ブルータリストのレビュー・感想・評価
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精巧に作り込まれた架空の天才建築家の物語
35mmフィルムによる圧倒的な撮影とアメリカ映画とは思えない欧州アート映画の手触りが長尺を圧縮してくれる
事前知識0で見るとやや取っ付き難い作品ですが、アメリカ映画とは思えない構造を持った作品で、横に流れるオープニングクレジットのモダンさに、まず圧倒されて引き込まれて、架空の人間伝記ドラマとしての出来は高水準で、特に主人公である建築家ラースロー・トートを優しさとダメさとクリエイターとしてのエゴを体現した主演のエイドリアン・ブロディの素晴らしい演技(喫煙姿の粋さ)や存在感にもウットリ出来る。
近年は喫煙場面があるだけで、嫌悪を持つ人も多いが、この映画の舞台となった時代は男性の喫煙率は確か7割あったのと、紫炎を燻らせる映像の光も含め美しい。
ネタバレあり
この作品の一つの見どころに撮影とロケがあり、特に大理石の採石で有名なイタリアのフィレンツェから近いカッラーラ山の場面の美しさと迫力が、まだまだCGでは表現が、難しい部分だと思う。
ここで起きる惨劇が、物語に影を落とすが、ナチスの迫害から逃れたユダヤ人であるトートを、おそらくアメリカに移住してきたドイツ系移民の子孫である富豪ハリソン・ヴァン・ヒューレン(ドイツ系の名前が入っている)が、レイプする場面は、非常に暗示的で明らかに告発的でもある。
あとハリスンは、黒人を露骨に差別しており更にトートの奥さんも悪名高い絶滅収容所として有名なダッハウ強制収容所の生き残りだったり、姪であるジョーフィアはイスラエル建国の為に行動するなどユダヤ人の受難を強調してる。(でも今のイスラエルの非道な行為を容認出来ないけどね)
レイプ(蹂躙)が、国や地位を象徴して関係性を暗示する演出は映画に多くあり、有名な作品だと『アラビアのロレンス』(1962年)のイギリス人のロレンスがトルコ人の将軍に蹂躙される場面やジョン・ブアマンの『脱出』(1971年)における田舎の土着民が、都会人を蹂躙するところやアフガニスタンが舞台の『君のためなら千回でも』(2007年)でも、アフガニスタンの伝統芸でもある凧揚げ(のこ作品の原題はThe Kite Runnerカイトランナー)の達人のハザーラ人少年が、対立するパシュトゥーン人に蹂躙されるのを、過去に多くの国や近年のソ連やタリバンなどに蹂躙されたアフガニスタンを投影されているので象徴的に使ったも原作者が言っていた。
もう一つの特徴として最近では非常に少ない35mmフィルムによる撮影をしており、冷調な深みのある圧倒的な撮影とアメリカ映画とは思えない欧州アート映画(個人的にはポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ作品を想起する)の映像で語る突き放した見せ方や手触りを、持っておりメジャー作品としては取っ付き難い部分がありながら、215分の長尺を圧縮してくれる演出を見せてくれる力作である。
余談
ちなみにいくつかの記事に、本作は70ミリフィルム撮影とあるが、フィルムを提供したコダックの告知では35ミリ撮影とされており、カンヌなどの上映用プリントが70ミリであると明記されているのでそちらを参照してます。(不確認ですがクレジットにあるコダックの文字が一部消されるている様子)
長い割には狭い世界の話
率直に、予告編や事前の触れ込みほどではなかったかな
そして内容的にも時間は半分でも充分すぎるくらいで、すごくヒマで時間を持て余していない限りキツいかもです
壮大な人生ストーリーと多くの建築作品への美学・・と思いきや、一施主との一つのプロジェクトに特化した比較的ピンポイントなお話でした
この建築家については存じ上げませんが、有能さと狂気(brutal)が紙一重のタイプなのでしょう。
アメリカ国内の戦後復興への移民の貢献、苦労や苦悩については作品を通して勉強になるが、本作は一人の視点であり、ユダヤ人全体がそうではないと考えないと要らぬ偏見を生むような気がしました。
比較的静かな作品ですので周囲の音が気になる方は、思いっきり人の少ない座席を空けた方がベターです
休憩時間に買って食べ始める方もおられますので
「何があなたのために在るのか?」「何が私のために?」そう静謐に問いかけてきます
1.
この作品は、超傑作です!!!
長いと言われる時間を全く感じさせない。完璧とも呼べる作品です。
天才芸術建築家の「生き様」をアメリカの現代史と絡めながら展開する語り口は最高です。
「天才」であることがどのような意味を持つのかを密着して見つめつづけます。その「天才」が何故に創造するのかを観客に問いかけます。
「何があなたのために在るのか?」
「何が私のために?」
2.
僕の感覚では、ビスタビジョン・サイズでしたが、
大まかにアップ・ミディアム・ロングのショットをその寄り方や引き方のカッティング編集を余りにも巧みに織り込んている為、
何の違和感もなく「大画面」の視覚インパクトを醸し出していましたよ。
何もシネマスコープ・サイズだかといっても、スケール感覚の欠ける作品は多いですから、
「ブルータリスト」でビスタビジョンを選んだ監督の意図は、
観客により親密に映像世界に溶け込んでもらいたいという一心、
作品世界で観客に共に生きてほしいという願いだと、僕は感じました。
そして、僕はそのように3時間半ほどを生きました。
繰り返しで申し訳ありませんが、見事な映画です。
ホロコースト・サバイバーの苦難の人生を描く一級の風格を備えた名作
総時間3時間35分だけど体感2時間ぐらいに感じるほど引き込まれた見事な演出とストーリー展開
途中15分あるインターミッション(休憩)が久しぶりに劇場で味わえ懐かしく新鮮、やっぱり3時間を超える作品にはこれがあるとありがたいな
ブラディ・コーベット監督がこだわった70mmフィルムで撮影された映像とビスタビジョンの画角を余すことなく映し出したスクリーンの重厚で美しいこと、惚れ惚れしました
一部限定のIMAXでは観られなかったのでシネスコサイズに上下カットされてしまうのかもと心配しましたが、ちゃんとビスタサイズの画角だったので安心しました
エイドリアン・ブロディさんとフェリシティ・ジョーンズさんの演技が素晴らしかった
超高難易度と言われるハンガリー語での会話や訛った英語、そして人生の浮き沈みや新天地での絶望感を体現する神がかった演技に強烈なインパクトを受けました
そしてそんな彼らを呑み込む資本主義国家の象徴とも言えるハリソンを演じるガイ・ピアースさんがお見事!円熟味を増し、めちゃくちゃ渋い初老の“独裁者”を凄みたっぷりに演じ、これまた強烈な印象を残します
作品を通して建設されるブルータリズム形式の“マーガレット・ヴァン・ビューレン・コミュニティセンター”はエイドリアンさん演じる主人公ラースロー・トートが自らの生涯の象徴として生み出したもの
それが明らかになった瞬間、全てのパズルが嵌まったような心打たれる感動と納得感に包まれました
建物には人の想いが宿るもの
第二次大戦後、ホロコーストを生き延び渡米したユダヤ人建築家の半生を描くヒューマンドラマ。
冒頭数分間で一気に引込まれ鳥肌が立った。215分長尺だが、音楽・映像の演出は秀逸で話にメリハリを効かせていた。劇中メロウな曲からフリージャズ・流行曲まで流れるが、セリフとサンプリングしたり、途中からディストーションが入ると、物語は一気に締まり観客を緊張させる。映像も要所でカメラが前へ疾走するシーンが入るが、各チャプターの転換点としてメリハリがあった。図書室の陽だまり、採石場の明暗、礼拝堂の灰色の静けさ、まるで美術館にいるような独特な空気感があった。
主人公のエイドリアン・ブロディは御見事。教授然の振舞いもピンチ涙目八字眉も見惚れた。建築家の職能も踏まえたクリエイターの狂気と弱さをほどよく演じていた。また主演男優賞取るだろうか。妻役フェリシティ・ジョーンズも、信仰的背景と夫婦愛を踏まえた難しい役どころながら存在感があった。寝室での二人のやり取りをどう捉えるか、も映画の見所の一つだろう。
物語は、バウハウス出身の近代建築家がアメリカ新興富裕層に依頼された多機能礼拝堂を建築するだけだが、建物には人の想いが宿るもの。例えマイホーム・工場・駅・教会でも各々に人のドラマがある。重層的なドラマの切り口が映画内で上手く機能し厭きさせない。
鑑賞後にフィクションであった事に安堵したが、戦後心身共に傷ついたユダヤ人達の、多くを語らず現実と向き合う葛藤は伝わった。映画鑑賞としては、ストーリ中心に楽しむも良し、伏線も多そうなので深く考え没入し楽しむも良しだ。
幕中やエンドロールの音楽にも工夫があり、じっくり聴ければもう一つの楽しみがあるかもしれません。IMAXでプレミアシートに座っての観賞もいいかもです!
フリージャズ
ただ‼️ただ‼️引き込まれるだけの映画‼️❓
まるで
まるで実在の人物であるかのようにユダヤ人建築家の数奇な人生を3時間半掛けて描き出す壮大な大作。
インターミッションまで入れて悠揚迫らざる筆致で、しかもビスタサイズ、ってさすがA24。他では出来ないわ…
もうとにかく「映画を観た!」ってのが最初の感想。
そして撮影から美術から劇伴から文句の付けようがないし、エイドリアン・ブロディもフェリシティ・ジョーンズもガイ・ピアースも鬼気迫る演技だった。特にね、あの建築はホントに建てたのかな…?
不思議だったのはエンドロールの音楽。なんで?と思ったが、ホントはフィクションだってのが関係してるのかな?
「ホントだと思ったでしょ〜🎵️」的な。
まぁそれにしても観るしかない傑作だったよ…
終わったー、つまらなかったー
"祖国"
配られたbrochureに騙された!
アカデミー賞大本命と聞いてた本作の先行上映があると知りワクワク鑑賞。215分(Intermission15分含む)の長丁場を乗り越え(?)観終えた後の感想は正直、残念極まりない。
前情報は一切入れず観始めたけど、観ていくうちに「なるほどなるほど、祖国を追われた天才建築家が命からがらアメリカに渡り、そこでもなおよそ者だからという理由で翻弄される人生を送ったという伝記ものなのね〜」と理解。
ラスローとエルジェーベト夫妻の愛のあり方が素敵だなーと思っていたのに最後はキメセク!?と残念な描写。自分たちの姿を少し重ねて見ていたから尚更残念だった。
しかもあとから調べたら実在しない人の話だと!?
完全なる創作フィクション!?
もーそーなったら話は別。
つらい時代を生きたユダヤ人を演じてオスカー獲ってるエイドリアン・ブロディを起用し、人生に起こり得るありとあらゆる辛さをありったけ盛り込み人の共感を誘う。それがアカデミー賞を獲りにいこうとしてる感満載でそれが気色悪くすら感じてしまった。前述のキメセクとかハリソンの悪の所業とかそーゆーの本当にいらない描写だゎ。
brutalistとは建築用語のブルータリズムを用いた人、という意味のようだけど、その中に残忍さという意味のbrutalが入ってるから作品のテーマを建築にしたのかな??ちょっとダジャレっぽくてそれもなんか気に障る。
展開に呑まれ釘付けでした‼️
もう夢中で観ました。長いってより凄く面白かったです。前半は芸術性を見出されるサクセスストーリーで、気分上昇しました。私は大好きな展開に。
休憩が入り(舞台では必ずありますが、映画では初体験でした。中々親切で有り難い)、後半はそう簡単には行かない難局ストーリー。これが息を呑む内容で幸せモードはどこいきや夢中でスクリーンを観てました。
ネタバレになるんでこの辺りで、、、ですが、結局は幸せな話しでしたよね⁈ 芸術は認められたんですよね⁈
映画のスケールが大きいと素晴らしい評価になるけど反面ストーリーは単純さに欠け面白さも下がるけど、この作品はそんな事がなかった。
時間は映画としては長いけど、韓国ドラマなら立て続けに観れるんだから、それに比べたら4話までレベル(笑)
面白ければ全然いけました!!
バウハウスとハリウッドが融合したような・・・
長いし、初っぱな東欧、ホロコーストが絡んでいるので、難解な作品だと覚悟して臨みました、がー・・・
率直に非常に面白い内容でした。決して楽しいものではありませんが、激しく移り変わっていく人生とか人間模様が飽きることなく連ねられていて、物語そのものに絶えず集中できたので、長さなどというものもほとんど感じなかったという印象です。
その上、映像の構成と音楽が非常に良くて、興味深い内容をいっそう盛り立てていて、故にインターミッションがあった作品なのに常に魅了され続けたのだと思います。そのインターミッションもまたかなりのセンスの良さで、休憩もまた作品の一部なのだと実感した次第。
個人的にもっとも印象的だったのは、最初のタイトルバックのシーン。独特かつイカした映像に、先進的で迫力のある音楽が鳴り響く─そしてそれらが見事に融合してぐいぐいスクリーンの中へと引き込んでゆく・・・もうその少しの時間でこの作品は絶対にいいと確信できた気がします。
終わり方エンドロールも独特で斬新でしたけど、そこはあまり理解できませませんでしたが、とことんやり尽くしたといったところなのでしょう。
技巧派監督が撮ったPTA作品のような大河ドラマ
ムチャな喩えだが、いわば『第三の男』の技巧派キャロル・リードが『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』のようなポール・トーマス・アンダーソン作品を撮ってみせた、といった感じだろうか。
途中15分の休憩を挟み前・後半100分ずつの長尺、ビスタビジョンでのフイルム撮影にこだわった映像、大胆さと繊細さが光る構図、隅々まで意匠を凝らした音響——とにかく全編にわたり才気がみなぎる。戦後アメリカの一断面をあぶり出す濃密な大河ドラマでありながら、どこかクールな現代アート、インスタレーションのようにも見える。そんな本作を『TAR/ター』や『関心領域』など昨今のアート系作品の潮流に与する1本と見做してもいいだろう。
そうした独自性は、音楽の使い方ひとつをとってみても明らかだ。
たとえば妻・姪との生き別れから主人公のアメリカ到着までを一気に見せるオープニングでは、客船の汽笛か巨大製鉄所の騒音を連想させる奇抜な「序曲」が鳴り響く(※余談だが、耳にした瞬間、某FM局のステーション・ジングル「♪エイティ ワン ポイント スリー」が思い浮かんだ…笑)。
かと思えばラストは、ヴェネチア・ビエンナーレの背後に流れる打ち込みのクラブミュージックに続けて、エンドロールのディスコサウンド「One for You, One for Me」で幕を閉じる。まるで『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が描く1980年代に直結するかのように。
しかし映像面では、こうした数々の才気走るシーンより、風船と花束を携えた主人公たちが妻や姪を駅で出迎える場面の方が印象に残った。なんてことないシーンだが、絶妙な色彩設計が1953年という時代を彷彿とさせる。まるでソール・ライターの写真のようだった。
そんな本作でもう一つ触れておかなければならないのは、昨今の米アカデミー賞ノミネート作の中で『関心領域』や『リアル・ペイン~心の旅~』と同じく、ここにも「ホロコースト」の影が重くのしかかってくるということだ。
本作では、ホロコーストからの生還体験を有する主人公たちがペンシルベニアの富裕層の人々に対して覚える違和感や決して相容れない感情などが描かれるが、それにとどまらない。主人公たちは、ナチス・ドイツ、旧ソ連、アメリカ(!)など「時の権力」によって幾度となく肉体を傷つけられてきたことが陰に陽に示されるのだ。
ところで、建築家を主人公にした代表的な映画と聞くと、国立映画アーカイブで以前観たキング・ヴィダー監督の『摩天楼』(1949)が真っ先に思い浮かぶ。この映画の原作小説は『ブルータリスト』の脚本家もかなり参考にしたようだが、2本の映画に類似点はあまり見出せない。あえていうなら、妥協を知らぬ主人公が工事現場の作業員に一時身を落としたり、パトロンの実業家と度々対立するくだりとか、そのパトロンがやがて辿るであろう末路のあたりだろうか。
そんな主人公が志向するのがいわゆるブルータリズム建築。その大まかな特徴としてよく挙がるのが「武骨で粗野」「荒々しく大胆」などといったフレーズだ。しかしこの映画に出てくる礼拝堂の建物は、ラストで姪が明かす「真の設計意図」とは別に、トキシック・マスキュリニティに囚われた男たちの虚しい敗北を象徴しているようにも見えた。
最後に出演者について。主人公の運命を左右する実業家役のガイ・ピアースは少々物足りない。この人物は傲慢で凶暴さを秘めている一方、ヨーロッパ的な知に羨望と嫉妬の念を抱いたりもする。またどこか憎めない愛嬌もある。そんな難しいキャラではあるが、ガイ・ピアースは演じ切れていないように思う。ムリを承知で挙げると、先頃引退を撤回したダニエル・デイ=ルイスや故フィリップ・シーモア・ホフマンくらいの押し出しが欲しかった。
ともあれ、この映画は、劇場の大スクリーンと臨場感ある音響システムで観るのにうってつけなので、強くオススメしたい。
以上、特別先行試写会にて鑑賞。
アメリカンドリームの闇
"アメリカン・ドリーム"の闇 = ありのままの美しさ(姿)で一つの時代(過去)を定義し、時を超える普遍性
逆さの自由の女神像 = ポスタービジュアルにも使われているこの印象的なショットこそが、本作のテーマを端的に象徴するエスタブリッシュショット。移民が最初に目撃する希望の象徴の失墜。つまり、難民や売れない芸術家にとってそれぞれの夢や希望 -- 何より生そのもの -- への【道】を切り拓くような一筋の【光】であるアメリカもパトロンも、その出会い自体が「救われた!これで一生安泰だ」というゴールなのではなく、あくまでそこから別の苦労や挫折、人間の暗部・闇に迫る新たなスタートに過ぎないということ。観てわかった、建築様式のブルータリズムだけでなく、文字通りの「残酷主義者」でもあるタイトル。美の核芯、過去の存在。
"目玉"から鱗!釘付けになるファーストシーンから圧倒されては、オープニングクレジットが流れるところまでで完璧にやられた。そしてそこから展開される、何層にもなっては、あるがままの姿が剥き出しになっていくようなさまに引き込まれてしまう…。どのキャラクターにも影があって、闇を抱えており、その複雑さには魅了されてしまうものがある。彼らが体現しては暴くアメリカンドリームの疑問や醜さ(虚栄・嘘偽り)。"Miller & sons"アメリカ人はファミリービジネスが大好きだ!"我々"外国人はアメリカの人々に歓迎されていない…!! 改名・改宗してアメリカ人になることをえらんだ"従兄弟と、自身の原点エルサレムに行くことを選ぶ姪。そのどちらでもない(そして恐らくこれが一番多数派では?)主人公たち。その時代を生き残った生き証人であり、アーティスト = 表現者として語り継ぐこと。
怪我した鼻と車や列車が走ってゆく道。『戦場のピアニスト』エイドリアン・ブロディがまたもやホロコーストを生き延びたサバイバーを演じ、『博士と彼女のセオリー』フェリシティ・ジョーンズがまたもやそんな主人公に寄り添う妻役を演じた本作は、素晴らしい演技だけでなくフィルム撮影、音楽(サントラ最高すぎる!)、衣装、そして光を(時に意図的に窮屈かつ居心地悪くも)心ゆくまで堪能でき、本編尺は長いけどずっと観ていられるような映画としての強度・力強さには疑う余地がない。作中30年もの時が流れ主人公の半生を描き、大河ドラマと形容するに値する歴史巨編にふさわしい裏方スタッフの働きの充実っぷり(ex.『アラビアのロレンス』『ラスト・エンペラー』)!!
また、近年インディペンデント映画や中小規模な作品を中心に活躍するガイ・ピアースが、初登場シーンから強烈なインパクトを残す。キレやすい支配者(上流・特権)階級に、その一因にもなっていそうでありながら同時に母親思いな(屈折した)一面にもつながる生い立ちバックグラウンド。かたや図書室改装の1000ドル、かたや母を捨てた祖父母への手切れ金の1000ドルという同じ額の重さの違いと、そして政治的な力も働いた結果85万ドルもの巨額の予算をかけて建設される母の名前を冠したコミュニティセンター。夢を叶える = 思いを成し遂げるのに時間がかかる芸術家アーティストとパトロンの歪んだ・捻れた関係性(ドラッグ、性 etc.)など、鉄鋼のように社会の根幹から化けの皮を剥ぐ。若干36歳のブラディ・コーベット監督がここまで大胆に挑戦的・野心的かつ実験的な大作を生み出した意義。
勝手に関連作品『アンドレイ・ルブリョフ』『サウルの息子』『アラビアのロレンス』『ラスト・エンペラー』『オッペンハイマー』『戦場のピアニスト』『マエストロ』
P.S. 主人公が妻を想ってか性的に不能なのか判断しかねたけど、やはりそういうことなのだろうか?
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ウェス・アンダーソン組からジャンル映画まで信頼に足るメソッド俳優エイドリアン・ブロディが名作『戦場のピアニスト』以来、再びホロコーストから生き延びた人物を演じる注目の本作はぜひとも観たい作品。また、同じく伝記映画『博士と彼女のセオリー』でも妻役を演じ『ビリーブ』では女性解放と性差別撤廃に闘っていたフェリシティ・ジョーンズに、『ハート・ロッカー』など大作映画以外を主戦場に独自のキャリアを築いてきたガイ・ピアースと共演も気になゆ。最初は文字通りの残忍主義者ということかと思ったくらい建築のことは詳しくないけど、ブルータリズム建築という興味を惹かれるタイトル。弱冠36歳の脚本監督が放つ本作は、尺の長さ含め例えば現代の『アンドレイ・ルブリョフ』になるのではないかと期待。ゴールデン・グローブ賞より前から観たくてClipしていた本作、特報を見ていても引き込まれた。今年の『オッペンハイマー』になるか?
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