人間爆弾 立ち止まったら、爆発
2023年製作/106分/スペイン
原題または英題:Todos los nombres de Dios
スタッフ・キャスト
- 監督
- ダニエル・カルパルソロ
- 脚本
- ジェマ・ベンチュラ
- 撮影
- トミー・フェレーラス
- 音楽
- カルロス・ジーン
2023年製作/106分/スペイン
原題または英題:Todos los nombres de Dios
タクシー運転手というのは日頃から運動不足。歩き続けろと言われても、けっこうキツいものがある。大勢の人に見られてるかといっても、基本的に孤独。妻ラウラとのインカムでの会話もほんの一瞬に過ぎなかった。警察はやはり『スピード』でもやり抜いたビデオ映像を流すという作戦を採るのだが・・・
犯人の一味である男が時限スイッチを送信。ビデオ映像の裏で爆弾処理をするにも残り21分となってしまう。そこまでして一般市民を殺したいのか?テロリストたち。少年たちが携帯を拾って危機一髪となる。ヤバいよ、ヤバいよ!といった感じでクライマックスを迎える。
サンティの家族、犯人ハムザ、そしてハムザの家族と、どの人物に焦点を当てても緊迫感が満載。ピラール少佐も男勝りでカッコいいし、爆発物処理隊員ヘススも良かった。そして死なせてしまったハムザから預かったブレスレットを家族に届けるというラストもいい。ハムザも山道の途中で自首することを考えていたんだろうな。しみじみ。『スピード』(1994)の人間版とも言えるのですが、ハリウッド映画じゃないことを考えると上出来。
スペイン映画なんて、珍しい。知らない役者さんばっかりでしたが、かなり楽しめた一本です。
人間爆弾って言うと、「無敵超人ザンボット3」を思い出しましたが、これほどの悲壮さは無かったですね。ただ、空港の爆破事件に遭遇し、ケガ人を助けたらそいつがテロリストで、逆に誘拐されてしまうという、なんとも不運なタクシー運転手の話でした。
【ネタバレ】
ところが、このタクシー運転手、どうも不運に纏わり憑かれているような気がする。
根っからの悪人ではなかったテロリストを自首させようとしたら、車が事故を起こして瀕死の状態にさせてしまう。
何とか蘇生させたが、山中のため、なかなか車が通らない。やっと来た車を止めたんだけど、そいつがテロリストの一味で、犯人はアッサリと殺されてしまった。
自分も頭を殴られ気を失ってしまうが、目覚めると身体に爆弾が装着されている状態だった。歩き続けないと爆発してしまう、何とも厄介な爆弾が・・・
新任の女性管理官とのやり取りや、家族との会話など、見応え十分で楽しませてもらいました。爆弾の解除までのハラハラドキドキは、ホンっとスゴかった。面白い!
でも、結局、テロの親玉は逃げちゃったんだよね?続編でも作るつもりなのかな?
自爆ベストを装着されてしまったタクシー運転手の苦闘を描く物語。
スペイン産のサスペンス。
バスが走り続けなければ爆発するで英雄譚を描いたのが「スピード」でしたが、この作品は「歩き続けなければ爆発」で市井のタクシー運転手の苦闘を描きます。
爆弾の恐怖、家族愛・・・そして自爆を覚悟していたテロリストへの感情移入等を織り交ぜながら、必死に歩く主人公を活写します。
警察の係わり方、ラスボスの凶悪さの描写もあり、物語を引き立てます。
見て損はない作品だと思いますが、やはりサスペンスアクションの作品としてはやや地味に感じられます。前述の「スピード」オマージュが気になることも含めて高い評価は難しくなりました。
私的評価は普通にしました。
どうしてこの映画を見ようと思ったかの考察から入りますが、私は一般人がちょっとした偶然によって死ぬような難局に巻き込まれる事件を扱った映画が、好きです。
今までも、『崖っぷちの男』『マネーモンスター』『フォーンブース』なんて好みの映画でした。
それらに共通して描かれるのが、主人公の背景にある何かしらの問題。人格だったり、家族だったり、仕事などでトラブルを抱える人が、命がけのミッションを経て、成長し融和を迎えるという物語にひかれるのです。
スペイン映画という未知の領域に興味がわいたのと、インパクトのあるタイトル。これだけで、自分好みの設定だなと思い、見てみようと思いました。
結論から言うと、見終わって、満足度の低い、残念な映画だったと言わざるを得ません。主人公の背景が平穏すぎて、もちろん借金とか、家族の不和とかそれなりに丁寧に描いてはありますが、映画にするほどの題材には思えません。
静かにクライマックスを迎える展開ですが、もう少しなんとかならなかったのかと思うところだらけでした。
逆に言えば、隅々までリアルに、ありそうなことだけを積み重ねていく描写は、明日にでも身近なところで起こっても不思議はないという説得力がありましたが、それだけの印象です。
以下はネタバレです。不満点ばかりなので、見たくない人は読み飛ばしてください。
・刑事部長みたいな現場の指揮官の女性と、主人公との関係性があまりに希薄すぎる。その割にトラウマを克服したいみたいな裏テーマが隠されているように見えて、すこし欲求不満。
・主人公と逃亡犯との交流が、深まっていく何かが足りない。例えば、逃げようと思えば逃げられたのに犯人をかばって逃げそこなったとか、ふたりの絆が生まれるような何か。
・黒幕があくまで謎の存在のまま、映画の中から逃亡していったこと。捕まるなり、派手に死ぬなり何とかならなかったのか。
・主人公は、最後まで歩き続けるだけで、これと言った見せ場がない。
・爆弾犯人をだまして、市内を歩き続ける主人公を監視する映像を細工して、爆弾を処理してしまおうというアイデアが、あまりにも『スピード』に酷似していること。その『スピード』ですら、かつての『新幹線大爆破』の剽窃に過ぎないこと。