「ハリウッド映画の対極をいく私小説とでも言うべき一作」ノーヴィス こべっこさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッド映画の対極をいく私小説とでも言うべき一作
見ていて楽しいであるとか爽快感があるとかではなくローイング競技を経験したローレン・ハダウェイ監督の実際の感覚を忠実に再現した映画だと言える。自分も大学時代ローイングを日本とアメリカでしていたことがあり傍目には優雅さや力強さ美しさを感じるローイングは実際は過酷な練習を必要とする競技である。
映画のタイトルの「ノーヴィス」とは新人・非熟練酒という意味だが作品の中では「2軍チーム(クルー)」の事であり「ヴァーシティ」と呼ばれる「1軍チーム(クルー)」と対象的に使われている。
映画を見ていて入部したての1年生がどうしてそこまで1軍になることにこだわって自分を追い込んで練習するのか疑問がわく、1軍になると奨学金が貰えるから?という伏線がはられるが答えは映画を見てのお楽しみとしておこう。
映画の中で主人公がローイングだけではなく学業の成績を上げることにも執念を燃やす場面が描かれており監督の出身大学を調べてみた。するとSMUとして知られる南メソジスト大学であり全米大学ランキングでも常に上位に入る名門校であった。
日本でも東京大学などは入学後の成績によって専攻科が決まるシステムがあり入学がゴールでないことはよく知られていることだがアメリカの大学は厳しさのレベルが違うし、入学するのも入ってからも大変だということが分かる。
その中でも主人公は極めてストイックで克己心、競争心が強く学業に対してもローイングに対しても全力で取り組んでいく。少し極端にも見える性格から周りの人たちとうまくいかなくなるところは邦画「あまろっく」の主人公とも似ているし競技種目がローイングというのも共通性があって不思議な気持ちがした。
ローイングというスポーツをしていた者としては多くの人がローイングに興味を持ってくれるようなシーンがたくさんあればと期待したのだがそういった意味ではしんどいつらいシーンが多かったので★を4つにした。
ローレン・ハダウェイ監督としては処女作として私小説とでもいうべき自分自身を赤裸々に描いた作品をつくったおよそハリウッド映画と対極を描いた監督の次作に期待です。