「私には綺麗すぎた」ザ・ルーム・ネクスト・ドア Toshiyaさんの映画レビュー(感想・評価)
私には綺麗すぎた
テーマとなっている安楽死については高い関心がありました。映画祭で金獅子賞を受賞したことも、女優さんへの期待もあり、鑑賞しました。知的な会話も鮮やかな色使いの美しい映像も、俳優さんたちの演技にも惹き込まれました。でも鑑賞後にえもいわれぬモヤモヤ感が拭えず、満足度高かったと思えたのになぜそのような気持ちになるのか整理がつきませんでしたが、時間を少しおいて判りました。
綺麗すぎたのです。
主人公二人はそれはそれで苦楽を経て現在の境遇にあることになっていますが、いかんせん老いても経済的に恵まれた環境にいるため、考え方や捉え方も含めて死に美しく対峙できているのです。それは自分にはどう望んでも決してできないこと。
あんなに美しい場所を臨終の場に選ぶことは言うまでもなくできません。実際には日々の治療代を心配したり、残された近親者への負担を考えたり、多くの泥臭いでも切実な問題に直面しつつ、その中で安楽死という選択を選ぶか否かを判断することになるのだろうとしか想像できない。
テーマが実際的であるがためにこの作品の世界に身を置くことができなかったのだと気付きました。
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