「すべてがプレイに見えてしまうのは、心が濁っているからなのだろうか」ベイビーガール Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
すべてがプレイに見えてしまうのは、心が濁っているからなのだろうか
2025.4.1 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年のアメリカ映画(114分、PG12)
大企業のCEOとインターンが真逆の支配構造の中で愛欲に溺れる様子を描いたスリラー映画
監督&脚本はハリナ・ライン
原題の『Babygirl』は、劇中では「良い子だ」と言う意味で使われていた
物語の舞台は、アメリカのニューヨーク
ロボットシステムを用いたオートメーションを実現させた「テンサイル社」では、インターンを導入し、積極的に活動を促していた
今回のインターンは、社員がメンターとなって相談役となって教えることになっていて、CEOのロミー・マシス(ニコール・キッドマン)もそのリストに入っていた
ある日のこと、ロミーは道端で大型犬が暴れているのを目撃する
人に危害を加えるかと思われたが、偶然そこにいた若者があっさりと大型犬を手なづけてしまった
その若者は、ロミーの会社のインターンのサミュエル(ハリス・ディキンソン)で、彼はメンターリストからロミーを見つけて、彼女を指名していた
物語は、ロミーが渋々サミュエルのメンターを引き受け、そこで過ちが起こってしまうところから動き出す
場の雰囲気に流されてキスをしてしまったロミーは、その感情を否定するものの、自分の立場を危うくしてしまう
サミュエルは破滅願望があるのかと聞くものの、実はロミーは「被支配衝動」を持っていた
サミュエルはそれに気づき、四つん這いにならせたり、そのまま皿のミルクを飲ませたりしていく
そんな中で、性欲が爆発し、これまでにないオーガズムを感じることになるのである
これまで、無理難題を突破して会社を大きくしてきたロミーだったが、当初は「その気の強さ」が採用の理由だった
その後、企業から飛び出して今の地位に着くのだが、その過程を知るのが取締役になっているセバスチャン・ミセル(Vitcto Slezak)だった
彼はロミーとサミュエルの情事を知って揺さぶりをかけるものの、ロミーはそれを綺麗に跳ね除けている
もしかしたら、ロミーの反発力を知る彼が仕掛けたのではと思わせたりもする
ロミーと夫ジェイコブ(アントニオ・バンデラス)との性的不仲まで知っているとは思えないが、それが遠因であるとは思う
そこから、若い男が登場し、ロミーの本質を看過したという流れを、サミュエル本人の資質で行ったと言うのは無理があるようにも感じた
メンターにロミーを組み込んだのはマーケッティング部のヘイゼル(レスリー・シルヴァ)だが、そのステージを用意した黒幕がいて、それがさらに会社を強固にするための経営判断だとするならば、この老人の先見の明は鋭いなあ、と思った
いずれにせよ、一連の事件もロミーの反発心を利用したプレイのようにも思えるし、サミュエルもそれに巻き込まれただけのように思える
彼自身がいきなりCEOに対して不躾な発言をするのも違和感があるので、誰かのアドバイスだったのかもしれない
状況を利用してロミーを追い詰める役割には秘書のエスメ(ソフィー・ワイルド)も加担していたが、彼女の言動も個人の考えのようにも思えない
そう言った意味において、壮大な仕掛けがあって、それぞれが必要な役を演じたのだろう
映画で劇が引用されて、それが自分に重なって見えるなども含めて、凝りに凝ったシナリオをミセルは仕組んだのかな、と思った