「強烈!」ノーヴィス sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
強烈!
イザベル・ファーマン、すごいですね。
なんかこう、名前からしてすごくないですか?
あれ、昔そういう有名な女優いなかったっけ?って思わせるような響き。
名優になるのが運命づけられているかのような。
もちろん子供時代にあのエスターの名演があって、実際にその時点で既にすごい女優でもあったわけなのですが。
そんな彼女の面目躍如というか、才能を思う存分乗せて演じることのできる強烈なキャラクターが本作の主人公です。
彼女の実力にはこのくらい凄まじいのがちょうどいいのかもしれない(笑)。
水を得た魚、どころじゃなく、水の中に入れた途端ものすごい勢いで泳ぎ出して、どこまでも行ってしまう感じでビビります(笑)。
なんとなくあらすじからは、最初フワッとなんの気なしに入った部活で、コーチやらライバルやら状況やらに煽られて、いつの間にか狂気にハマっていく、みたいなの想像するじゃないですか。
この主人公は全然、何の説明もなしに、最初から狂気の中にいますから。
そこからもう、圧が強めの緊張感あるシーンが鶴瓶打ちです。
前菜なしでいきなりメインが来てしまって、あれ?ってメニューを確認する間もなく、その後も次々皿が運ばれてきて、目の前に大きな音立てて置かれていく感じというか。
しかもよく見るとどの皿も、ドチャッといい加減に盛り付けられてるわけでなく、細部まで神経が行き届いててなんか怖いっていう(笑)。
ちょっと待って!て言うのも怖いのでこっちもどんどん食いまくるしかないみたいな(笑)。
実際物理的にもカットが異様に細かく割ってあったりして、時間的には100分切る映画なんですけど、ずっと情報量多いまま押し切ってくるので、見終わった後にようやくホッと一息つける感じでした。
でも見終わってぐったり疲れるというのではなく、逆に力が漲ってくるというか、映画のパワーに当てられて自分のエンジンも強制的に起動させられるような、極めて健全な影響をもらった気がしました。
あの狂気がうつって一時的にハイになってるなら、健全かどうか怪しい気もしますが(笑)。
イザベル・ファーマンの演技は、もちろんキャラクターとしては到底まともとは言えない異様なテンションなのですが、どこか余裕があるというか、完全に役を自分のものにしていて、危うさ全開で躍動する様がなんというか、すごく似合っていました。
まるで画面全体、いや映画館の空間全体が彼女の表情に吸い寄せられるような、恐ろしい魅力に満ちていて、その表情を見るだけでも十分に価値のある映画だと思います。
途中、恋仲になった女教師に長台詞で自分の思いをぶちまけるシーンが圧巻です。
動き、表情、言葉、彼女の演技そのものが、まるで一流のスポーツのようにそれ単体で強烈な魅力があって、文字通り息を飲んで見入ってしまいました。