劇場公開日 2025年1月31日

「期待度◎鑑賞後の満足度◎ 嘗て“死”というのは生活の中で、社会の中でで、世界の中で生者の隣に居たのに、現代人はいつから“それ”が来るまで正面から向き合わなくなったのだろう…」ザ・ルーム・ネクスト・ドア もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0期待度◎鑑賞後の満足度◎ 嘗て“死”というのは生活の中で、社会の中でで、世界の中で生者の隣に居たのに、現代人はいつから“それ”が来るまで正面から向き合わなくなったのだろう…

2025年2月2日
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鑑賞方法:映画館

①ペドロ・アルモドバルの監督作品で、主演の二人がご贔屓且つ現代映画界も最も優れた俳優であるティルダ・スウィントンとジャリアン・ムーア(でも老けた)と来たら、観ない訳にはいかないでしょう。

②初の英語作品ということだが、内容的にはア「母と娘」の物語、往年の映画・文学へのオマージュ(今回は特にジェイムズ・ジョイスの『ザ・デッド』と、ジョン・ヒューストン監督の映画化版作品)といったアルモドバル作品にはお馴染みの要素が散見される。

③ゲイにも触れられるけれども、「戦争の恐怖・悲惨さに比べたら世間で半道徳的と云われることなどつまらないこと」たいう台詞は刺さった。どこかの国のトップや政治屋達に聞かせてやりたい。

④それより、本作では「死」とそれに向き合う人間の姿が全面に押し出されている。
“生”と“死”とは隣り合わせ。
陳腐な連想かも知れないけれども、原題の“The Room Next Door”というは、「生と死」とのその関係性を暗喩しているのだろう。
間を隔てる扉の開閉がそのまま「生と死」を隔てている有り様のメタファーとなっている。

⑤また、登場人物たちの語る話の端々に人間の“死”だけでなく、“死”に向かう社会、世界の有り様をそれとなく散りばめていることで、風刺劇の側面をも持っている。

もーさん