劇場公開日 2025年9月26日

「負けてからどう這い上がるか」オオムタアツシの青春 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 負けてからどう這い上がるか

2025年10月5日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

幸せ

■ 作品情報
かつて炭鉱の町として栄えた福岡県大牟田市を舞台にした人間ドラマ。人生につまずき、岐路に立たされた大人たちが、ある少女との出会いを経て再生していく姿を描く。監督は瀬木直貴。脚本は松本稔。主要キャストは筧美和子、福山翔大、林田麻里、陣内孝則、SHIGTORA、たかお鷹など。

■ ストーリー
念願の洋菓子店開店を目指し大牟田市にやってきたパティシエの五十嵐亜美が、共同経営者となる友人に見放され、途方に暮れる。そんな折、下校中に怪我をした小学生の古賀日菜子に遭遇し、偶然居合わせた青年・高杉司と車上生活を送る初老の男性・樋渡静男と共に日菜子を病院へ連れていく。この偶然の出会いをきっかけに、亜美は店の内装の手伝いを司と静男に依頼し、開店に向けて準備を進めるが、司と静男もそれぞれ大牟田へ来た隠された過去を抱えている。これらの大人たちが、病気を患いながらも前向きに生きる日菜子との交流を通じて、少しずつ絆を育み、前向きに成長していく姿を丁寧に描き出す。

■ 感想
人生につまずいた亜美、司、静男という三人の再生の物語を中心に据えており、偶然の出会いが互いに影響し合い、それぞれの人生を見つめ直していく姿が温かく描かれている点が印象的です。

正直なところ、全体的にはやや淡白な印象は否めません。中盤までは丁寧に物語が紡がれるものの、キャラクターの内面や抱える問題への掘り下げが浅く感じられます。そのため、終盤に一気に盛り上げようとする展開はそれなりに胸にこみ上げてくるものがあるものの、いま一歩、大きな感動に繋がらないのが惜しまれます。

また、三人の間を取り持つ役割の少女・日菜子には、母子家庭、糖尿病、格闘技、いじめといった多くの設定が与えられていましたが、それらが十分に活かされているように感じられないのも残念です。彼女の純粋な思いや生き方が大人たちの心を揺さぶったことが実感できるような描写が、もう少しあるとよかったです。

あと、焼き鳥屋がしれっと譲渡されて繁盛店となったような雰囲気を醸していましたが、せめて裏でこっそり手筈を整える静男のカットは欲しかったです。半グレたちも、その後はどうなったのでしょうか。司に静男のことを連絡するという謎の善行を見せるのですが、これを機に改心したのでしょうか。そんなはずはないと思うのですが…。

こんな感じで、全体的には良くも悪くもないといった印象ではありますが、大牟田市の地域振興には大いに寄与していると感じます。人生につまずいた人々が再び立ち上がる姿に、大牟田市そのものの再興を重ねているようにも受け取れます。であるならば、お祭りシーンだけでなく、もっと街の魅力を伝える描写があるとさらによかったのではないかと思います。

おじゃる
uzさんのコメント
2025年10月5日

なんか、どの問題もしっかりした“解決”が描かれてないんですよね。
雰囲気や全体のつくりは悪くないのに、非常に勿体ない作品でした。

uz