LOVEのレビュー・感想・評価
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結局、人間は一人ぼっちなんだ。だから自由なんだ
ダーグ・ヨハン・ハウゲルードという初めて名前を伺うデンマークの監督作が3作続けて公開となりました。北欧の映画には何か惹かれるものを感じる僕はまず第1作目に挑戦です。
もう若くはない人々の恋愛と性にまつわるお話なのですが、北欧の人々は自身の性的生活をこんなに明け透けに本当に話しているのかなと戸惑いながらも引き込まれる会話劇でした。そして、「結局、人間は一人ぼっちなんだ。だから自由なんだ」と言う事が秋風に吹かれる野草の様にスッと立ち上がって来る切なさが心地よかったです。この人の作品、ちょっと癖になりそうな予感だぞ。
PS. 同性愛者の為のマッチングアプリというのがある事を初めて知りました。確かにそれはITの活用がピッタリだなぁと感心した次第。
3つの中ではこれが一番好き
他の2つは座ったままの会話がメインな印象だったけど、これが一番動きがあったんじゃないかな、場面転換も多いし。
しかしながら、果たしてこれは『LOVE』で合ってるのか?
『SEX』の方が、2組の夫婦の在り方をじっくり話していて、こっちの方が直接的な描写もあり、マッチングアプリだったり、前立腺云々だったり、性に関する比重が大きいような印象。
まぁ、トールのビョルンへの献身は愛か...。
癌を宣告された男が、質問がなかったことが、馬鹿にされてるように感じるからという点に、なるほどなと腑に落ちた。
病気について、いまいちピンとこない中での質問なんて、お医者さんからしたら頓珍漢なもんだろうけど、そんな言い方しないでよと思うこともある。
LOVEに関係ないトコに一番共感した。
3作品に共通するのは、それぞれが自分の考えをきちんと話し、相手の話も聞いて、決して声を荒げたり遮ったりしない。否定的な意見や反論はあっても、拒絶することはないので、落ち着いて観ていられる。
激しい起伏もないのに、眠気が来ない不思議な3部作。
そして何故か3つとも謎のコンテンポラリーダンスが差し込まれる変な3部作。
なんだかんだで制覇できた。
タイトルなし(ネタバレ)
泌尿器科の女医マリアンヌ(アンドレア・ブライン・ホヴィグ)と、ゲイの看護師のトール(タヨ・チッタデッラ・ヤコブセン)、それぞれの愛の風景。
ふたりの恋愛エピソードは交差することはないのだけれど、通勤フェリーの上や病院で重なり合う・・・
といった物語。
『DREAMS』も面白かったが、本作も相当面白い。
演出のリズム感がいいのだと実感。
風景カットの挿入が上手く、映画のリズムを整えている。
小津映画に似てるかも、と思ったりもした。
恋愛エピソードをみていくと、
「誰かに求められていること、それに応えることが「愛」なのだろう」
というテーマが浮かび上がって来る。
オスロ3部作の中で、オスロの登場するシーンは少ない(通勤県内の離島とフェリーでの話が中心)のだが、最も「オスロ」を意識する映画となった。
冒頭と巻末にオスロらしさが満載しているからだろう。
その分、前2作に見られたキリスト教臭は薄かった。
『SEX』『DREAMS』『LOVE』の順に観ると(タイトルもその順に出てくるので)、「オスロ、3つの愛の風景」ということがより深くわかるような気がしました。
医療関係者の話としてみたら面白いと思います
泌尿器科の女性医師と男性看護師、そして精神分析医の3人の人間関係として素晴らしい。気負わず皆が自分の役目を果たしているし、皆が真面目で優しい。現実には本当にいろんな人がいるだろうけど、こんな感じで仕事ができているなら理想的だと思う。
私も精神分析医の話が好きだった。人生に期待しすぎて壊れそうになっている人を見るとしっかりしろって言いたくなる。精神科医も人間なのねと感じる。
個人的には先週見たDreamsの方が好きだったけど、Loveも好きです。
怖いと感じたのは出会い系アプリで知り合った相手とセックスするのは無料の売春婦とやるようなものというセリフ。私はカジュアルセックスは基本的に病気が怖い世代だからこのセリフは本当に納得しました。AIDSという病気が見つかった頃に大学生だったので。今の若い世代の皆さんはどうなのでしょうか?
セックスあるいは愛の形を模索する人々
ノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督が首都オスロを舞台に描くトリロジー「オスロ、3つの愛の風景」の第2作。
自分的には3本の中でダントツに好きだった。
泌尿器科の医師マリアンヌとゲイの看護師トールが、それぞれにセックスあるいは愛の形を模索する。これはボーダーレスで普遍的な作業。ジャパンのジジイも違和感なく見ていられる。
否定することなく受け入れるのがいいんだろうなあ。
なんか知らんけどいい気分になって帰路に着いた。
こういうのを人生讃歌と言うのだろう。
ちなみに3作のテイストはかなり違うけど、動きの少ない長めの会話劇をオスロの街の美しい景観と素晴らしい音楽で繋ぐところは共通。オスロが好きになること必至の秀逸なインタールードだった。
リアルな愛と恋の会話劇
ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督作品の初日本上映&北欧の監督ということで
興味をもったので鑑賞。
会話劇&群像劇であり、マリアンヌ(泌尿器科医)とトール(看護師)を中心とした
展開だが、それぞれが出会う人との価値観の違い、思想の違い、など、
違いが強調されていると思う。
それは恋愛関係になった人や刹那的な肉体関係を持った人とも、やはり異なるのだ。
みんながそれぞれ独自固有で同じではないながら、恋愛になるその重なっている範囲や
体を重ねるその瞬間だったり、合致するところもある。
だが、基本的に人はそれぞれ違う。違いながらも合うところに救いだったり癒しだったり
居所だったり、そういう安心感を生むのだろうと思う。
それにしてもオスロの夜景のなんと美しいことか。
日中の街にしても、北欧の色合いがスクリーンから感じられ、魅入ってしまった。
エンターテインメント的な驚くような出来事はひとつもないが、
日常の数日間を切り取って見せているがゆえ、実に生々しいというかリアリティを感じる
作品に感じられ、登場人物には虚実があるのだろうが、スクリーンに映し出される物語は
真実しかないのだろうと思う。
他2作も是非鑑賞したいと思った。
3部作の中で一番性に合った「愛」すべき逸品
医師のマリアンヌは患者に対しての寄り添いが足りないと同僚看護師のトールに指摘されてしまう。友人に紹介されたオーレにはなんとなく惹かれるものの、彼の子供や前妻との関係に煩わしさを覚え、躊躇してしまう。他人に誠実でありたいと考えながらも一歩踏み出せないマリアンヌ。
そんな現実的な彼女が、オーレの依存症の前妻と心を通わせていくシーンには、驚き(日本ではあり得ない)とともに、好感を覚えた。この新たな化学変化をきっかけに、オーレとの関係もうまくいきそうな予感が。
一方でトールは、気ままな恋愛を楽しんできたようだが、年配の患者ビョルンへの献身的な愛に目覚めていく。職業意識を逸脱しているようにも見えるが、他人にとても優しいトールの生来の性格は、誰にも否定できない。
依存症の前妻は音楽療養士、ビョルンは精神科医の設定で、いづれも他人を癒す立場なのに、いざ自分事となるとうまく対処できていないのが面白い。
そしてエンディング。
マリアンヌとトールそして仕事の悩みが吹っ切れた自治体職員のハイディを含めたシーン。「自分らしさの呪縛」を突き抜けた、自然体の3人の希望に満ちた情景に、ほっこりと暖かな気持ちにさせられた。
フェリーから見る夜景がとにかく素晴らしい。街は光に溢れ、船着場もおしゃれ。そして船上から見る月を突然写すこの美的感覚!
フェリーがマッチングアプリの出会いの場みたいになっているのはどうかと思ったが、こんなにロマンティックな雰囲気なら、人恋しくなるのも分かる気がした。
さらにエモーショナルな音楽が作品全体のムードを最高に盛り上げている。作曲のPEDER CAPJON KJELLSBY(すみません、読み方わかりません)の功績がとても大きい。
人はもっと自由に生きていいし愛していい
前立腺の深イイ話
dreamsと同じ監督と思えないほど、特にゲイの生態をよく描きえて...
dreamsと同じ監督と思えないほど、特にゲイの生態をよく描きえていた。特に前立腺がんがアナルセックスに影響を与えるとは知らなかった。取材をよくしていると思う。エイズへの恐怖等。
とはいえ、この監督は、やはり詰めが甘くて、重要なこの看護師の彼が何を考えているのか結局よくわからない。
出会い系アプリが埋め込まれた日常をこんな風にうまく描いたものはあまりない。しかもそれとフェリーという対面状況をうまく組み合わせている。
冒頭もコメディ。
とはいえ、いわば性的ジェンダー的自由をやってみた映画なのか、監督に興味があるのか。
奥の深いはなし
感傷的で慈愛に満ちていたような─
一連の3部作の最後の観賞。3つの中では、台詞などには哲学的な要素が少ない気がしました。なので、恋愛模様を楽に堪能できるかなぁなんて思ったのですが、設定や絡み合う事柄が結構特異だったためか意外とムズいと・・・
離婚して子供や前妻との交流も頻繁にある男性が省庁の役人を介して女性医師と出会い交際に進展したり、男性看護師がマッチングアプリを使用して男性交際相手を探して男性医師を選び出しそれが紆余曲折して、交際というか交流というかあるいは別のもの・・・に発展していったり、とにかく色んな要素が盛り込まれていました。巻き起こる出来事が感傷的なものが多くて、フリーラブという要素を多分に含んでいながらもそれがかえって・・・んーどうなのかなぁ・・・という展開が多かったように思います。難解さは感じませんでしたが、難しいところは大いに感じました。実を結んだイベントもなんだかよく分かりませんでしたし・・・
3部作だからといって繫がりとか関連性は全く感じませんでした。どれを見ても見なくても、またどれから見ても全く問題ないように思います。とはいえ、どれから見るかによっては、それぞれの作品の印象は違ってくる気がします。自分はDREAM→SEX→LOVEの順番で、台詞や語りが多かったとはいえ構造がシンプルだったDREAMから見たせいか、あとのSEXとLOVEが難しかったり重々しく感じてしまった気がします。同時に最初が非常に良かったためあとのものを期待しすぎた感があって、ちょっと物足りなさを感じてしまったし─。順番が違っていればまたその見方は変わったのかもしれません。いずれにしても、3つ見ておけばどれかは楽しめるような3部作でした。まぁ全部見るのは大変というのであれば適当にどれか1つ選んで見てみても、それを存分に楽しめるような気もします。
善悪の彼岸
「愛」と呼ばれるものを探して
2024年。ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督。ノルウェーでつくられた三部作映画の第二部。泌尿器科の女性医師と男性看護師。気の合う二人だが、病院の外で偶然遭遇したことをきっかけに、お互いに恋愛事情について語り合うことに。結婚制度に疑問を持つ女性医師は性の相手を求めながらも社会的な関係からは逃げ腰。同性愛者の男性看護師はマッチングアプリでの刹那的な関係を繰り返している。お互いに微妙に影響を与え合いながら、それぞれが「この人」という人と出会っていく、という話。
話の複層的な展開がすばらしい。女性医師にはまじめな市役所職員の友人がいて、その友人がオセロ市の記念式典を任されていて政治と市民生活の関係に悩むとか、女性医師が思い染める男の元妻がアル中で社会との関係に困難を抱えているとか、男性看護師が思い染める男がニヒルな精神科医でエイズを患うとか。主人公二人はタイプは違うが人間関係を大切にして、逃げないところがポイント。苦手な相手からコーヒーを誘われて断らないとか、苦しそうな人に自然に手を差し伸べるとか。これはノルウェー人としては普通のことなのか、この二人の特別にケア的なキャラクターなのか。この態度が事態を好転させていくのだが。
オスロからフェリーで通勤圏内の島との往復が展開にリズムを与えていてすばらしい。オスロ市庁舎の屋上や、島の住宅の屋上など高低差を生かした景観も美しい。
自由で平等で豊かな国ノルウェーのノルウェーの光と影が見えてくる
図書館司書として働きつつ、小説も書き、映画監督でもあるという多才なハウゲルード監督が、ノルウェーの首都オスロを舞台に撮影した3部作の2作目。3作の中では受賞歴的には一番地味そうな1作だ。公開2日目、この作品は1日1回の上映。都内では2館のみの公開なのだが、映画館は6割くらいの観客入りだった。
美しいオスロの街並みを舞台に、現代ノルウェーの現実をリアルに、知的に、温かく切り取った傑作だと思う。意欲的な企画だ。配給のビターズエンドには拍手を送りたい。北欧の文化や社会にほんの少しでも興味があるなら、観ておいて損はないし、大人のドラマとしても、非常に面白かった。「大人」を自認する人なら、絶対楽しめるはず。オススメしたい1作です。残りの2作も早くみたくて仕方がない。
まだ1作見ただけで、監督のことも無料配布のパンフレットで見ただけだから即断はできないけれど、ケン・ローチ作品を思い出した。その国特有のリアルな今を描き出している。同時に、普遍的なテーマとして、私たち日本人も共有できるという意味で。
ケン・ローチはイギリスの「社会制度の欠陥の告発」といった視点が強いけれど、このハウゲルード監督の作品は「民主主義の一つの理想の達成と、それに伴い個人に求められる負荷」を描いている。素晴らしい社会で生きることは、同時に非常にしんどい側面もあること、たゆまぬ努力・個人の自律を求められること、対話のスキルと努力が必要なことを見事にドラマに昇華させている。
この似ている二者の違いは、イギリス(および多くの先進資本主義国)と北欧ノルウェーの社会の違いも反映している。その点だけでも、この監督の作品は注目に値すると思う。
僕もこんな社会で暮らしてみたいなと思ったし、ノルウェーでは僕のような専門職肌のタイプは生きやすいはずだとも思った。また、映画を観ていくうちに「日本ならこんなことあり得ない」というポイントがいくつも目についた。その点について、ざっとネット検索してみると、確かにノルウェーの社会の特質を示しているようなので、その点をいくつか書いておこうと思う。
全体的な印象としては、非常に意識的に合意形成を重視して、民主主義の一つの理想を実現しようとしている国で、それが物語の基調を作っているという点だった。
まずは、舞台のオスロ。首都であるのに雑然としたところはなく、その中心部の港で登場人物たちは海に入って泳いでいる。そんなにきれいなはずはないと思ったけれど、現実のオスロでも夏は港や海で泳ぐのは普通なのだそうだ。水質汚染が酷かった時代もあったけれど、海や森を汚さない社会哲学から、徹底した環境改善で美しい海を取り戻したのだそうだ。
そして、登場人物は、海を渡って通勤してきている。自宅は美しい海が見える一軒家だ。看護師など普通の専門職の人がそんな家を買うのは日本なら絶対無理だけれど、住宅市場が投機的にならないような政策もあって、背伸びすれば手に届かないこともないらしい。その背景には、高い税率と再分配によって格差の少ない社会であることや、オイルマネーを国が管理して高い社会福祉を実現していること、そして、労働時間が短いのに、平均年収が日本の2倍以上という羨ましい現状もあるようだ。
あと、この映画の登場人物たちが、全員なんらかの専門職であること。そして、所属する組織の規範に従うというより、それぞれが専門職の職業倫理によって行動しているように見えた点。
これも現実でもかなりそうらしい。映画には登場しなかったけれど、経営者だって組織の支配者ではなくて一つの専門職。だから、企業もフラットな組織で、意思決定にあたっては、対等に議論をするという土壌もあるようだ(経営の論理、資本の論理ばかり優先して、短期利益ばかり追求するから、生産性も高くならないのだ。日本の経営者はこの映画を見るべきだなどとついつい言いたくなってしまった)。
この映画ではさまざまな職業の人が集まって、そこには上下関係など一切なく、フラットに語り合うという場面が何度か出てくる。失業中の人だって、別に今は家庭の事情で一時休業中という感じで、引け目はない。
その語り合い方も、日本人の感覚とはずいぶん違う。まず徹底的な自己開示。この映画がLOVEがテーマだからということもあるだろうけれど、自分の性的志向まで含めて、あけすけに語る。これも、さらに上の高齢者世代ではそうではなかったらしいことも描かれるから、意識的に作り上げた文化であり、現代ノルウェーでの人とのつながり方なのだ。
そして、相手の意見には表立って反対しないというのが、日本的リベラルな他者尊重の態度だと思うのだけれど、この映画では、相手を否定することに配慮を見せつつも、異論を結構はっきり言う。一人一人が自分らしさを大事にしているとも言えるけれど、でもその話し合いの中では、「ここまでならOKだよね」という自分の価値観を検証し、自らを振り返っているようでもある。
主人公の行政に勤める友人も、フェミニズム的なイベントを実現しようとしていたが、「一部の人のためにやるのは行政のイベントには相応しくないんじゃない?」というようなことで何度チャレンジしても企画が通らなかった。そして、最後には「私が間違っていたかも」と認めて、企画の方向性を練り直す。
自分らしさを常に見直し、更新し続けるという態度も、一人一人が持っていないと、合意形成で進める社会では生きられない。
そして、その「自分らしさ」尊重の帰結だと思うけれど、離婚が多かったり、恋愛は自由だけれど、ずっと続く気持ちではないと現実も受け入れるというような考え方を登場人物たちは共有しているようだ。
家族は大事、パートナーも友人も大事、だけれど、自分らしさが一番大事という優先順位は揺らがない。だから、それはとっても孤独なことでもあるはずだ。その孤独な人たちが、この映画では愛を求めて彷徨っている。
同時に、だからこそ、そこで示される愛情というのは、共同体の規範とか道徳とか、社会的にそうすべきだからということではなく、純粋に愛による行為であるという美しさがある。最後の方で同性愛の介護士が、「もう僕には(性的な)魅力なんかないんだ。君も同情してくれなくていい」というシニアの精神科医に「もっと信じてもいいんだよ」という言葉をかける場面にも、人間の愛を信じるというようなメッセージが込められていると思った。
映画としてのスケールは小さいけれど、そこに込められたものはとても大きく豊かなものだ。まだ他にも考察したいけれど、残りの2作もみるつもりだから、ここで終わりにしておきます。
初めは啓蒙映画かと思った!
この映画の前に「SEX」を見ていたのがよかったのか慣れたのか、でも「LOVE」はやはり異なる映画でこれまたとても面白かった。
最初のシーンでハイディ(主人公マリアンヌの女友達)がオスロの記念碑彫刻のガイドをする。数々の彫刻をインテリであるハイディが説明するのを自分は観光客として聞いた。彼女の語り口は、ジェンダーやフェミニズムの点で解放されているオスロの歴史と現在の自慢話と啓蒙活動に聞こえた。だからちょっとうんざりした。果たしてそれは街の周年行事のハイディによる提案プレゼンだった。聞き手は観光客でなく自治体の仲間で、結果、評判悪くハイディ落ち込む。なんだかインテリが滔々と話すのが上手い(或いは好きな)北方ヨーロッパ的で、この映画はどこに行くの~?と心配になった。
でも心配無用之助だった。テーマは出会い、婚活、特定のパートナーの必要性可否、仕事、結婚と離婚、子どもや元パートナーとの関係、病気、孤独。主人公のマリアンヌ(女性)は医師、もう一人の主人公は看護師のトール(男性)でマリアンヌと同じ職場。マリアンヌは優秀な泌尿器科の医師、患者と看護師の話に耳を傾け、テキパキして笑顔で誰とも安定して話せて独身。トールは看護師として患者の不安や心配や思いをよく見ている。トール自身がゲイなので、患者がゲイの場合の彼らの不安や問題をマリアンヌに話し提案する。そんなことができるのも、映画の最初からでなく色々あってから。だから映画を是非見てください!
色々な職業の大人の男女が現れる。とにかくそれぞれが互いとよく話す。会話ってこうなんだなあと楽しく温かく羨ましく思った。誰か一人が偉そうにしたりもなく、誰か一人をおだてることもしない。誰も怒鳴らない、決めつけない、耳を傾ける。そんな会話の中に発見があり前に進むヒントがある。
自分のモヤモヤ感を正直に受け止めているので、拙速に何かを決めない、焦らない、そして試してみる勇気と好奇心もある。それがマリアンヌ。マリアンヌをそんな方向に関心を持たせたのがトール。生き方、人との付き合い方にはいろんな選択肢があるんだ。トールに優しさと愛おしさを覚え心が温かくなった。
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