「記憶の断層に沼ってく」ジュ・テーム、ジュ・テーム 青樹礼門さんの映画レビュー(感想・評価)
記憶の断層に沼ってく
時をかける少女、もといオッサンが何回もタイムリープする。
ジャンヌディエルマンを思い出した。
日常生活の繰り返しに潜む、分岐点。裂け目。
主人公が本の校正をする仕事、という設定がふるっている。文章は、どこで句読点を打つかによって全体の意味が変わるわけ。
まさにこのドラマは自分の記憶という一冊の本を1ページずつ、行きつ戻りつ再編集するような仕掛けだから。
既知の世界に再来訪したために、
あらゆるパターンを知ってしまうのは非常につらいもんだ。忘れるから、また明日を生きていける。
記憶が積み重なるから、
抱え込む苦しみは、より重たく。
さすがは、マリエンバートの監督だ。
スタイリッシュな画面が素晴らしい。
しれっと見せる。
大袈裟な音楽、たたみかける展開はしない。
惑星ソラリスのように、これからもずっと、
脳内にまとわりつきそうだ。
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