花嫁はどこへ?のレビュー・感想・評価
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今より少し前のインドを舞台に二人の花嫁の取り違えを、人情味豊かに描いた人間ドラマの秀作です。インドでも、花嫁は夜汽車に乗って嫁いでいく♪ようです。
作品紹介を読んでいたらストーリーが良い感じ。・_・
インド映画といえば長時間作品が当たり前の中、この作品は
124分とお手頃♪ なこともあって鑑賞です。
鑑賞スタート。
今から約20年前のインドが舞台。都市部ではなく農村部。
鉄道は通っているが、その駅からバスに乗り換え、更にかなりの
距離を歩いてようやく辿り着く家の男が主役の一人。
見合い結婚なのだろうか。相手(嫁さん)の実家で披露宴。
その後、相手の実家に ” 祈りの期間 ” の2日間ほど滞在。
ようやく自分の村に戻ろうとする処からお話がスタート。
駅舎に着いて列車を待つ新婚の二人。
新婚の夫。名はティーパク。人柄は誠実そうだ。
新婚の妻。名はプール。まだ10代だろうか。若い。
ようやく列車に乗り込んだ二人。
プールは結婚式で身につける赤いベールを被っている。
嫁ぎ先に着くまではこのままなのだろう。顔も見えない。
列車の中は、ものすごい混雑。
何とかプールの座る場所を見つけて座らせるティーパク。
良くみると向かいの席にも赤いペールの女性がいた。
この女性の名はジャヤ。この時点では顔が見えない。 ・_・;
大安吉日には結婚式も多かったと見え、こちらも新婚のようだ。
その隣には男が座っている。夫か?
嫁の持参財(持参金のような財産らしいです)が多かった事の
自慢をしてきたりと、どうにもいけすかない。成金感あり。
途中の駅でも人の乗り降りは激しい。
ティーパクが買い物のため車内から外に出た時も、人が多く出入り
した。プールもジャヤも、座っていた場所を移動した。
そして戻ってきたティーパク。その事に気付かない。 …おーい。
やがて列車はティーパクの降りる駅に到着。
うとうとしていたティーパク、慌てて自分の席の近くにいる方の
赤いペールの女性の手を取り、その駅で下車して行く…。 …おーい。
そうと知らずに列車に乗り続けるプール。
終着駅(?)でティーパクが居ないことにようやく気付く。
途方に暮れるプール。その日は駅のトイレで一泊…。
次の日、列車が着く度ティーパクを探すのだが… いない。(涙)
どうしよう…。
困ったプールに救いの手が…
見かけよりずっと大人びた雰囲気の少年。そして
足が不自由で車輪のついた板で移動する男。
売店を経営し客を叱り飛ばす老婦人。
彼らが、プールを支えてくれた。
一方のティーパク。
連れ帰った妻がプールでは無いことが判明し家中が大騒ぎ。
プールを探さなければ。 …どこだ
間違って連れてきてしまった女性はジャヤという名前と分かった。
だが、どこから来て、どこに嫁ぐハズだったのかが分からない。
ジャヤを返さなければ。 …だから どこに?
このジャヤの正体は?
ジャヤが嫁ぐはずだった家からは、どうにもうさん臭い匂いが…。
持参金を持っての失踪かと、地元の警察も絡んできて…
さあ、花嫁プールは無事に夫の元に戻れるのか?
そして花嫁ジャヤに明るい未来は訪れるのか?
というお話。
◇
花嫁を取り違えて自分の家に連れ帰ってしまった男と間違えられた花嫁。
花婿に置き去られ離れた駅まで行ってしまい途方に暮れるもう一人の妻。
二人の妻をめぐる、間違われて行った先での出来事と、
嫁ぎ先の家の事情や実家の事情が折り込まれて、二人の人生の絵図が
次第に明らかになっていく、その描き方が素晴らしかったです。・_・ハイ
全く退屈することのない2時間と少々。
皆で踊る場面は無かったけれど (←これはどうでもいい)
満足のいく作品でした。
ハートフルなヒューマンドラマの秀作。
観て良かった。
※あの警部補、いつ改心したんでしょう… ?_? 謎
◇あれこれ
■タイトルについて
原題:Laapataa Ladies (ヒンディー語!)
邦題:花嫁はどこへ?
花嫁失踪事件みたいにも思えてしまうので、他にもっと
適切な邦題がつけられなかったかなとも思ったのですが
いざ考えてみるとこれが難しいです…
案1:攫われた花嫁と置き去られた花嫁 (…そのまんま)
案2:僕の嫁さんどこかへ行っちっち (いつのネタ…)
ネタばらしにならない邦題の付け方って難しいかも…
ちなみに原文を直訳すると、↓です。
翻訳:行方不明の女性 (by google翻訳先生)
これだと鑑賞意欲をそそらないかも…。というか尋ね人コーナー?
翻訳者の苦悩が分かります。
■プールが作ったお菓子(カラカンド)
プールが売店で出すメニューを考えて、作ったお菓子。
ミルクを煮詰めて固めたものだそうで、ドライフルーツをトッピング
すると、色合いも鮮やかでとても美味しそう。
売店のおばさんが、「サービスだよ」と、客に味見をさせたのはご愛嬌。
どんな味なのかな。 食べてみたくなりました。 ・-・
ババロアみたいな食感なのでしょうか?
◇最後に
ジャヤの結婚相手との決着をどう付けるのか心配しながら鑑賞していた
のですが、まさかの警部補ご乱心…の逆は何と言えば…?
まあ、痛快な展開だったので文句は無いです。 ・_・;
昔TVで観た警部マクロード。これの事件解決方法もこんな感じの展開
だった気がするのですが、どうだったか。(…遠い目)
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
顔のない花嫁たち
見た人誰もが幸せになれるような楽しいコメディー映画。いまだ残るインドの昔ながらの慣習なども学べて勉強になる。ところがこの慣習を調べてびっくり。これはコメディーどころかもはやホラーだ。いまだインドにおける女性を取り巻く酷い慣習には驚かされた。
筆舌に尽くしがたい陰惨な慣習と女性を襲う悲劇。出るわ出るわ女性たちの受難劇。これはコメディーの皮をかぶったホラー映画だ。
ヒンドゥー教やカースト制度の慣習がいまだ残るインドではいまだに女性の地位は低いまま。モディ首相の政策で女性の社会進出が進んではいるが、広大なインド、とりわけ貧しい地方などでは女性の暮らしは昔とあまり変わらない。
本作は今から二十年以上前のインドの田舎が舞台。持参金制度、児童婚など本作でも女性の受難を思わせるエピソードが描かれている。
主人公のディーパクはプールを見合い結婚で娶るが、見ての通りプールは幼い顔立ちで演じるのも十代の女優さん。これは明らかに児童婚を描いてる。
インドではいまだに持参金制度がまかり通り、嫁の側が婿側に持参金を用意しなければならない。たいていの家庭ではこの持参金負担が経済的に重くのしかかるため、胎児が女だとわかると堕胎してしまうという。そのため法律で出産前の性別検査を禁じたが、そのぶん生まれた女の嬰児の殺害が増加した。地域によっては男女の人口比で女性の割合が圧倒的に少ないのだという。
本編ではジャヤの夫が妊娠できない前妻を殺したと語られるけど、これは実際にインドで起きた持参金殺人を描いてる。嫁の持参金が少ないと夫やその親族から虐待を受けてひどい例では生きたまま焼き殺されるという事件も頻発した。年間でこの持参金殺人は8000件に及んだ時期もあった。
女性の受難はまだまだ続く。家父長制のインドでは女性は家事だけして家にいればいいので教育も受けさせてもらえない。プールのような子は知識も教養もないから夫の家でこき使われてもそれを当たり前のこととして疑問にも思わない。
教育を受けてないから稼ぐこともできず家事しかできない女は家ではお荷物扱い、だから早くに嫁に出される。いまだ処女崇拝がまかり通っているから嫁は幼いほど価値がありその分持参金は少なくて済む。児童婚が無くならない理由だ。これらは法律で禁じられていても現実に追いついていない。
ジャヤは独学で有機農業を学び、進学を希望したが親には逆らえず諦めて見合い結婚する。その時にあの花嫁取り違え事件が起きる。彼女にとっては結婚から逃れられるまたとないチャンスだった。そしてそれはプールにとっても。
世間知らずのプールは屋台のおばさんや仲間たちとの出会いで現実を知ることができた。屋台で商売も学んだ。結婚してもけして家庭におさまるつもりはない。彼女もこの事件をきっかけに自立心が芽生えた。
インドでの女性たちの受難は聞けば聞くほど悲惨で、以前世界を震撼させた集団レイプ殺人なんかも、その根底には家父長制を根源とする名誉殺人が関係してたり、男女比による未婚男性の増加、貧困によるストレスのはけ口として女性が犠牲になっていて、インド社会が抱える問題の根深さがうかがえる。
ただ女性たちもこれらの被害に甘んじてばかりではなく、女性同士結束して男社会の理不尽と戦っている。そういう女性たちの活動が国内いたるところで見られるという。
本編でもジャヤがディーパクの妹の絵の才能を生かして協力し合ってプールを探し出したり、ディーパクの母親とおばあちゃんの会話など女性同士のつながりが感じられるシーンがあって良かった。
出来れば女性警官のベラ君が最後悪党どもをコテンパンにしてジャヤを解放する展開に期待したんだけど、あの悪徳警官が意外にもいい奴でベラ君の活躍の機会を奪ってしまったのがちょっと残念。
女は男と目を合わさないようベールをかぶり目線は足元に。そんな古くからの女性を抑圧する慣習が原因で起きた取り違え事件が逆に抑圧された女性たちを解放するきっかけになるという何ともよくできたお話。
ベールに覆われて生きてきた顔のない女性たちはベールを取り去り、自らの顔(人格)をさらけ出して自分らしく生きられるようになった。それはきっと遠い未来のことではない。
インドの雰囲気を知る
ヒロイン二人が魅力的。インドの多面性も感じた。IT隆盛のイメージの一方、男尊女卑、貧富の差、伝統的家族主義に改めて驚く。知り合いの日本人がインドで働いているがこれは大変、、と実感した。謎の花嫁の方の謎行動が読めず、途中退屈なところがあったが、最後は畳みかける感じでさわやか。
インド人もびっくりの大岡裁き
2001年のインドの農村が舞台。
インドの結婚事情と鉄道事情。
乗りたくないですね〜あの列車。
いまや世界一の人口でIT大国のインド。
2024年制作。
あどけないプールちゃんとプシュアさん(ホントの名はジャヤ)はだいぶ年齢も離れてる。結婚詐欺師が疑われていた時には菜々緒タイプのメイクでスパイみたいだったのが、後半は蒔田彩珠似。メイクで変わるもんですね。美人さんは。
盗んだ?ケータイのSIMカードを焼いて捨てたり、お寺に行くと言って出かけて、金のブレスレットを売ったり。有機農業とか言ってたけど、ネカフェ活用なんかはIT系だったような。インドの農業はもともと化学肥料なんか使わなくて、牛さんのうんち(天然肥料)しか使わないんじゃないの?とか思っちゃいました。
要所、要所に牛さんの出番がありますし。
プールちゃんはまだ16才。
列車の窓から身を乗り出すシーンは「ハジュランギおじさんと小さな迷子」を思い出しました。
あの警部補。
写真機持ってジャヤを尾行する場面。佐藤二朗みたいな芸風。
駅のホームで屋台のファストフード商売をしているおばさんは貫禄あって、倍賞美津子みたいだった。映画「糸」の子供食堂の倍償美津子を思い出していました。チャツネを2度付けするおじさんを叱りつける場面なんか、串あげにソースを2度付けして怒られたような気分になってしまいました。
こういった女性の自立のお話は男もやさしく諭された気分で、素直に言う事聞いちゃいますねー
原題のダブルミーニングが秀逸!
インド発ハートフルコメディ、コレ絶対いいやつだし!と思ってみたら、、やはり…‼︎ (^-^)
インパクト大な警察署長が影の立役者 笑
噛みタバコであのクチだったのね。
ナンテコッタな出来事はあくまできっかけ。物語は対照的な2人の女性の「自分探し」にありましたねえ。
わずかな期間ながら暮らしを一にしたそれぞれの出会いや葛藤が、優しかったなあ。
ラストで互いに抱き合う2人。あなたのおかげで私は家にたどり着けたというプールに対して、あなたがいたから自分を見つけられたと返すジャヤ。最高のラストシーンでした。よきよき!
「家」を世界に生きる女性もいれば、「世界」を家に生きる女性もいるわけで、それを自由に選択できることがニンゲンとして当然の権利ではないか、ということを何ともハートフルかつチャーミングに描いた良作でした!
説教くささがなくてよい 笑
また作風もインド映画っぽくなくて、アメリカ映画のようなタッチでしたがどうでしょう?見やすいと言えば見やすかったですね。今後はこの方向性の作品が増えるのかもしれませんね。
面白い映画の要素がしっかり詰め込まれた本作。
エンドロールのイラストで最後までホッコリでした。
***
国別のジェンダーギャップランキングを眺めると、宗教と文化が強く結びつく地域の国々がより深いギャップを抱えていることがわかります。
2024年ランキングではインドは129位と…(^_^;)
ずっと変わらない感じ。これはなかなか根深そうな。
脱線しますが、我が国・日本は神道が根っこにあり、無宗教というかあらゆる宗教をないまぜにしたようなお国柄なので、より先進的であってもおかしくないはずなんですが、、インドとは違う意味での根深い民俗文化があるのでしょうね。強いジェンダーギャップ(ランキング118位・昨年まではインドとほとんど同じ順位…)が存在します。
この問題は全く他人事ではないようですが?
すべての女性にエールを!
日本ではありえない花嫁取り違えというシチュエーションから始まるドラマ。
ワタクシ、まだまだ昭和おやじ、男尊女卑の何が・・おっとここまでの世代ですが、
終盤になるについて涙腺がほろほろとくるお話でした。
花嫁の二人だけではなく姑と大姑、小姑やシングル強く生きる女性までも
思わず頑張ってとエールを贈りたくなるような人物描写もとてもいい!!
花嫁二人の演技はもちろんすべての登場人物が魅力的で
この村の日常をもっといろいろ見てみたくなるそんな世界観を堪能できました。
続演いらずの終わり方ですが、続編があっても見たくなるような
心地よい余韻のある映画です。
出会いっていいなぁ
劇場スルー予定だったのですが、皆さんの評判がとても良かったので鑑賞。
結論、久しぶりのあたたかで優しい映画で、
劇場で観てよかったなぁと。
ふたりの花嫁が入れ替わる過程が丁寧で「どうなる、どうなる」と物語に入り込むことができるし、後ろで流れるインド音楽にもわくわくさせられて、ストレスのない始まりが好印象だった。
プールの旅は、彼女の成長や、見知らぬ駅で出会う人々との交流を通じて新たな気づきを得る様子が瑞々しく、微笑ましく見守ることができたし、一方で間違った嫁ぎ先に導かれたジャヤは、彼女自身にいったいどんな目的があるのか?どんな過去を送ってきたのか?と、キャラ自体が気になる作りとなっていて、ディーパク、彼の友人、家族たちと次第に信頼関係を結んでいく様とあわせて飽きずに観ることができた。
(隣の男性は途中しっかり寝ていたけれど笑)
爽やかで軽やかなエンディング、悪徳警官だと思っていた警部補がかなり粋ないい人であったこと、ふたりの花嫁のこれからのゆく先がきっと幸せであろうと想像できる収まり方などが特に素晴らしかったなぁ。
ただ、その反面、思った以上に残酷でえげつないジャヤの夫(事実存在する)や、息苦しい側面が残るインドの結婚文化や女性の立場などに暗い気持ちにもなった。
女性が「学びたい」「働きたい」という思いを成就させるために、何故ここまであがき、苦しみ、訴えないといけないのか…古くから継承される文化観や信仰など、傍から見たら「なんでそんなこと?」と思うようなことでも、事実それを大切に、尊重している人々は沢山いて、簡単には変えられない部分なんだろうなぁと、やるせない気持ちになった。
でも、すべてがこのままじゃいけないよね、と、あたたかく優しい物語で包みながらも、確かなメッセージとして残すこの映画が、小さな希望にも感じる。
全体として好みな映画だったが、特にプールの一連の冒険にはところどころで涙した。
当たり前のように従順に嫁ぐことしか考えてこなかったプール。
そのために家事スキルを磨いてきた奥ゆかしい彼女が自分の特技を活かして働き、その対価としてお金を得るという初めての経験をしたり、必ずしも守ってくれる存在がいなくてもひとりで幸せに生きていくことは可能であることを知る。
ただ親に従い、ただ夫に着いていくだけでなく、自分で考え動き、生き抜く強さを得ていく姿が本当に本当に感動的だった。
ここの丁寧な描写があったからこそ、頑なに夫の名前を口にすることを拒んでいたプールが「ディーパク!」と呼びかけるシーンがこの上なく輝くし、やっと再会できたふたりの間の愛が強固なものだと信じることが出来る。
ひとり旅経つジャヤと違ってプールは予定通り嫁ぎ妻となりますが、あの駅で過ごした数日間は、プールを確実に変え、大きく成長させたはず。
彼女はこれから愛する夫との幸せな暮らしのためだけでなく、何より自分自身の幸せのために凛として生きていくことが出来ると思う。
この先どんなことがあっても、きっともう迷うことはない。
それが感じられて、わたし自身勇気をもらうことができた。
人との出会いは、良くも悪くも自分を変えるし、人生を変える。
最悪だ、と思う出会いもあるにはあるけれど、
人と出会い、自分の世界を広げることを恐れずにいたいな。
最後に、
好きなシーンは沢山あったけれどその中でも群を抜いて一番好きだったのは、
警察署を飛び出したジャヤを見送りながら警部補が呟いた言葉。
うん、彼女はどこまでも行きますね。
インドあるある?
映画「ライオン」を思い出しながら鑑賞。
とにかく人が多くて迷子になってもおかしくないもんね…今も変わらないんだろうか?
ベールのままの写真には笑った。
汚職まみれの警察官。
これもあるあるだけど、今回は意外だった。
たまにはいいとこある?
派手さはないがしみじみと。
しかし女性の地位は相変わらずなんだなと思わされた。
これは…今はどうなんだろうね。
インドの闇を照らす小さな光のような映画
インドの社会問題をエンターテインメント映画にして大ヒットを連発するインドの至宝、アーミル・カーン製作、元奥さんキラン・ラオ監督の本作。今回はインドの田舎村の若い女性を取り巻く問題を取り上げます。
幼妻、プール
新婚の彼女は新郎ディーパクさんに連れられ、はるか離れた新郎の村を目指し、列車の旅に出ます。車内にはたまたま複数の新婚カップルが。新婚の花嫁はみな赤いベールを深々と被り、顔を覆っています。女性の尊厳を守るためのベールは女性の自由を奪うものでもあります。プールはひょんなはずみでディーパクとはぐれ、一人見知らぬ駅に取り残されてしまいます。今更実家に戻るわけにもいかず、夫の村の名前も分からない。ああ、インドならありうるかも…。インドで迷子になったら死ぬかも…。若い女性が一人でいたら殺されちゃうかも…。スマホもないし連絡手段もありません。インドは治安のいい日本とは違います。もう生きるか死ぬかのピンチです。外では男たちがうろついており、彼女は駅のトイレに隠れて夜を明かします。そんな彼女は駅に住み着いた物乞いの二人組と売店のおばちゃんらに助けられ、命拾いします。まさに助け合い精神。捨てる神あれば拾う神あり。貧しいもの同士が助け合って生きる姿を見ていると、古き良き日本の姿や人情という言葉を思い出します。
売店で働く肝っ玉おばちゃん。彼女は暴力夫と別れ、貧しいながらも自立した生活を営んでいます。プールは彼女らとのふれあいの中で視野を広げていきます。母から仕込まれたお菓子作りの腕を発揮し、生まれて初めて自分の力でお金を稼ぎます。
もしディーパクと再会できたとして、駅に寝泊まりしたような自分を、新郎と家族は受け入れてくれるのか。プールさんの不安の種は尽きません。
新妻、ジャヤ
親の決めた裕福な相手との結婚が決まりましたが、本心では結婚なんかせずに大学で農業の勉強をしたいと願う彼女。彼女もまた新郎に連れられ列車の旅に。ひょんなことで新郎の元を逃げ出し、ディーパクの村へ潜り込み、偽名を使って村に居座ります。彼女の作戦はなんとか新郎から離れ大学へ行くこと。でも警察に身元を暴かれ、金目当ての結婚詐欺犯として留置所に入れられてしまいます。そして本物の新郎が彼女を迎えにやってきて、ジャヤに人生最初にして最大のピンチが訪れます。
プールは夫を支え、伝統に従って生きようとする、良妻賢母型の女性です。ジャヤは古い因習から逃れ大学で高等教育を受けることを望む、新しい生き方を模索する女性です。本作の脚本の素晴らしいところは、全く異なる2つの生き方を、どちらも肯定的に描いていることだと思います。二人の女性の間には対立や分断はなく、相互理解があります。日本のフェミニズム活動家の中には、自分の生き方を肯定したいために相手の生き方を否定するような言動をされる方がいますが、本作にはそんな人は出てきません。今後インドでも日本のように先鋭的なフェミニズム活動家が出てくるのか、興味深いところです。
二人の新郎
プールの新郎ディーパクは田舎の純朴な青年です。彼は良い夫代表です。ジャヤの新郎は金持ちの嫌な奴。ジャヤを殴りつけ持参金を奪い取ります。前妻は子供ができなかったために焼死しており、自殺なのか他殺なのかも分かりません。彼は悪い夫代表です。新郎たちのキャラクターはもう完全なステレオタイプで描かれています。インドの女性の運命は良い夫と巡り合うか悪い夫と巡り合うかで、大きく変わってしまうのでしょう。
警察官マノハール
賄賂は受け取るわ、暴力は振るうわ、まさに権力を笠に来た横暴警官です。ですが、ジャヤの真実、彼女は貧困から立ち上がる力と知性を兼ね備えた女性であることを知ったとき、彼はその権力を利用して悪い夫を退治します。この警官は善悪を兼ね備えた存在であり、ステレオタイプの夫たちに比べると複雑なキャラです。本作では非常に大事な役割を果たしています。当初アーミル・カーンが演じる予定だったそうですが、ラヴィ・キシャンのはまり役のようです。
本作ではインドの女性たちを取り巻く様々な問題が描かれています。親の決めた相手との結婚と持参金の負担。町へ出稼ぎに出た夫に会えずに笑顔を忘れた新妻。夫の写真もないため、彼女は自分で描いた夫の絵を大切に持っています。夫の好みの料理を作り続け、自分の好みを忘れてしまった女たち。ネットで「インド 妻 殺す」で検索すると、悲惨な記事が山のようにヒットします。『持参金が少なかったからと、夫の家族らが新婦を殺害する持参金殺人も相次いでいる。最悪期の2011年には年間8618人の女性が犠牲になった』という記事などを読むと暗澹たる気持ちにさせられます。本作はハートウォーミングのハッピーエンドで幕を閉じましたが、現実社会はどうなのか。現実社会の闇と貧困が深いほど、作り物である映画は輝くのかも知れません。戦後日本がそうであったように。その意味ではこれからもインドでは面白い映画が作られ続けることでしょう。貧困から立ち上がろうとする力こそ、面白い映画の原動力なのかも。そして本当の闇は娯楽映画で描くことなどできません。
本作では幼妻プールを演じたニターンシー・ゴーエルさん、ジャヤを演じたプラティバー・ランターさん、日本語字幕を担当した福永詩乃さん、3人の若い女性の才能が輝いています。中でもニターンシー・ゴーエルさんは本作でブレイクを果たしたそうです。youtubeチャンネルも登録者数59万人と大人気です。本作で演じた貧しく健気な幼妻役と華やかな現実生活との落差が楽しめます。夢を掴み大都市で西洋化した暮らしを謳歌するスターや富裕層たち。一方中世のような暮らしのまま置いていかれる田舎村の住民たち。インドって、大きくて複雑で面白い国です。日本のように簡単には西洋に飲み込まれることはないでしょう。
向日葵の約束
インドの文化や価値観が分からないこともあり、飲み込みづらい部分はあったが、なかなか楽しめた。
取り違えに関しては、(あんなにみんな同じベール被るのかは不明ながら)自然な流れ。
靴は見えなかったが、夫側の顔やスーツも似通ってたし。
話はディーパク、ジャヤ、プール、警部補(署長じゃないのね)の視点で描かれる。
分かり易いクズであるジャヤ側の夫は一旦フェードアウトし、悪者ポジションと察する。
流れ自体はよいのですが、中盤がちょっと退屈。
挿入歌で心情を語りつつダイジェストを見せる演出は特にインド映画では定番ですが、サスガに多い。
一方は村の中、もう一方は駅の中がほとんどなので画的な変化にも乏しい。
コメディ部分もクスッとする場面は多いがやや弱かった。
ディーパクのちょっとした一言からプールが警察を嫌がったりなど、細部の構成は上手い。
ジャヤの秘密から夫婦の再会の流れは爽快。
警部補が急にいい人になりすぎだけど、賄賂はがっぽり懐に入れてるからギリ許容範囲かな。笑
煩くない程度に社会的なテーマが入ってるのも良い。
ジャヤの将来の旦那候補の匂わせも丁度いい。(通訳からの「お前も行け」は笑った)
視点が分散したぶん、関係性の掘り下げが浅めなのは残念。
特にディーパクとジャヤはもっと絡んでほしかったし、議員関連と足が無いフリをしてた男は不要では。
ただ、勧善懲悪かつその他のキャラが全方位ハッピーエンドな結末は後味よく素敵です。
もう1人の花嫁と取り違えなかったことは神様の配慮だったのかもしれません
2024.10.7 字幕 MOVIX京都
2024年のインド映画(124分、G)
花嫁取り違え騒動を描く社会派ヒューマンコメディ映画
監督はキラン・ラオ
脚本はスネハ・デサイ
原題は『Laapataa Ladies』で「失われた女性たち」という意味
物語の舞台は、インドのニルマル・プラデーシュにあるとある村(架空)
結婚式を終えたディーパク(スパルシュ・シュリワーススタウ)とその妻プール(ニターンシー・ゴーエル)は、妻の家から夫の家へと向かっていた
カタリヤ行きの列車に乗った2人はスーラジム村へと向かうはずだったが、ディーパクが駅で降ろした妻は別人だった
彼女はプシュパ(プラティンパー・ランター)と名乗り、警察に捜索を依頼するものの、電話番号は別の人に繋がり、彼女が告げる夫はどこにもいなかった
一方その頃、ムルティ駅に着いたプールは途方に暮れ、駅に住んでいる少年チョトゥ(サテンドラ・ソニ)の助けを借りて、駅の茶屋の主人・マンジュ(チャヤ・カダム)を頼ることになった
警察は怖いところだと聞かされていたプールは届出を出すことを嫌がり、夫が自分を見つけてくれるのを待とうと考えていた
映画は、プシュパの動向に不審なものを感じ取ったマノハル警部補(ラビ・キシャン)が捜査を進めていく中で、スラージムにあるトリブバン警部(Kishore Soni)と連携を取りながら、プシュパの正体を追うと言う流れになっている
妻を取り違えたことで意気消沈するディーパクも友人・グンジャン(Daood Hussain)たちと必死に探すものの、全くと言って良いほどに情報が集まらずに困惑してしまう
そんな中、プシュパはある目的のために行動を開始し、ディーパクの義理の妹のプナム(Racha Gupta)やその息子バブルー(Abeer Sandeep Jain)たちと交流を深めていくと言う内容になっていた
プシュパは実はジャヤと言う名前で、金持ちのプラディープ(Bhaskar Jha)と結婚させられそうになっていた
一度は運命を受け入れたものの、ディーパクの勘違いを光だと感じ、自分の人生のために1週間を使おうと考えていた
彼女は有機農業に興味を持っていて、大学に進学したいと考えていたが、夫がそれを許すはずもない
そこで、自分の人生を歩むために決心をするのだが、妻を間違えて悲嘆に暮れるディーパクを見て、彼らの絆をもとに戻そうと計画を中断して秘密裏に奔走することになった
だが、その決断が裏目に出て正体がバレてしまい、捕まってしまうのである
物語は、ジャヤの訴えによって「裁き」を下すマノハルが描かれていて、悪徳警官だと思われていた彼が、まさかの大岡裁きをする様子が描かれていく
このシーンはとても感動的で、失った女性たちが必要なものを取り戻すためのキーシークエンスになっていた
映画は最後までエモーショナルで、勧善懲悪的な部分があるので、大人から子どもまで安心して観られる内容になっていると思う
いずれにせよ、ハートフルな内容で、妻を取り違えていく過程もとてもスムーズで無理のない流れになっていた
さすがに全く同じ衣装を着た花嫁が同じ席列に3人いると言う状況はファンタジーだが、慣習と流行りなどを考慮すればバッティングすることもあるのかな、と思う
ともかく色んな意味で面白みが充満している作品で、インドの諸事情だけに留まらないテーマがあるので、誰にでも勧められる映画だと思った
花嫁を捜して・・・‼️
ベールをかぶった花嫁プールを伴って列車に乗る花婿のディーパク。しかし、同じような格好の花嫁ジャヤを間違って連れて帰ってしまう。しかし、ジャヤは嫁ぎ先に戻りたくないらしく、一方、プールは取り残された駅の売店の女店主の世話になっていた・・・‼️花嫁の取り違いから起こる騒動を、家族や女店主、警察の方などの周囲の人々とのほのぼのとしたやりとりの中に描き出した秀作‼️巷で花嫁詐欺が頻発しており、ジャヤがその犯人なのではとのミステリー要素や、ジャヤの暴君のような花婿を悪役に仕立て、水戸黄門様的カタルシスを味わわせてくれるなど、エンタメとしても充分満足させてくれる仕上がり‼️ホントに素敵な映画です‼️インド映画特有の歌と踊りに頼ってないのもイイですね‼️
【現代インド人女性の多様な生き方をコミカルに描いた作品。今作は、多数の名作に主演したインドの名優アーミル・カーンが製作に関わっているので、当然、笑えて幸せな気持ちになるヒューマンドラマなのである。】
■2001年、結婚式を終えた妻のプール(ニターンシー・ゴーエル)と夫のディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)は、列車に乗り込むが、同じ様な赤い衣装を着た花嫁ジャヤ(プラティバー・ランター)を間違えて連れ帰ってしまう。
その頃、妻のプールは置き去りにされた駅で、途方に暮れていた。
◆感想
・アーミル・カーンが製作に関わっているので、ディーパクが花嫁を間違ってしまっても”きっと、うまくいく”だろうと思いながら観賞。
■プールが、箱入り娘として育てられていたのに対し、ジャヤは有機農業に興味を持って研究していた女性として描かれる対比が、面白い。
ジャヤが嫁いだ先は、夫の前妻が火事の為に不審死していた家で、夫はどう見ても怪しいのだが、ジャヤは貧しい実家を救うために、嫁入りを決意していたのである。ウーム。
一方、プールは駅で食べ物を売るマンジュおばさんの店で、慣れない手つきで働き始めるのである。
この作品が、ほんわりとするのは、プールとジャヤを親身になって助ける人たちが、皆、温かい心を持っている所だと思う。
・ジャヤは、有機農業の知識を遺憾なく発揮し、ディーパクの仲間達の農業の仕方に対しアドバイスをするし、プールも最初は慣れないが一生懸命頑張って、店を助けるのである。
・一見不愛想な警察署長も、ナカナカ粋な男で、ジャヤを見つけ頬を引っぱたいて家に連れて行こうとする男に、”暴行罪”そして、自分に賄賂を渡した事で”賄賂罪”を適用するぞ!”と脅し、更には”お前の前妻の不審死の再捜査をしようか?”と畳みかけ、ジャヤの新たなる道を切り開いて上げるのである。
このシーンは、スカッとしたなあ。
・一方、プールもマンジュおばさんから”頑張ったね!”と言う感じで、売上金の中からお金を貰う。その時のプールの嬉しそうな顔。
<そして、ディーパクはジャヤや皆の協力も有り、目出度くプールと再会し、抱擁するのである。一方、ジャヤは、有機農法をキチンと学ぶために大学に進学するのである。
今作は、現代インド人女性の多様な生き方をコミカルに描いた作品であり、笑えて幸せな気持ちになるヒューマンドラマなのである。>
良かった!ハッピーエンドで!でも考えさせられる面もある良作。
とりあえず花嫁2人は間違えられちゃうけど最終的にはとにかくハッピーエンドらしい、というレビューで高評価のため見てみました!
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そうか、そうやって間違えられ。。そして何故間違われた後になかなか帰らないのか、帰れないのか。。理由が分かりました。
ジャヤは「大学で勉強したかった」ただそれだけ。普通なら、日本なら、或いは現在のインドならもう進学してもとやかく言われないかもしれない。でも、女性は嫁ぐのが当たり前、勉強も、夫や嫁ぎ先が裕福で許可がもらえれば多少出来るかも?程度。。。
いかに女性の学が虐げられていたのかが分かるし、学年でトップの成績を修めても親でさえ「来週は婚礼よ?!!」なんて言う時代。。
インド映画「RRR」で、ダブル主人公の弟分が兄貴分に「褒美は何が欲しい?」と聞かれて「読み書きを」と望む場面を思い出しました。
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端的に言えば「まだ結婚で嫁ぎ先に縛り付けられるんじゃなくて、勉強したい、大学に行きたい」というだけの話。なのにここまで大変な社会状況があったことに驚きました。
また、もう一人の彼女は「きっと夫が探してくれてる。。はず」とか、当初は主体性があまりなく、自立とか自分で動いてどうにかする、という考えを持たされていなかった。素直で良い子だけど一人では生きていけないような教育しか受けていない。
でも1人で屋台を切り盛りする肝っ玉母さんに良い影響を受けて、自分で働く、自分で収入を得る=自立することも生きる選択肢の1つに入ったことは大きな成長で、とても良かったです。
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2人の女性がそれぞれ求めていたことや、身に付いていなかった考え方は、今の我々は普通に持っている価値観。
最後の2人のセリフ、
「あなたのおかげで私は見つけてもらえた」
「あなたのおかげで私は自分を見つけた」
がとても良かった。
そして1番心に刺さった言葉は、
「夢は誰かに許しを請うことじゃない」
うん、そうだよ、夢があるなら自分で叶えに行っていいんだよ!!と思いました。
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頭脳明晰なジャヤが、研究者とかになって、またあの村に戻り、畑で一緒に農業のことを語り合った彼と本当の意味で結ばれて幸せになることを祈ります。
きっとあの彼なら、結婚しても勉強をし続ける彼女を理解し応援してくれるはず、と思いました。
プールも仕事をしながら幸せな結婚生活をしそうで、とてもほのぼのした気持ちになりました。。
最初は賄賂ばかりねだるいけ好かない警察官のスーパーマリオみたいなおっちゃんが、最後の最後はやっと正義の味方の警察官らしい、大岡裁きをしてくれて拍手喝采でした!!でもやっぱりジャヤが残していった嫁ぎ先の貴金属類はしっかりちゃっかり懐に入れてて可笑しかったです(笑)
警察官のおじちゃんも、ジャヤを解放して大学への道を後押ししてくれてありがとう!!と思いました(笑)
珍道旅
悪女と可哀想な女の入れ替え劇場かと思ったけど、結局は悪女は賢い善人でした。ついでに悪党警官かと思ったら、泣かせるではないか!!お前いい奴だったよ。2人共、結局は第二の故郷できて素敵な出会いをしたね。
この先の幸せな泣かせる続きを観たいな。
余談
警官随所で笑わせたね。
観終わった今なのに、そのネタがなんだったかは思い出せないないが💦
人は皆 一人では 生きていけないものだから
自分の勝手を優先させていたのに、接してきた人の親切や暖かさに、心の固さがほぐれていき、最終的に自分も相手のために、何かをしていくという話に、最後は見ているこちらまで、ほっこりしてしまいます。また、女性たちが、型にはまった狭い世界から、違う世界と接することでものを知り、成長していく様子も描かれています。ただ一番成長したのは、ふんぞり返っていたオジサンかも。
ちょっとBGMが過剰な感じ。コミカルなところにコミカルな曲、しんみりするシーンにしんみりする曲といった、セリフや表情で分かっているのに、流れる曲もあれば、このシーンでなぜこんな曲調か、というのもあり、BGMはもう少し整理した方が良かったでしょうね。
インド映画によくある、ナレーション代わりの歌はあるものの、歌って踊ってというシーンはありません。派手な映画ではないですが、他人を思いやることを再認識させる映画だと思います。
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