「なるほど、わからん」ハイパーボリア人 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
なるほど、わからん
映像、テーマとしては、併映された「名前のノート」の方がわかりやすく、印象的だた。
パンフレットを読んである程度の時代背景は補完できるが、本編観賞だけですっきりせずに「あれはそういうことか・・・?」などと考察するのが好きじゃない人にはあまりお奨めできない。逆に好きな人には奨められるが。
南米にヒトラーが亡命した説については「お隣さんはヒトラー?」で知っていたが、 ナチスとの関係など、南米の歴史に詳しくないとさっぱりなところはあった(チリでは常識の範囲なのかもしれないが)。
チリも長い間独裁政権が続いていて民主化に時間がかかったことなどは、ピノチェト独裁政権にいかに選挙でNOを突きつけるかという映画「NO」でも描かれていたので、このあたりは深堀したら面白そうだ。
「チリには激動の歴史があり、今もその渦中ですから、チリで生まれる芸術や音楽が政治を扱うのは当たり前のことで、層でないものを探す方が大変だと思います。日本は違うのかもしれないけれど…」と言う監督の言葉がなんとも突き刺さる。芸能人やアーティストが政治的発言をすると「お前は作品だけ作っていろ」とばかりにこぞって叩く様はなんとも情けない。そもそも政治がまともじゃなければ映画も小説も音楽もあらゆる芸術は危機に瀕するのは歴史を見ても明らかなのだが…日本人はもっと政治に目を向けるべきだろう。
本作の日本版予告においても、オオカミの家の監督の新作ということは大事なキャッチコピーだとしても、アニメや人形などを織り交ぜた独特の手法ばかり取り上げて「映画の闇鍋」と称するのは、日本人の政治に対する関心の低さや理解力の低さがあらわになったようでなんとも情けないような…。
アオリ文の、「この人たち、どうかしてる――」の「この人たち」は作中の登場人物なのか監督たちなのか、それとも見ている観客なのか…