「うーん、惜しい・・・【11/11加筆修正】」火の華 LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)
うーん、惜しい・・・【11/11加筆修正】
南スーダンの「戦闘地域」での「交戦」による死傷、および防衛省によるその日報の改竄・隠蔽という、実際にあった事件をモチーフにしたアイデアは非常に良かった。
あれで当時の稲田防衛大臣は辞任に追い込まれたのだ。
実戦の恐怖と仲間の死に直面しながら帰国した生存者には箝口令が敷かれ、亡くなった隊員は「現地での交通事故死」と扱われた。
その遺族や生存者にも充分な補償やケアを与えられなかったというのは事実かどうか確認していないが、劇中ではそのように描かれた。
その仕打ちに対する復讐としての元・自衛隊員たちのテロ、という設定も、今までの邦画では見られない刺激的な設定だ。
割と面白そうな設定なのに大手配給ルートで流れない理由がここにある。
テーマがセンシティブ過ぎるのだ。
もしこの映画が話題を呼んで上映館が拡大したとしても、ミニシアター系ネットワークの域を出られないだろう。
映像として、現代戦で自衛隊が戦闘に直面し、人間に向かって実弾を発砲することを生々しく見せられることは、けっこう突きつけられる。
まさに「今、そこにある危機」の映像化だからだ。
「自衛」であろうが何だろうが、ひとたび戦闘の口火が切られれば、綺麗事ではなく要するに殺し合いに過ぎない。
PKO、平和維持という言い換えでオブラートに包まれてしまうが、その現実を直視しなければならない。それが
「もし相手が少年兵だったら、先に引き金を引けるか?」
という象徴的な台詞に表れている。
だから、そこは『バッド・ランド』や来年1月に公開予定の『ウォーフェア』のように、もっともっとリアルでも良い。いや、リアルで「あるべき」だろう。
テロ首謀者の元隊長が終盤、山中の廃墟アジトから映像配信で「平和ボケした国民よ、目を覚ませ」などと紋切り型の檄を発している場合ではない。
むしろ南スーダンでも、日本の山中でも、徹底的に「自衛隊」が発砲しまくっている映像を作るべきだった。サバゲーの実況ではないのだ。
そのおぞましい現実(のように見える映像)に鑑賞者が直面することから、「平和とその維持」についての悩ましくも真摯な議論がスタートする。
---------------------------------------------
主演の山本一賢ほか、役者さんたちは好演。
ただ、南スーダンから帰国後の展開や設定については、他のレビュアーさんが指摘している通りフィクション構築の甘さが散見される。
特に私は中国人マフィア?と女性政治家の関係がよくわからなかったし、島田(演:山本)に銃を組み立てさせる裏社会半グレ?の位置づけもよくわからない。
これを荒唐無稽と捉えるか、エンタメの範囲の飛躍と捉えるかは、観る人それぞれの感じ方によるだろう。それも限度があるけれど。
だから「うーん、惜しい・・・」のです。
