「個性大爆発の実験映画…かと思いきや非常に丁寧な作品」ハイパーボリア人 タランティン・クエンティーノさんの映画レビュー(感想・評価)
個性大爆発の実験映画…かと思いきや非常に丁寧な作品
正直、予告映像を見た段階では「かなり独りよがりな実験的映画かもしれない」と予想していたが、蓋を開けてみると思いのほか丁寧な設計で観客への配慮がなされた映画だった。
ストーリーは決して支離滅裂ではなく、しっかりとしたレールの上を走っていく。ただその走り方が特殊というだけだ。なので、難解ではあっても安心してその難解さに身を委ねることができる。
話がとっ散らかなかった理由はやはり政治的要素が骨格になっているからだろう。
パーソナルで観念的なメッセージ、あるいは哲学的なメッセージは必ずしも相手に伝わる必要はないが、政治的メッセージは相手に伝わらなければ基本的には意味がない。
もちろんこの映画は政治的メッセージを全面に押し出した映画というわけではないのだが、チリを取り巻く政治や歴史という史実的部分が骨組みを形成していたので、現実と想像、史実と虚構を行き来する幻覚的なお話であっても支離滅裂になることなく各要素が繋ぎ止められてバランスが保たれていた。
そういう意味では、今回同時上映された「名前のノート」が、「ハイパーボリア人」本編に向けたちょうど良い補助線になっていたようにも思う。
映像面はもちろん素晴らしかったが、音楽やSEも非常に良かった。
とても大満足の映画でした。
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