開になっていった。
そこまでは良かったが、最後の方はよう分からんかったな。
天才で独自路線過ぎるが故に理解も共感もできんというか、
本木が結局どうしたいんかがよう分からんかった。
どんどん狂気じみて来る本木の演技は見所やけどな。
ただ自分とは全く関係ない世界の出来事過ぎて、
心情もよう分からんし、分かりたいとも思わんかったな。
あと中井貴一の役名って何で「スイケン」なの??
「清家」かとも思ったが、後で調べると「スイケン」。
酔拳を思い出してもて、気になってしゃーなかったな。
じじいの映画
倉本聰がじじいだから、やり残したこととかそういうのがテーマになるんだろうけど、どう考えても青春時代に「海の沈黙」を描いた時のエピソードの方が面白い
というか、それがないとアンナとリュウと石坂浩二の関係性がわかるようでわからん
中井貴一もよくわからん
この尺で過去と未来を描くには登場人物が多すぎるのかな
アザミのくだりいらないかなぁ、あそこだけなんか陳腐だった
だからこそおそらく、アバンで設定をまず説明しちゃう。その潔さよ
アンナとリュウの再会シーンは圧巻
変なとこでアートっぽくするたび興醒めした
あと、天才を描くというのがいかに難しいか〜
本木さんと小泉さんが盛り上がってほしかった
こんな感じのストーリーとは思わず…
結局、最後までストーリーに入り込めませんでした…
本木さんと、小泉今日子が再会したあたりから、睡魔に襲われ、就寝…。本木さんが血を吐くシーンで目が覚めました…
本木さんと小泉さんが、再会して、感情が高ぶったり、燃え上がったりするのかなぁと期待してたのですが、違いました。
本木さんは若い女の子に惹かれたり、いろいろと理解できない男性でした。
男性の幼さ、妬み、嫉妬、両親とのしがらみなどなど、いろんなこと盛り込んでるかんじ?
私にはちょっと無理でした。
病院のシーンも、異常をを知らせるアラームがなってるのに、モニターは異常無しだし、 そういうところも、冷めてしまいました
元木さんの役になりきる凄さ!
圧倒されたのは元木さんの役になりきる凄さです。彼はいつも自分を空っぽにしていて、役の全てを自分の中に入れているのだろうと思いました。そして中井貴一さんも流石です。リュージが美を求めて生きてきた壮絶な人生、「番頭」さんがいてくれたことで観客の多くが随分救われた気持ちになったと思います。
キョンキョンは難しい役だったと思います。父親が重鎮だった美術界で、誰かの栄華のために利用されている存在である自分を受け入れて生きてきたのでしょう。冒頭のシーンで「誰か男性が」と言われて「そんなふしだらな女ではない」というシーンは、自分を解放できていない人を象徴するためかも知れませんが違和感を感じました。最後に、やはりこの人の傍では生きられなかったと思いなおすシーンの表情も。意図的に抑えていたのでしょうが、リュージへの思いも仮面夫婦である夫への思いも、その複雑な思いがイマイチ伝わってこなかった気がします。
倉本先生の美への思いは伝わりました。贋作であってもその絵に魂を揺さぶられると言って自死した人の思いが強く残りました。でも、美のために(?)人が死ぬのは何故?と思ってしまいました。
テーマは深く人物はさらに深く
長い時間を経て再会する二人と、小樽のノスタルジックな風景はよく合っていて、とても情緒がありました。
「このカウンターあの店だ」
「この景色、あの橋のこっち側だ」と思いながらも、見慣れた景色が今まで見ていたのと全然違う美しい映像になっていて、感嘆しました。
最初は、世界的な画家の「これは私の絵じゃない。贋作だ!」から始まる犯人探しのサスペンスのようでした。仲村タオルの雰囲気がいつもの刑事っぽいせいでしょうか。
後半は、美とは?真実とは?命とは?と問いかける複雑に絡み合った糸が織りなす人間ドラマでした。とても見応えありました。
海の中に胸まで沈んでこちら側を見る本木雅弘さんのポスターは印象的ですが、あれは入水自殺を計っているシーンではありませんでした。(そう思ってた)
過去から今、死から生、絶望から希望、未完から完成を見ようとしている、そんな表情を捉えたものなのだと思いました。
中井貴一さんが演る「番頭」さんは、とても渋みがあります。
一生をひとりの画家に捧げて、美の何たるかに信念を持っている。
彼が携えている杖がまた美しい。
安奈(キョンキョン)が作るキャンドル作品には、ずっと心の奥底で愛し続けた人の顔が彫られていて、それが津山(もっくん)の手に渡り、蝋の涙を流すシーンには泣きました。
あと、津山(もっくん)が安奈(キョンキョン)に再会した時、「やぁ」と、ひとこと言うのですが、この「やぁ」はなんとも言えず官能的です。
(私だけ?そう感じたの私だけかなぁ?でも、そうなんですょ。)
悲しげで、優しさに満ちていて、懐かしそうな、寂しそうな。
こんなふうに、「やぁ…」って言われたら、腰からくずおれてしまうわ。ちょっと掠れた声なんです。
ビデオ買ったら、ここだけ鬼リピすると思う。
で、「この絵は私の絵じゃない。贋作だ!」と言った世界的画家田村(石坂浩二)は、贋作が自分の絵よりも優れていると内心認めていて、
それに妻(キョンキョン)とはずっと別居で偽物夫婦(笑)。
中身はこっちの方が偽物なのに、世間的に栄達しているので本物として扱われる。
本物と偽物。
リアルとフェイク。
今まさに私たちが溺れそうになっているテーマだと思います。
⭐︎倉本聰さんが話題になっていますが、監督がすばらしいのでは?海面から岸の火を映すカメラワークには心臓バクバクしました。
⭐︎みんながいいと言うからという理由で見てはいけない。倉本聰作品だからという理由で見てはいけないそんな理由で見たら、倉本聰さんの投げかけている問いに反するよね
理解するにはメモリアルブックが必須だけど、映画代くらいはするんだよね〜良かったけど
2024.11.28 MOVIX京都
2024年の日本映画(112分、G)
贋作騒動によって再会する男女を描いた恋愛&ヒューマンドラマ
監督は若松節朗
脚本は倉本聰
物語は、ある占い師(津嘉山正種)から「背景に見えるもの」の指摘を受ける安奈(小泉今日子、高校時代:小野晴子)が描かれて始まる
占い師の言葉を巧みに交わすものの、彼女の脳裏にはある男が浮かんでいた
安奈は、世界的に有名な画家・田村修三(石坂浩二)の妻だったが、修三には別に女がいて、その関係は仮面夫婦のようなものだった
修三は日本絵画100周年記念の作品展に選出されていて、その幕開けには文部大臣の桐谷(佐野史郎)も登壇することになっていた
館長の小原(中村育二)の案内で館内を見回った修三だったが、ふと自分が描いたはずの「落日」に違和感を感じていた
その場は取り繕ったものの、夜になって再び「落日」と対面した修三は、「これは私が描いた絵ではない」と吠えた
その絵は貝沢市にて所蔵されていたもので、急遽、館長の村岡(萩原聖人)と副市長の大井(久保隆徳)が呼び出された
画商(田中健)から詳細を聞いても「古い話は覚えていない」と言われ、その絵がどのようにして展示会にまでたどり着いたのかはわからなかった
数日後、責任を感じた村岡は、奇妙な遺書を残して自殺を図った
そして、彼の意思のもと、参列者に遺書の複写が配られることになった
そこには「落日」に対する想いが綴られ、あの絵が贋作だとしても、私の心に訴えかけるものは本物だった、と書かれていたのである
映画は、その絵が中央美術館の元館長・清家(仲村トオル)の元に送られるところから動き出す
彼は絵画の修復などに携わっていて、彼の元には世界を騒がせている贋作の情報が舞い込んでいた
そのどれもが精巧な作品になっているが、おそらく同一人物のものではないかと推測されていた
そんな折、北海道の小樽にて、一人の女の水死体が発見される
女は近くの小料理屋の女将・牡丹(清水美沙)で、彼女の全身には刺青が彫られていた
その取材に訪れていた記者の伊吹(三浦誠己)は、偶然入ったバー「マーロン」にて、ある絵を見つける
世界的に有名な絵の模写のようだったが、どこか違和感のある絵で、伊吹はそれを写真に撮って、清家に見せることになった
清家は絵の中に刺青のようなものを見つけ、絵のサインが「Lyu」であることに気づく
そして、30年ほど前に姿を消した、天才画家・津山竜次(本木雅弘、高校時代:小島佳大、幼少期:田村奏多)のことを思い出した
彼は、修三と同じ師匠の門下生であり、高校時代にある事件を起こしていた
それは、師匠の娘である安奈の背中に刺青を彫ろうとしていて、それが理由で姿を消していた
小樽の女将の刺青も彼の仕業と考えられ、清家はそのことを安奈に伝える
そして、彼女は一路、小樽へと向かうことになったのである
映画は、基本的には竜次と安奈のラブロマンスなのだが、高校時代の刺青騒動以来会っておらず、二人の仲がどこまでのものかは描かれない
安奈がその後、修三と結婚することになった経緯とか、竜次の番頭を務めているスイケン(中井貴一)の背景もほとんど語られない
このあたりの設定は、映画のメモリアルブックに載っているので参考になるが、映画であの設定を読み解くのはほぼ不可能であると思った
物語は、竜次が「赤」にこだわっていて、それが海難事故で亡くなった両親が最後に見た「迎え火」であることに気づくのだが、そのシークエンスも安奈と会ったことで気づくという意味不明な展開を迎える
安奈と両親の海難事故の接点はほぼ無く、その事故によって竜次がどのような青春時代を送ったのかはわからない
その辺りをほぼカットしているので、竜次の心境の変化というものが映画からは読み取りにくくなっている
さらに、映画の根幹となるテーマは「美の価値」であり、それは金額や権威に囚われないものだということなのだが、それが人生を賭けて探した赤と繋がっていると感じるのもかなり難しい
結局のところ、美とは自己満足の世界で、そこに到達することができれば画家冥利というもので、それが見る人にどんな感情を与えるかはどうでも良いという感じに見える
そんな中でも、村岡のように感化される人もいるというもので、そういったものの価値と世間の認識のズレが不幸を呼んでいるようにも読み解ける
何が正解かはわからないが、ざっくりとした印象はこのようなものだったと書き留めておきたい
いずれにせよ、この世界観やテイストが好きな人向けで、それが万人受けするかはなんとも言えない部分がある
結局何の話だったのかわからないというところもあるし、安奈に刺青を彫らなかったのは正しかったみたいな感想になっているが、どう見ても怖くなって逃げられただけで、刺青を否定すると死んだ女将が浮かばれないような気がする
色々とわからない部分はメモリアルブックで補完するしかないと思うが、映画代ぐらいはするので、購入に関しては余程の動機がないと勧められないというのが正直な感想である
美は美であってそれ以上でも以下でもない
もっくんの顔が出てくるまでの約1時間が、ミステリー要素が盛り込まれていて、
作品に惹き込まれていきました。
中盤以降は、主人公津山竜次の美学と生き様的な話になっていくので、
ここは好き嫌いが分かれそうだなと思いましたね。
津山は贋作を描くというよりも、オリジナルをさらに超えるオリジナルを描いているのでしょうね。
画家という作家性とかブランドではなく、絵の力、美の力を追求しているのでしょう。
このあたりは、冒頭の贋作発覚事件をちょっと嘲笑うかのような、そんな感じにも受け取れました。
だからこそ、最後のセリフ「美は美であってそれ以上でも以下でもない」というのは至言だと思いました。
絵の(芸術の)本質を説いているセリフと理解しました。
俳優陣もベテラン揃いで安定していましたね。
私にとっても、なんてったって永遠のアイドル小泉今日子、年輪を重ねても好きです。かわいいです。
それから久しぶりに目にした清水美沙。美しいです。
仲村トオル、いい役なんだけどなー。なんか中盤以降存在感が薄れていったのが残念でした。
そして中井貴一。役名のスイケンも謎ですが、怪しい中国人に見えましたけど、
頬の傷とかのキャラ造形が謎でしたね。海外で料理人やってたエピソードとか、マジで謎。それが面白かったですね。
もっくんも頑張っていて、好感が持てました。
本木雅弘さん迫真の演技
本木雅弘さんが本当にすごかった。
ストーリーとしては、過去の経緯がほとんどなかったのが残念。小泉今日子との出会いから別れまでの関係、何故石坂浩二と結婚に至ったのか、中井貴一とこれまでどのような物語があったのかなど、それらの描写がもっと丁寧にあれば良かった
飽きずに見れましたが
倉本聰さんが脚本、自分の年代だと超アイドルだったモックンとキョンキョンの共演。それだけの理由で鑑賞。
全体的に静かで落ち着いた、大人な映画で美しかったです。素晴らしい腕を持つのに破門された画家。彼のかつての恋人や美術界に生きる人々の様子から、徐々に彼の生き様が描かれる。
海の沈黙というタイトルそのものが、海に消えた両親を持つ彼の主題であった。
うーん、私は今一つだったかな。。本木さんと石坂浩二さんが、いわば恋敵の同年代という設定に?がついてしまい、入り込めなかった。
アザミに、入れ墨彫りたいほどの何か秘めた感じがもう少しあると良かったし?
絵画における苦悩に集中するだけでよく、美の追求について、入れ墨がどうも突飛に感じてしまいました。彫り師の父親の影響で培われたという事はわかりますが。。
清水美砂さんを ものすごい久しぶりに拝見しましたが、変わらず美しかった。中井貴一さん今作かっこ良かったです。小泉さんとはドラマ「最後から二番目の恋」での共演がすごい印象強いです。
文学作品
いい映画ではありました。
重くもあり、芸術とは?愛することとは?
を考えさせてくれる映画でした。
倉本聰と言えば北の国から世代ですが
本を読めない(ながら俗なのでじっくり本を読むことが出来ない)
者には、本そのままの映画として見られると思います。
ただ万人向け?ではないので☆4に近い3.5にしました。
遺作になるのかな( ;∀;)
渾身の気迫満ちた孤高の画家、本木さんに拍手!心刳る思いがした。
本気で芸術作の至極の一品。
ここまでの思いをさせてくれる作品には そうはお目にかかれまい。
場内、久し振りの倉本先生の作品って事もあってか ファンはじめ
年配者が多かったが ほぼ席は埋まっていた。
とにかく、主演:本木雅弘さん(津山竜次 役)が腰抜かす位 凄すぎた。
肺の病で余命数ヶ月の孤高の画家を演じている。
彼の過去に一体何があったのか。その一つ一つを紐解きながら 津山竜次という人物に観客席は心の底から引き寄せられてゆく。
津山は赤をもっともっともっと欲していた。その求める赤とは一体何なのか・・・
原作:倉本聰氏
監督:若松節朗氏
-------素晴らしい役者陣---
津山竜次 役:本木雅弘さん
田村修三 役:石坂浩二さん
田村安奈 役:小泉今日子さん
スイケン 役:中井貴一さん
あざみ 役:菅野恵さん
牡丹 役:清水美砂さん
清家 役:仲村トオルさん
村岡 役:萩原聖人さん
半沢院長 役:村田雄浩さん
桐谷大臣 役:佐野史郎さん
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青森の小さな漁港で育った彼。父は漁師で刺青彫師。有るとき両親はマグロ漁に出て帰らぬ人に。遭難したとき浜辺に焚いた大きな炎を目指してきっと浜へ辿り着こうとしたんだと、彼は心の深い念にそれを抱いていた。
その時の 炎の今を(生きた赤)を求めている = 親への尊い愛(想い)である。
同時に白い肌に極めて興味があり、その体に刺青彫りをする面も持ち合わす。
この 純粋無垢な白い肌こそが ”母”自身を表していた。
ここに父譲りの刺青を彫る事で ”両親”への深い念(生きていて欲しい事、会いたいと言う想い)を強く感じた。
そして彼の過去に眠った恋人安奈の存在。彼女は贋作事件の 因縁の根源である画家 田村修三の妻と成っていた。北海道 小樽で再会する二人のやりとり・・・手製の蝋燭を渡す彼女の手にそっと触れる竜次の手。この一瞬に心が奪われる。
上手い、絶妙なタイミングとその二人の間柄を見事に醸し出していると感じた。
かつての恋人との再会。そして 残された命の中で 息尽きるまで
浜辺で燃え上がる炎(生きる赤)を深々と描く彼。
この姿に、人の戻らぬ時間への執念とあがき苦しみの中に 安らぎを何とか見いだそうとする想いを深く感じたです。
やがて別れの時。ベットに彼女が渡した 彼の顔が描かれた蝋燭。その炎は穏やかな赤で部屋全体を優しく包み照らしていた。
別れの言葉 ”ありがとう” ・・・
彼女の想いが 観ているこっちにも 届いて涙した!
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潮の流れのように 展開と心が揺らいで流れていきます。
それは海の波でもあり燃えさかる炎でもあり、決して戻る事の無い”美”と言うものを 観た方の誰もが感じる事が出来るでしょう。
ご興味御座います方は
是非とも 今のうちに
劇場へ!!
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