「美とは何か」海の沈黙 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
美とは何か
若松 節朗監督はテレビ出身だからか冒頭からドアップでの会話シーン、占い師の老人(津嘉山正種)はドラマの伏線の様な語り、相手は富も名声も手にした画家田村修三(石坂浩二)と名ばかりの別居妻、田村安奈(小泉今日子)、二人の顔のカットバックは醜美の切り返しで不気味な撮り方、なんと安奈はキャンドルアーティストで老人の顔を描いた蝋燭を作っており、昔の恋人津山竜次(本木雅弘)にプレゼント・・。
絵画が主題なのだが蝋燭の他にも入れ墨のエピソード、豪華な全身タトゥーの美女、牡丹(清水美砂)や背中に水連を彫ろうとしたが肌の美しさ温かさが母に似ていることで彫るのをやめた少女、あざみ(菅野恵)も登場。
田村は自身の展覧会で初期の作品漁村シリーズの一枚の絵が贋作だと唱え大騒動、所有者の地方の美術館館長は責任を感じて自殺、失恋を苦にしたのか牡丹も入水自殺、何やら犯罪ミステリー調の展開が続きます。
贋作事件を追う美術鑑定家、清家(仲村トオル)と田村は贋作の主がかって美術学校で田村としのぎを削っていた同窓の天才画家津山竜次(本木雅弘)だと気づく・・。
それからは小樽のバーの主で津山の面倒をみているスイケン(中井貴一)との因縁深い生活描写、津山の父は漁師の傍ら入れ墨師で津山もタトゥーが得意らしい。
後半になって田村が贋作と騒いだ絵のキャンバスには津山の海の傑作「海の沈黙」が描かれていたことが明らかに、度々、語られるのが美とは何か、名声、金銭的価値ではなく観た人の心の中に残るものもの・・、原作・脚本の倉本総さんは1960年(昭和35年)の、古陶器の贋作事件「永仁の壺事件」、鎌倉時代の古瀬戸の傑作であるとして国の重要文化財に指定された壺が現代の作家加藤唐九郎によるものと分かって文化財登録を抹消された話に触発されて、「作品の美に作者や時代の裏付けが必要なのか」という美術品の持つ価値の意味を掘り下げたかった、美とは何か、この辺が倉本総さんが描きたかったテーマだそうです。脚本はもとより演出、俳優陣も個性豊かで独特の味を秘めたヒューマンドラマでした。
