「出会いっていいなぁ」花嫁はどこへ? natsukiさんの映画レビュー(感想・評価)
出会いっていいなぁ
劇場スルー予定だったのですが、皆さんの評判がとても良かったので鑑賞。
結論、久しぶりのあたたかで優しい映画で、
劇場で観てよかったなぁと。
ふたりの花嫁が入れ替わる過程が丁寧で「どうなる、どうなる」と物語に入り込むことができるし、後ろで流れるインド音楽にもわくわくさせられて、ストレスのない始まりが好印象だった。
プールの旅は、彼女の成長や、見知らぬ駅で出会う人々との交流を通じて新たな気づきを得る様子が瑞々しく、微笑ましく見守ることができたし、一方で間違った嫁ぎ先に導かれたジャヤは、彼女自身にいったいどんな目的があるのか?どんな過去を送ってきたのか?と、キャラ自体が気になる作りとなっていて、ディーパク、彼の友人、家族たちと次第に信頼関係を結んでいく様とあわせて飽きずに観ることができた。
(隣の男性は途中しっかり寝ていたけれど笑)
爽やかで軽やかなエンディング、悪徳警官だと思っていた警部補がかなり粋ないい人であったこと、ふたりの花嫁のこれからのゆく先がきっと幸せであろうと想像できる収まり方などが特に素晴らしかったなぁ。
ただ、その反面、思った以上に残酷でえげつないジャヤの夫(事実存在する)や、息苦しい側面が残るインドの結婚文化や女性の立場などに暗い気持ちにもなった。
女性が「学びたい」「働きたい」という思いを成就させるために、何故ここまであがき、苦しみ、訴えないといけないのか…古くから継承される文化観や信仰など、傍から見たら「なんでそんなこと?」と思うようなことでも、事実それを大切に、尊重している人々は沢山いて、簡単には変えられない部分なんだろうなぁと、やるせない気持ちになった。
でも、すべてがこのままじゃいけないよね、と、あたたかく優しい物語で包みながらも、確かなメッセージとして残すこの映画が、小さな希望にも感じる。
全体として好みな映画だったが、特にプールの一連の冒険にはところどころで涙した。
当たり前のように従順に嫁ぐことしか考えてこなかったプール。
そのために家事スキルを磨いてきた奥ゆかしい彼女が自分の特技を活かして働き、その対価としてお金を得るという初めての経験をしたり、必ずしも守ってくれる存在がいなくてもひとりで幸せに生きていくことは可能であることを知る。
ただ親に従い、ただ夫に着いていくだけでなく、自分で考え動き、生き抜く強さを得ていく姿が本当に本当に感動的だった。
ここの丁寧な描写があったからこそ、頑なに夫の名前を口にすることを拒んでいたプールが「ディーパク!」と呼びかけるシーンがこの上なく輝くし、やっと再会できたふたりの間の愛が強固なものだと信じることが出来る。
ひとり旅経つジャヤと違ってプールは予定通り嫁ぎ妻となりますが、あの駅で過ごした数日間は、プールを確実に変え、大きく成長させたはず。
彼女はこれから愛する夫との幸せな暮らしのためだけでなく、何より自分自身の幸せのために凛として生きていくことが出来ると思う。
この先どんなことがあっても、きっともう迷うことはない。
それが感じられて、わたし自身勇気をもらうことができた。
人との出会いは、良くも悪くも自分を変えるし、人生を変える。
最悪だ、と思う出会いもあるにはあるけれど、
人と出会い、自分の世界を広げることを恐れずにいたいな。
最後に、
好きなシーンは沢山あったけれどその中でも群を抜いて一番好きだったのは、
警察署を飛び出したジャヤを見送りながら警部補が呟いた言葉。
うん、彼女はどこまでも行きますね。