劇場公開日 2025年10月31日

「リアリティあります?ツッコミどころ満載でテーマも良く分かりませんでした。」火の華 ジョン・ドゥさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 リアリティあります?ツッコミどころ満載でテーマも良く分かりませんでした。

2025年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

南スーダン日報隠蔽問題をヒント?にした映画ということで、どんな風に描かれるんだろう?とちょっと期待して見てみましたが、映像はキレイで、ストーリーはそれなりに面白いところもあったと思うものの、話とキャラクターを詰め込み過ぎなのか、「この人誰?どういう立ち位置の人?」と1回見ただけでは各キャラクターの関係性が理解出来なかったところがある。(おそらく回数の問題ではないかもしれないが)
主人公の南ス派遣施設隊長の神崎1佐の奥さんと中国マフィア(傭兵?)?の関係、主人公の上官である伊藤隊長(そもそも隊長って何だ?小隊長のことを言いたいのか?細かいことを言えば派遣施設隊で「隊長」と呼ばれる役職の人はトップである派遣施設隊長ー映画の中では神崎1佐ーしかいない。中にはあだ名的感覚で自分とこの親分をそう呼ぶ人はいるかもしれないが)と同じく中国マフィアの関係(取引相手かと思いきや、最後敵対するのは所詮、金で動くから?)、主人公島田が所属している小銃を作っている裏組織等々・・・。
また、タイトルにも書きましたが、一見、リアリティあるようで、全然リアルじゃない。(この際、装備品、服装の誤りや階級呼称、防衛記念章の誤り等の細かいところは置くとしても)そもそも冒頭の戦闘に巻き込まれるシーンが「何これ?」でした。施設器材が単独で故障?している状況もありえないし、それを迎えに行くのが高機動車1両というのもあり得ない。その後のヌエル族を保護しようとしてディンカ族民兵?と戦闘になるのも、当時のジュバ周辺の状況からちょっと考えにくい(まあ、確かに政府軍のSPLAは国連を嫌ってはいたが)。とはいえ、それを言うと話が膨らまないのでそこは譲るとしても、その後、派遣施設隊長程度の力で交通事故死で隠蔽するというのが100%出来っこない。遺体がある古川隊員は目をつぶるとしても、行方不明となった伊藤隊長のことも交通事故死で公表、って遺族からすれば遺体は?ってなると思うが・・・。伊藤隊長は更にその後、自力でスーダンまで脱出して現地日本人の助けを借りて帰国するというスーパーマンぶり。監督は政府軍と反政府軍の支配地域が南スーダンでどうなっているのかちゃんと分かっているんだろうか?更にスーダンと南スーダン国境がどういう感じなのかも・・・。
他にも帰国後、神崎1佐が将補に昇任しているのはいいとして、何故か将補のポストがない新発田駐屯地に所属?しているかのようだし、おまけに駐屯地夏祭りの招待客?として事件に巻き込まれる米海兵隊?少将が何者なのかも分からない。統幕から直接、神崎将補に命令、指示がくるのも「?」だし、ストーリー的に必要なのは分かるが、(観客は詳しくないだろうと思っているのか)あり得ない、若しくは想像の設定、描写が多すぎて正直、失笑するしかなかった。
まあ、「現実的でない」部分は映画上の表現として目をつぶるとしても、監督はどの程度、南スーダンや自衛隊のことを考証したのか疑問なところはある。パンフレットには元派遣隊員(確か3佐だったと思うが)のコメントがあったようだったが、その方はこの映画を見て不思議に感じなかったのだろうか?個人的には「自衛隊をバカにしているのかな?」と思わないでもなかったが・・・。
それとも日本政府と自衛隊を悪者として描きたい、ということも含まれていたのかな?
因みにこの映画が描くまでもなく、これまでの過酷或いは特殊な勤務経験でPTSDを発症している自衛隊員がいる、いたのは事実なようだ。古くは(その概念も無かった)日航機墜落事故での災害派遣現場、阪神淡路大震災、東日本大震災での災害派遣等々、これまでの海外派遣中でもイラク派遣においては緊張を強いられる場面があったとも聞く。そういった経緯を経て、自衛隊もPTSD対処の施策を取り入れていることは付記しておきたいと思う。

ジョン・ドゥ