劇場公開日 2024年10月18日

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「ふとしたきっかけから生まれた絆を紡いでいく3人の姿を、「国境線」と絡めて描いていく、という掘り下げ方がおもしろい一作」国境ナイトクルージング yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ふとしたきっかけから生まれた絆を紡いでいく3人の姿を、「国境線」と絡めて描いていく、という掘り下げ方がおもしろい一作

2025年5月12日
PCから投稿

『ビヨンド・ユートピア 脱北』(2024)を鑑賞した後だと、「国境線」の描き方がこんなに違うんだ…と妙な感慨があります(どういう順番で観てるんだ、とも思いますが)。

何かから逃れるように旅先でバスツアーに参加したハオフォン(リウ・ハオラン)が、ふとしたきっかけで知り合ったナナ(チョウ・ドンユイ)、そして彼女の友人のシャオ(チュー・チューシャオ)と国境近くの都市、延吉でのひと時を過ごす…、という物語の大枠は、ボーイミーツガール的であったり三角関係の話であったり、なのですが、情緒的になりそうなところをぎりぎりでかわすあたり、いかにも2020年代の作劇だと実感します。

そんな近いのか離れているのか、いつまで続くのかもわからない三人の関係が、延吉の現代的な景観、あるいはその周辺に広がる自然環境、さらにその先に厳として横たわる国境線、などとどのように絡んでくるのか、が本作の注目点の一つとなっています。

アンソニー・チェン監督は落ち着いた作風という評価が定着していますが、それがちょっと本意と違うのか、本作のインタビューでチェン監督が割と自身の「若さ」について語っています。そのインタビューを見たことも影響しているのか、映像からも「若さってこういうことだぜ!」という監督の声が聞こえてきそうで、作品自体の面白さとは別の次元でちょっと笑ってしまいそうになりました。

なお延吉は、中国の朝鮮族自治州の州都にあたり、その土地柄、作中でも何度も朝鮮族の人々の生活や文化について言及しています。その描写がとても面白かったんだけど、主人公三人の物語にあまり絡んでこなかったような気が(ハオフォンがバスツアーで参加したり、ナナがそのガイドだった、という設定はあるものの)。何か重要な描写を見落としているのかも?また観直してみますー。

yui
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