「唐傘よりはわかりやすいけど、知識ゼロではさすがにしんどいので語句の予習はしておこう」劇場版モノノ怪 第二章 火鼠 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
唐傘よりはわかりやすいけど、知識ゼロではさすがにしんどいので語句の予習はしておこう
2025.3.15 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(74分、G)
大奥に潜むモノノ怪を退治する薬売りを描くアクション映画
監督は中村健治
脚本は新六角
物語の舞台は、江戸時代の大奥
前作にて、モノノ怪・唐傘を打ち破った薬売り(神谷浩史)は、いまだに大奥に何かが潜んでいることを感じ取っていた
広敷番の坂下(細見大輔)は彼に目を配るものの、薬売りはそれを出し抜いて勝手に大奥に入ってしまう
大奥では、前回の騒動によって歌山家は年潰しとなり、新しい御年寄には大友ボタン(戸松遥)が抜擢された
ボタンは大奥のしきたりに従って、天子様(入野自由)の夜伽の相手は隔日に戻すように命を下す
天子様の寵愛を一心に受けていた時田フキ(日笠陽子)は納得がいかなかったが、御年寄の決定は天子様の決定でもあり逆らうことはできなかった
物語は、そんなフキが懐妊するところから動き出す
老中の大友(堀内賢雄)は「火種」だと感じ、奥医師の野間玄琢(佐藤せつじ)と坊主の長寿(斉藤貴美子)にあることを言い渡す
だが、その行動は、大奥に潜んでいたモノノ怪を呼び覚ましてしまうのである
映画は、大奥のパワーゲームの中でも家柄による争いがメインとなっていた
名家と町民の出の立場が逆転することを恐れた老中がフキの子どもをダメにしようとするのだが、モノノ怪の登場によってそれが阻まれてしまう
だが、モノノ怪の本意が読めない薬売りは、なかなか「理」までたどり着くことができない
ことの発端は20年前のこと、当時の御中臈だったスズ(杉山理穂)が大奥で焼け死んだという事件があった
今回も同様に火種に襲われた者どもは灰になるまで焼き尽くされるのだが、火種が襲うのはフキの子どもを殺そうとする者たちばかりだった
そして、薬売りは「20年前の行動に後悔を持っていたスズの本心」を知ることになり、ようやく理へとたどり着く
火鼠は大奥を守ろうとしていたことがわかるのだが、自然に派生していく展開を人の思惑で歪めてしまうことへの怒りがあったのだろう
また、そんな歪みを受け入れてしまったスズは自分を恥じて、それが繰り返し起こらないことを願っていたようにも思えた
本作は、3部作の中編のようで、次作は製作中となっている
前作の主人公級のアサ(黒沢ともよ)はほぼ登場せず、今回はフキとスズが主人公級となっていた
おそらくは、そのモノノ怪ごとに中心人物が変わると思われるので、続編ではしきたり通りに戻った夜伽によって生まれた子どもが関係するのかな、と思った
それが誰になるのかはわからないが、それは次作のお楽しみということで良いのではないだろうか
いずれにせよ、ある程度の大奥の知識が必要で、単語の予習も重要だと思う
言葉を知らないと音が漢字に変わらないので、それによってセリフの内容がわからないところがある
記憶によれば前作のパンフには語彙集があったと思うし、今作のパンフにはほぼ全員の人物相関図があるので、サクッと理解したい人はそれに目を通してから観ても良いのではないだろうか