劇場公開日 2025年3月14日

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「最近絶好調なニコラス・ケイジ氏」ロングレッグス クラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 最近絶好調なニコラス・ケイジ氏

2025年8月3日
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本作をホラー映画の括りで考えると微妙だが、サイコスリラーとしてはスリリングである。スリリングと言うか物凄く不穏で薄気味悪い。気味の悪さで言うとここ最近のこの手の作品の中では抜きん出ている。
まず何と言ってもニコラス・ケイジがロングレックスを演じているのである。これは嫌でも観ない訳にはいかない。実際のところ登場シーンはわずか10分程度だ。それでもここに出てくる誰よりも印象に残るのは、明らかに異常なその風貌と放つオーラである。「ナショナル・トレジャー」等の大作映画に多く出たかと思いきやメジャー業界から身を引き、B級路線まっしぐらに進んでいたが、ここ最近の活躍ぶりはやや嬉しいものがある。
FBIと連続殺人犯の戦いとなると、宣伝文句に使われている「羊たちの沈黙」や、「セブン」等の名作の数々が浮かぶが、それをイメージして鑑賞すると本作にはまた違う印象を受けるかも知れない。ストーリーは複雑ながら観やすかったのは「羊たちの沈黙」だと思うが、本作は単なるシリアルキラーで終わる話では無いため、そもそも比べるのも違うかも知れない。

特筆すべき点は、主人公が軽いエスパーという設定であると言うことだ。これは非常に斬新であり、どこかシンパシーを感じるロングレックスとの頭脳戦、攻防戦が繰り広げられるのだが、流石ニコラスの兄さんは一枚上手であり、追い詰めたら翻弄され、また追い詰め…の繰り返しとなる。だがそんなのをボケっと観ていると、後半にくるっと方向転換し、一瞬置き去りになるのではとさえ思ってしまう展開になる。ラスト10分位の展開には口あんぐり状態であり、衝撃的であった。ここまで来て緻密な捜査と自身の能力を屈指して追い詰めてきたロングレックスをこういう形で失うとは。登場人物も観客も何ともいえぬ喪失感に襲われる。

ハリウッド製のホラーは描写が激しく、要らんシーンもあったりする、"B級テイスト"が売りかも知れないが、この新進気鋭の映画スタジオ、「NEON」は注目出来るスタジオだろう。どこかA24と近しいものも感じるが、静かでもじわりじわりと追ったり追いかけたりの描写と、主人公含む周辺の人物描写も分かりやすい上に丁寧であり、世界観にどっぷり浸れるタイプのサイコスリラーである。これら展開に引き込まれたからこそ、後半にやって来る怒涛の展開には驚きを隠せず、人によっては良い方に転ぶだろうし、最後にがっかりするタイプの人も居るだろう。それを含めてこの世界観に観客を没入させる手腕には拍手を送りたい。

クラ
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