「渾身の気迫満ちた孤高の画家、本木さんに拍手!心刳る思いがした。」海の沈黙 The silk skyさんの映画レビュー(感想・評価)
渾身の気迫満ちた孤高の画家、本木さんに拍手!心刳る思いがした。
本気で芸術作の至極の一品。
ここまでの思いをさせてくれる作品には そうはお目にかかれまい。
場内、久し振りの倉本先生の作品って事もあってか ファンはじめ
年配者が多かったが ほぼ席は埋まっていた。
とにかく、主演:本木雅弘さん(津山竜次 役)が腰抜かす位 凄すぎた。
肺の病で余命数ヶ月の孤高の画家を演じている。
彼の過去に一体何があったのか。その一つ一つを紐解きながら 津山竜次という人物に観客席は心の底から引き寄せられてゆく。
津山は赤をもっともっともっと欲していた。その求める赤とは一体何なのか・・・
原作:倉本聰氏
監督:若松節朗氏
-------素晴らしい役者陣---
津山竜次 役:本木雅弘さん
田村修三 役:石坂浩二さん
田村安奈 役:小泉今日子さん
スイケン 役:中井貴一さん
あざみ 役:菅野恵さん
牡丹 役:清水美砂さん
清家 役:仲村トオルさん
村岡 役:萩原聖人さん
半沢院長 役:村田雄浩さん
桐谷大臣 役:佐野史郎さん
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青森の小さな漁港で育った彼。父は漁師で刺青彫師。有るとき両親はマグロ漁に出て帰らぬ人に。遭難したとき浜辺に焚いた大きな炎を目指してきっと浜へ辿り着こうとしたんだと、彼は心の深い念にそれを抱いていた。
その時の 炎の今を(生きた赤)を求めている = 親への尊い愛(想い)である。
同時に白い肌に極めて興味があり、その体に刺青彫りをする面も持ち合わす。
この 純粋無垢な白い肌こそが ”母”自身を表していた。
ここに父譲りの刺青を彫る事で ”両親”への深い念(生きていて欲しい事、会いたいと言う想い)を強く感じた。
そして彼の過去に眠った恋人安奈の存在。彼女は贋作事件の 因縁の根源である画家 田村修三の妻と成っていた。北海道 小樽で再会する二人のやりとり・・・手製の蝋燭を渡す彼女の手にそっと触れる竜次の手。この一瞬に心が奪われる。
上手い、絶妙なタイミングとその二人の間柄を見事に醸し出していると感じた。
かつての恋人との再会。そして 残された命の中で 息尽きるまで
浜辺で燃え上がる炎(生きる赤)を深々と描く彼。
この姿に、人の戻らぬ時間への執念とあがき苦しみの中に 安らぎを何とか見いだそうとする想いを深く感じたです。
やがて別れの時。ベットに彼女が渡した 彼の顔が描かれた蝋燭。その炎は穏やかな赤で部屋全体を優しく包み照らしていた。
別れの言葉 ”ありがとう” ・・・
彼女の想いが 観ているこっちにも 届いて涙した!
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潮の流れのように 展開と心が揺らいで流れていきます。
それは海の波でもあり燃えさかる炎でもあり、決して戻る事の無い”美”と言うものを 観た方の誰もが感じる事が出来るでしょう。
ご興味御座います方は
是非とも 今のうちに
劇場へ!!